未来材料・システム研究所教授 宇治原徹先生(前半)
こんちにはHumans of Meidaiです。
今回は未来材料・システム研究所教授の宇治原徹先生に取材させていただきました!
現在ベンチャー企業を2つ経営されているパワフルな宇治原先生。
前半は「宇治原先生の学生時代」にせまります。
ーー宇治原先生のプロフィール
京都大学大学院工学研究科博士後期課程(材料工学専攻)修了後、東北大学金属材料研究所助手、名古屋大学大学院 工学研究科 助教授を経て、2010年10月~名古屋大学大学院 工学研究科教授に就任する。その他以下を兼務。
・同大学 未来材料・システム研究所 教授
・国立研究開発法人産業技術総合研究所 中部センター GaN窒化物半導体先進デバイスオープンイノベーションラボラトリ 副ラボ長(クロスアポイントメント)
・国立研究開発法人理化学研究所 革新知能統合研究センター 客員研究員
・株式会U-MaP代表取締役会長
・株式会社アイクリスタル取締役
宇治原先生の学生時代
ーーまずは学部生時代について教えていただけますか?
一年生の頃はテニスサークルに入っていました。でも少し経って「これは何も面白くない」「こんな事やっている場合じゃない」と思ってやめたんですよね。そして二年生からドクターを卒業するまでの間、旅行ばかりするようになりました。夏休みも春休みも一ヶ月単位の長い旅行をしていましたね。海外への旅行だと、一週間ずっと山の中にいるとか、悪い警察にたかられそうになるとか、バスが三日間来ないとか色々とありました。アルバイトも旅行のためにやるって感じでした。
ーー大学の授業は真面目に受けていたんでしょうか?
ぼくらのときは授業なんてそうそう出るもんじゃなくて、一年二年なんて英語と体育しか行っていなかったですね。力学とか電磁気学とかあるんですけど、だいたい教室に行って待ち合わせをして遊びに行っていました。テストのときはほぼ自力で、一生懸命勉強して単位をとっていました。
三年生になって専門が始まると授業に行くようになりました。それはさすがに自分のやりたいことだったし、面白かったから。それでも今のみんなに比べると真面目じゃないね。
ーー四年生になって研究室はどうやって選んだんですか?
状態図(”材料の地図”と呼ばれ、物質がどのような状態にあるのかを示した図)の授業を受けて面白そうって思ったのもあるんだけど、研究室の見学に行ったときにそこの助教授の先生が「やりたいことがあるんだったら、言ったらやらしてあげるよ。」って言ったんですよ。ぼくの興味があることをやればいいんだなと思ってその研究室に行きました。そのときは「何に興味があるのかな」って考えながら過ごしていました。
ーー大学院では主にどんなことをしていたんですか?
四年生で状態図の研究をやっていたんですが、つまらなかったんですよ。だけど研究をするうちに疑問が色々浮かんできて、パターン形成(どうやったらきれいな金属の結晶ができるのか。なぜいろんな形の結晶ができるのか)に興味を持つようになりました。そしたら教授がぼくにあったテーマを作ってくれて、修士のときはパターン形成に関する研究をやっていました。
ドクターのときはパターン形成の理論を主にやっていたんだけど、取り組んでいる課題がむずかしくて、辛かったんだよね。いつも同じところで式が止まってしまって、頭がおかしくなりそうでした。教授に「やめていい?」って聞いて、実験の方に変更して論文も書きました。しかし、「おれがやりたかったことはコレじゃない」と思って、もとの研究に戻りました。そうすると前と同じところで式が止まるんですよね。また頭がおかしくなり始めるんですよ。なんだけどある日、朝起きた瞬間に「あれ??」と思って。もしかしてと思って大学に行くと、解けるようになったんですよね。「ああああ〜〜!、こういうことか!!」と、気持ちよかった!思い返すと大したことではなかったんですが、感動しました。
民間企業で人に使われて生きるのは嫌だった
ーー博士課程に行くことはどうやって決めたんですか?
博士課程はもともと行こうと思っていました。研究者になるなら博士行くしかないからね。そもそも民間企業で働きたいなんて微塵にも思わなかった。人に使われて生きるのは嫌だと。自分のやりたいことをやってたいと。「自由であることは大切だ」ってのがぼくの信念の中にあるので。
面白いのが、M1の3月頃にみんな就職活動とかするんですよね。そのとき先生が「宇治原どうするんや?」と聞いてきたので「ドクター行きます先生!」って言って、次の日にタイに一ヶ月半くらい旅行に行ったんですよ。先生は怒ってたんだけどね(笑)
ーー研究者になるのが不安だなとは思わなかったんですか?
それはないよね。就職するのだって不安じゃん。どうして就職するのが不安じゃなくて、博士にいくのが不安なのか、ぼくにはとっても不思議。どこかの会社に行ったとしても、その後自分がどうなるかわかんないじゃないですか。会社がうまくいかないかもしれないし、買収されて研究ができなくなるかもしれない。しかもそれは不可抗力で、自分じゃどうしようもできないんだから。
博士卒業後のキャリア
ーーその後、博士課程を終えてすぐに東北大学の助手になられたと思うのですが、それって珍しくないですか?
当時はまだあったんですよ。先生によってはドクター取る前に助手なる人もいたから。
博士課程が終わって就職する先もなかったから、アメリカの大学のポスドクに行こうと思っていました。しかし東北大学の助手の話が来て、そっちに行くことにしたんだよね。だからぼくが学生時代に行きたかった東北大学にも行けることになったんだよ。結局行きたかったところ両方行っちゃったんだよね。
東北大学には5年間いて、そのあと名古屋大学に助教授として移りました。その頃から本格的にSiCの研究をはじめました。そしてまた5年位たった頃に教授になりました。
ーー教授になるまでに挫折みたいな経験はなかったんですか?
ぼくはドクターを取るのに5年間もかかってしまって、周りと比べて劣等感を感じていました。学位授与式も2年後輩と一緒で、周りは優秀そうに見えました。「もうおれこの世界むりかも」って思うこともありました。けどそれと同時に、心のどこかで「30代で教授になってやる」っていう野望を持っていたんですよ。そして40歳になる誕生日の一週間前に、本当に教授になれました!(笑)
ーー現在はどのような研究をしているのですか?
私たちの研究は「結晶」の研究です。「結晶」の研究って、何の役にたつの?と、よく聞かれます。しかし、私たちの生活において、とても大切な研究なんです。たとえば、テレビやエアコンなどの家電や、スマートフォンやパソコンなどの情報機器、LED照明や太陽光発電など、さまざまなところで、「半導体の結晶」が使われています。特に、私たちは世界の消費電力を削減するような、SiCという結晶やAlNという結晶の開発を行っています。これらが普及することで、世界の電力の10%くらいを削減することもできるかもしれない、本当に社会的インパクトが大きい技術なんです!また、私たちが開発した素材の一部は、いま、大学発ベンチャーを立ち上げて、そこで製造し世の中に広めていこうとしています。
私たちの研究室は、名古屋大学の中でも最先端のC-TECs(シーテクス)という建物にあります。ここは、一見するとIT企業のオフィスのように、キッチンやソファー、おしゃれな家具などもそろっているよう場所で、皆が好きな場所で仕事ができるようになっています。みなさんがイメージする大学とはかなり違うかもしれないです。また、この建物には、たくさんの他の研究室の研究者や学生も多くいて、研究室の壁を越えて、みなで楽しく協力しながら研究をしています。興味が湧いたら気軽に研究室見学に来てください!
まとめ
今回は、未来材料・システム研究所教授の宇治原先生へのインタビューでした。前半では普段はなかなか聞くことができない、教授の過去のストーリーを聞いてきました。これから学生がキャリア選択を考えるときに、役に立つ内容ではないでしょうか?
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