発現(4冊目)
発現
著:阿部智里
ひたひたくる恐怖が好きな人におすすめ
実は、「烏は主を選ばない」から阿部智里さんの本が好きです。
ジャンルは少し違うけど、阿部先生の本好きなのでめっちゃ期待してました。
発現は、読んで良かったです。
ひたひたくる恐怖が最高なんですよね。
この話って要するに、「恐怖も視点を変えれば実は恐怖ではないし、恐怖は自分の心の中にある」ってことなんですよ。
それを時間をかけて伝えてくれている物語なんですけど、その伝え方がとても良いと思います。
話は時代が異なる二人の主人公にスポットライトを当てて進んでいきます。
昭和40年台の日本と、平成30年の日本で話の視点が行き来します。
昭和40年台で語られる話は兄を突然失った弟が主人公です。
兄の人生を辿りながら、兄の死の真相を探っていく話です。
その探り方が本当に良いんですよね、推理小説みたいで、次に次にと読みたくなる。
兄の人生にも説得力があり、すごく地に足がついているような内容が積み重ねられていて、ものすごく納得できました。
割と早めに「真相はこれかな?」と真相に気づきやすい作りではあると思います。
でも、そこに至るまでの経緯を埋めていくストーリーが本当にすごいんですよ。
一番好きなシーンについて語りたいんですけれど、ネタバレになるのでやめます。
平成30年は、ホラーです。
子供がいて順調な生活をしていた兄が突然おかしくなって、それを妹の視点で見ていきます。
兄には家族がいて、その家族の心情と言葉が「ああ、わかるなあ」と声が出るような描写をされています。
私が同じ状況になったら、きっと兄に同じような言葉をかけてしまい、そしてその言葉をかけたこと自体に後悔してしまいます。
また、この作品の見どころである発狂していく主人公の描写がとても良いのです。
グロ注意ですが、ホラーが大好きでグロ耐性がある方は楽しめると思います。
私はホラーもグロも好きなので、阿部先生の文章力を噛み締めながら読むことができました。好きなシーンは何度も繰り返し読んだりしてました。
主人公が本格的に発狂するシーンが一番好きなシーンです。
おわりかた、について少しだけ追加します。
この本のいいところは「おわりかた」だと考えています。
ややぶつ切り感はあるのですが、この本の内容に「その先」はいらないと私は考えています。
理由は物語としては終わりを迎えているので続きは蛇足のようなものになり、発現という本はホラーではなくなってしまいますので。
主人公たちの人生がこの先どうなって行くのか、そのようなことを考えられる余白を残した、いい終わり方だと感じました。
この話は、状況を改善するために主人公たちはどのような行動をとっていくのか。そこも見どころであります。
ホラーが好きならぜひ読んで欲しい一冊です。
これが1/7に読んだ本です。
正直、今年はあたりの本にしか出会っていないんですよね。
良い本に出会えたことに感謝を。