【企業経営理論#21】多角化戦略
多角化戦略
今回は、” 多角化戦略 ”についてです。
多角化戦略とは、企業が新しい製品やサービスを新しい市場に投入することで、事業ポートフォリオを拡大し、新たな収益源を獲得する成長戦略です。
既存事業の成長が鈍化したり、リスク分散を図ったりする場合に有効な戦略となります。
多角化戦略のメリット
リスク分散:複数の事業を持つことで、特定の事業の不振による影響を軽減し、経営全体のリスクを分散できる(ポートフォリオ効果)。
収益の安定化:異なる市場や業界に事業を展開することで、景気変動や業界トレンドの影響を受けにくくなり、安定した収益を確保しやすくなる。
成長機会の拡大:新しい市場に参入することで、新たな顧客を獲得し、収益を拡大することができる。また、新規事業に余裕資源(スラック)を活用することで、無駄なく企業活動を行うことができる。
シナジー効果:既存事業と新規事業との間にシナジー効果を生み出すことで、相乗効果による競争力強化やコスト削減が期待できる。
企業価値の向上:事業ポートフォリオの多様化や成長性は、企業価値の向上に繋がる。
多角化戦略の種類
多角化戦略は、大きく分けて関連多角化と非関連多角化の2つに分類されます。
関連多角化:既存事業と関連性の高い事業に参入する戦略。
メリット
相乗(シナジー)効果:既存事業で培った技術、ノウハウ、ブランド、顧客基盤などを活用したり、複数の事業を組み合わせることで、相乗効果を生み出し、効率的に新規事業を展開できる。
例:技術の共有、販売チャネルの共用、ブランドイメージの向上
相補効果:異なる事業がお互いの弱点(足りない部分)を補完し合い、市場環境の変動や制約に対応することで、全体としての競争力を高めることができる。
例:製品Aと製品Bを組み合わせることで、顧客ニーズをより幅広く満たす
競争優位の構築:既存事業の強みを活かすことで、新規事業においても競争優位を築きやすくなる。
リスクの軽減:新規事業のリスクを、既存事業の安定収益で軽減できる。
経営資源の効率的活用:既存事業の資源を有効活用することで、新規事業の立ち上げコストを抑えられる。
範囲の経済:複数の事業を展開することで、経営資源を共有し、コスト削減や効率性向上を図ることができる。
例:生産設備の共有、物流網の共用、研究開発費の削減
など
デメリット
機会損失:関連性の高い事業に限定することで、他の魅力的な事業機会を逃す。
既存事業への依存:既存事業の不振が、新規事業にも悪影響を及ぼす。
シナジー効果の過大評価:シナジー効果を過大評価し、期待した効果が得られない。
など
非関連多角化:既存事業と関連性の低い事業に参入する戦略。
メリット
リスク分散:異なる市場や業界に事業を展開することで、景気変動や業界トレンドの影響を受けにくくなる。
収益の安定化:1つの事業が不振に陥っても、他の事業でカバーすることができる。
経営資源の有効活用:既存事業で余剰となっている資源を、新規事業に活用することができる。
新たな成長機会:既存事業の成長が限界に達した場合、新たな成長機会を獲得できる。
デメリット
シナジー効果の欠如:既存事業との関連性が低いため、シナジー効果が期待できない。
経営の複雑化:異なる事業を管理するノウハウが必要となり、経営が複雑化。
新規事業のリスク:新規事業の立ち上げに伴う高いリスク。
専門知識の不足:新規事業に関する専門知識や経験が不足している可能性がある。
例
コングロマリット: 多様な業界や事業を展開する複合企業。必要以上に吸収合併を繰り返すことで、手に負えなくなり、業績が急激に悪化する場合がある。
多角化戦略の成功要因
多角化戦略を成功させるためには、以下の要素が重要です。
明確な戦略:なぜ多角化するのか、どのような事業に参入するのか、どのように競争優位を築くのかなど、明確な戦略。
経営資源:多角化には、多大な経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)が必要。資源を効率的に配分し、活用する。
組織能力:新規事業を立ち上げるため、あるいはM&Aを成功させるための組織能力。
企業文化:変化を受け入れる企業文化、チャレンジ精神を重視する企業文化。
リーダーシップ:ビジョンを示し、変革を推進するリーダーシップ。
多角化戦略の注意点
リスク:多角化は、新規事業の失敗やM&Aの失敗など、リスクが高い。
コスト:多角化には、多大なコストがかかる場合がある。
シナジー効果:関連多角化の場合でも、シナジー効果が必ずしも生み出せるとは限らない。
経営の複雑化:複数の事業を管理する複雑さが増し、経営が非効率になる可能性がある。
まとめ
今回は、多角化戦略についてまとめました。
多角化戦略は、リスク分散や成長機会の拡大などのメリットがありますが、リスクやコストも高い戦略です。
企業は、多角化戦略を実行する前に、メリットとデメリットを慎重に検討し、自社に最適な戦略であるかどうかを判断する必要があります。
次回は、垂直統合戦略/水平統合戦略についてです。
復習問題
問題1:穴埋め問題
多角化戦略とは、企業が( ① )やサービスを( ② )に投入することで、事業ポートフォリオを拡大する成長戦略。
多角化戦略は、既存事業の成長が( ③ )したり、( ④ )を図ったりする場合に有効。
多角化戦略のメリットは、リスク分散、収益の安定化、( ⑤ )の拡大、シナジー効果、( ⑥ )の向上などがあります。
関連多角化とは、既存事業と( ⑦ )の高い事業に参入する戦略です。
非関連多角化とは、既存事業と( ⑦ )の低い事業に参入する戦略です。
問題2:正誤問題
多角化戦略は、必ず成功する。( ○ / × )
関連多角化は、シナジー効果が期待できる。( ○ / × )
非関連多角化は、リスク分散効果が高い。( ○ / × )
多角化戦略は、コストがかからない。( ○ / × )
多角化戦略には、明確な戦略が必要である。( ○ / × )
問題3:組み合わせ問題
次の多角化戦略の種類と、具体的な例を正しく結び付けてください。
問題4:記述問題
多角化戦略のメリットを3つ挙げてください。
関連多角化と非関連多角化のメリットとデメリットをそれぞれ2つ挙げてください。
多角化戦略を成功させるための要因を3つ挙げてください。
多角化戦略の注意点を3つ挙げてください。
問題5:多肢選択問題
以下のうち、多角化戦略のメリットとして適切なものをすべて選びなさい。
a. リスク分散 b. 収益の安定化 c. 成長機会の拡大 d. コスト増加 e. 企業価値の向上
問題6:多肢選択問題
以下のうち、関連多角化のメリットとして適切なものをすべて選びなさい。
a. シナジー効果 b. リスクの軽減 c. 経営資源の効率的活用 d. 経営の複雑化 e. 専門知識の不足
問題7:多肢選択問題
以下のうち、非関連多角化のメリットとして適切なものをすべて選びなさい。
a. シナジー効果の欠如 b. リスク分散 c. 収益の安定化 d. 経営の複雑化 e. 新規事業のリスク
問題8:記述問題
あるコンビニエンスストアチェーンが、多角化戦略を検討しています。 どのような事業に参入するのが適切でしょうか? 関連多角化と非関連多角化のそれぞれの場合について、具体的な例を挙げて説明してください。
問題9:記述問題
ある中小企業が、多角化戦略を実行する際に、どのような課題に直面する可能性がありますか?
問題10:記述問題
多角化戦略において、リーダーシップが重要な役割を果たすのはなぜですか?
解答
問題1
① 新しい製品 ② 新しい市場
③ 鈍化 ④ リスク分散
⑤ 成長機会 ⑥ 企業価値
⑦ 関連性
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