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70億分の1の奇跡~(16)二人での旅行
待ちに待った二人の旅行の日が来た。
駅で待ち合わせた。
涼介は少し早めに待ち合わせ場所に着いて、美紀を待った。
二人共、会社での服装はカジュアルOKだったので、こういう時は都合が良かった。
美紀はカットソーとスカートで、いつものようセンスがよかった。
先日プレゼントしたネックレスも着けている。
「美紀、今日も素敵だよ、ネックレスもよく似合っている」
そう言うと、美紀は嬉しそうにしている。
電車に乗り込み、二人で座席に並んだ。
これから長く一緒に居られると思うと、涼介は心が弾んだ。
美紀の手を握る。
二列シートなのでプライベート感もある。
「明日までずっと一緒だね」
「うん、うれしいわ」
暫く電車に乗っていると、車窓に海が見えてきた。
青い海に浮かぶ白い船、そして、青い空と白い雲。
「きれいな景色・・・」
美紀が、涼介の肩に頭を乗せてもたれかかる。
「うん、きれいだねぇ、二人で見るこの景色は一生忘れない」
涼介は美紀の手をギュッと握った。
美紀も涼介の手を握り返してきた。
電車を降りて、タクシーで旅館に入った。
チェックインの宿帳には、涼介の名前の隣に「西村美紀」と書いた。
その時、一瞬、二人で見詰め合った。
仲居さんに部屋に案内されて、部屋に入った。
和室と洋室の二間続きで、洋室にはベッドがあった。
バスルームに続いたテラスには半露天風呂があり、その下には渓流が流れている。
周りは緑の木々に包まれた落ち着いた部屋だった。
仲居さんが一通りの説明を終えて、部屋を出て行った。
そのまま和室の座卓に座ってお茶を飲んだ。
「素敵なお部屋ね、渓流の瀬音も涼し気でいいわ」
美紀が部屋を見まわして言う。
「うん、いろいろ探したんだ、なかなかいいでしょう」
「ありがとう、嬉しいわ」
「あの仲居さんは、私たちの事をどう思ったかしら?」
「そうだね、普通の夫婦とは違った空気を感じたかもね。
でも、まぁ、向こうも接客のプロだし、気にしなくて大丈夫だよ」
「そうね」
美紀は部屋からテラスに出た。
「あぁ、、、緑がきれいね」
涼介も立ち上がった。
そして、美紀を後ろから抱きしめた。
「明日までずっと二人っきりだよ、ゆっくりしよう」
涼介は美紀の髪に顔を埋めて、その甘い香りをかいだ。