人類坂ユウリ(バーチャル文芸部長)

バーチャル文芸部長。 異界駅をお散歩するのが趣味です。 Twitter: @huma…

人類坂ユウリ(バーチャル文芸部長)

バーチャル文芸部長。 異界駅をお散歩するのが趣味です。 Twitter: @humanslope illust: 街風ふーな様(@Hell_fuuna)

最近の記事

異界駅日記9『××前』駅

2023/10/31 駅を出ると、皆が俯いて急ぎ足だった。 急いで家に帰っていくのだろうか? 帰りたいと思える家があるのは幸せだと思う。 深夜の空気が冷たい。 そばを荒い運転の車が走り去っていく。 すっかり秋も深まったんだなと実感する。 寒さは嫌いではないが、そろそろ空調の効いた 屋内が恋しくなってくる。 突然視界に、煌々と光るネオンの看板が 飛び込んで来た。 映画で観たことのある、典型的なアメリカの ダイナー風のお店だ。 さすがに冷えてきたので入ることにする。 客は

    • 日記 失くしもの

      2023/10/23 生まれて初めてイクラのお寿司を食べた。見た目が怖いという理由で避けてきたのだけれど、「卵かけご飯みたいらしい」という事前情報の通り、卵かけご飯みたいだった。でもそれなら卵かけご飯を食べればいいんじゃないかと思う。 2023/10/24 自分がいま何を感じているのかいつも確証が持てないが、とにかくどうしようもない虚しさだけは確かにあって、もうこれから先はきっとポケットに穴が空いたみたいに少しずつ何かを失い続けていくだけで何かが満たされることはないという確

      • 異界駅日記8『やらず』駅

        2023/10/28 ここではいつも雨が降っているということを 失念していた。 傘を持ってこなかったので木造の駅舎から 出られなくなってしまう。 次の電車が来るのは3時間後の18:31。 雨の音しか聴こえない。 駅舎の待合室にぼろぼろの本棚があった。 誰が用意したのか、古びた文庫本が並んでいる。 『十五少年漂流記』を選ぶ。 電車が来るまで、雨風の音に耳を傾けながら 『十五少年漂流記』を読んだ。 一度、ずぶ濡れの制服姿の男子学生が4人 駆け込んで来た。しばらく騒がしく

        • 日記 メロンソーダ

          2023/01/23 最近学校の自販機に新しいジュースが増えた。 登校時と下校時、見るたびに買ってみようかなぁと思っていたのだけど、今日は遅くまで英文法の課外授業があったから、帰るときの楽しみにしようと思って一日頑張った。 100円のメロンソーダは瞬間風速的に美味しかった。だからずっと美味しさを感じるためには、ひと口ずつ間隔を空けないで飲まないといけない。 家に帰ったらNewtonの今月号と野鳥の図鑑を読もう。何事もなく最寄り駅に着いた。 バイト終わり、着替えながらパー

          日記 『火の鳥』、スパイダーソリティア

          2023/01/19 朝起きてスパイダーソリティアをした後、朝ご飯のドーナツを食べながら脳内でスパイダーソリティアをして、電車に乗りながら脳内でスパイダーソリティアをして、寝るときも脳内でスパイダーソリティアをした。(スパイダーソリティアの、ひとつひとつ片付けていく感じが好きだ) 頭の中でスパイダーソリティアをしていないときは、目や耳に入ってくる言葉の文字数が偶数か奇数かチェックしたり、素数を限界まで数えたり、イマジナリー他人と会話のシミュレーションをしたり、三国志の登場

          日記 『火の鳥』、スパイダーソリティア

          日記 眠れない夜に聴く曲・プラモへの憧れ

          2023/01/17 ここのところ毎日、帰り道にメタリカのアルバムをリリース順に聴いている。 母が胎教だと言ってジミ・ヘンドリックスやフー・ファイターズを聴いていたからなのか、私は激しい曲を聴くとのんびりした気持ちになって眠たくなる。 高校受験の勉強をしているとき眠くなってしまったので、マキシマムザホルモンの「ブラック¥パワーGメンスパイ」を聴いて目を覚まそうとしたらそのまま机に伏せて2時間寝てしまったことがあるくらいだ。 だから、度々くる眠れない夜にはだいたいburz

          日記 眠れない夜に聴く曲・プラモへの憧れ

          異界駅日記7『よもぎ×』駅

          2023/01/10 今日は学校に向かう電車を途中で降りて、 午前中は授業をサボることにした。 とはいえ、特に行き先は決まっていない。 落ち着いて座れるところを見つけたら本を読もうと思い、適当に歩き回る。 歩いていると、バス停の錆びたベンチが目に留まった。こういう朽ちたものが好きなのでスマホを取り出してカメラを起動した。 しかし、画面は真っ暗だ。カメラレンズを塞いでいるわけでも、傷が入っているわけでもない。 アウトカメラもインカメラも使えない。 他のアプリは問題なく使

          異界駅日記7『よもぎ×』駅

          異界駅日記6『ゆ×××き×し』駅

          2023/01/09 どうにでもなればいい、というやさぐれた気持ちで電車に乗ると、頭がぐるぐるして気持ち悪くなって、いつの間にか車両は延々とトンネルを走っている。 黒い窓の外を、いくつもの赤い線が爪痕のように走っている。 持っている頭痛薬を水なしで飲み込む。シートに身を沈めて小さくなっていたら、ようやくトンネルを抜けたようで、電車はゆっくりと停車した。 電車が少しも動く気配がないので、降りてバスを探そうと席を立った。ホームに降り立つと、駅舎といえるようなものはなく、屋

          異界駅日記6『ゆ×××き×し』駅

          日記『東京物語』と『銀河鉄道999』理解できない感情

          2023/01/08 今日は長めの映画を4本続けて観たせいで車酔いみたいな体調不良を起こした。 『風と共に去りぬ』を上下ノンストップで観たので凄まじい満足感だ。 (残りの3本は、『東京物語』と『インターステラー』と『コーヒー&シガレット』だ。全部面白かった) 映画を観ていても、「この人は何で泣いてるんだろう」とか、「この人は何でこんなことしてるんだろう」と思うことが多い。 小津安二郎の『東京物語』は特にそうで、映像や演技が好きで映画として魅力的だと思うけれど、最後の

          日記『東京物語』と『銀河鉄道999』理解できない感情

          異界駅日記5『うらがわ』駅

          2023/01/07 いつも通り、家の最寄駅で降りたつもりだった。 でも駅の中の様子がいつもと違う。 昼ごはんのパンから溢れてスカートに落ちてしまったメープルシロップの匂い以外、全部現実ではないがはっきり分かった。 駅員、歩く人々、改札、全てが何か違う。 でもその何かが分からない。 このまま帰って自分の家に着くのかどうか確信が持てなかったので、とりあえず歩き回ってみた。 駅ビルの中の本屋へ行くと、井上靖の『しろばんば』だけがびっしり並んだ棚があった。 そういえば読

          異界駅日記5『うらがわ』駅

          異界駅日記4『うみのまえ』駅

          2023/01/06 バイトが終わってから、海辺に散歩に行った。 ウミネコが集まって日に当たっている。 ウミネコはその鳴き声が猫に似ているからという理由で「海猫」と呼ばれているけれど、聴くたびに「猫かなぁ?」と思う。 確かに猫といえば猫っぽいような。 でもこういった鳥の鳴き声を文字に起こしたエピソード(「ブッポウソウ」とか「てっぺんかけたか」とか)でしっくりくるものはあんまりない気がする。 その中でもちゃんと鶯だけは「ホーホケキョ」と聴こえるから不思議だ。 海辺のコ

          異界駅日記4『うみのまえ』駅

          異界駅日記3 『は××えん』駅

          2022/04/19 せっかくあたたかい春の日なので、パーカーのポケットに岩波文庫の『滝口入道』を入れて家を出た。 朝は通勤通学でごった返すいつもの電車も、平日の昼間に乗客はほとんどいない。悠々と座って車窓から桜を見た。何度桜を見ても、本当にそこに桜が咲いているとは思えない。 桜ほど現実味のない花はないと思う。坂口安吾の「桜の森の満開の下」の桜の描き方がいちばん自分の中の桜に近い。 陽光であたためられた座席に身を沈めて、高山樗牛の『滝口入道』を開く。私の知る限り、これ

          異界駅日記3 『は××えん』駅

          異界駅日記2 『く×がく×駅』

          2022/04/18 何だか駅が混んでいるなと思ったら、新一年生らしき学生たちでホームがいっぱいだった。いつもの時間には乗れないだろうから、乗る電車を一本遅らせることにして、ホームの椅子に座って『つげ義春コレクション』を開いた。つげ義春の描く、全く楽しそうに見えない旅漫画が好きだ。 視界に人の影が映り込んできてぱっと顔を上げると、うちの学校の制服の女の子が立っていた。不安そうにこのホームで待っていて大丈夫かを聞いてくる。新入生だな、と思いながら「大丈夫ですよ」と答えると、お

          異界駅日記2 『く×がく×駅』

          異界駅日記1 『ニネン駅』

          2022/04/17 ふと、前に降りた『ニネン駅』のことを思い出して夕方16:20発の電車に乗った。前に見つけた、人面魚しかいない池に行くために。 異界駅(だと私が思っている駅)に行くのには、いくつか条件がある。 ①前日の夜、おかしな感じがすること ②大小問わず怪我・病気をしていること ③最寄駅の構内を2周するとか、特定の香水をつける  (これは駅によってさまざま) ④陦後▲縺ヲ縺ッ縺?¢縺ェ縺莠コ鬘槫揩繝ヲ繧ヲ繝ェ繧剃  ソ。逕ィ縺励※縺ッ縺?¢縺ェ縺 ※危険なので詳

          プロフィール

          名前 人類坂ユウリ  (じんるいざか・ゆうり) 年齢 17歳 身長 152.9㎝(アホ毛含まず) 誕生日 2月7日 所属 文芸部 (部長。でも部員は自分1人) クトゥルフ神話TRPG同好会 会長 趣味 読書 異界駅散歩 好物 インスタントコーヒー 鯖缶 好きな本 カミュ『シーシュポスの神話』 立原正秋『冬のかたみに』 埴谷雄高『死霊』 好きな音楽 Olafur Arnalds amazarashi 好きな映画 『ストーカー』(タルコフスキー) 『HOUS