三文文士
「早起きは三文の徳」という俗諺は夙に知っていた。夏休み中の早起きを推奨する為、蝉の声をBGMに先生が詠唱していたのを覚えている。至純だった僕は、それを早起きの素晴らしさを啓蒙する俚諺だと解釈していたのだが、年を経るにつれて「二束三文」「三文芝居」「三文小説」という言葉を知り、三文は大したことない額だということに気づいた。やがて社会人になり、否が応でも早起きしなければならなくなった。8時発の電車でも間に合うのだが、面心立方格子構造顔負けの充填率の高さに辟易し、7時の電車に乗るようにしている。巧まずして、そこに三文の価値を見出してしまったわけか。因みに、うだつの上がらない小説家のことを「三文文士」というらしい。光焔万丈な文章が書けずとも、まずはそれを目指したい。
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