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8/28開催「性暴力のない社会のために、今、私たちにできること」質問回答票

8月28日、ヒューマンライツ・ナウ(以下、HRN)は、JANICグローバル共生ファンドの中間報告イベントとして、『性暴力のない社会のために、今、私たちにできること』を開催いたしました。

イベントには、ジェンダー平等実現のために様々な立場から活動されている小島慶子さん鎌田華乃子さん清田隆之さんをお呼びし、性暴力を構造的に捉え、個人にできるアクションを考えました。

今回は、時間の関係上、イベント中に回答することができなかった参加者のみなさまからのご質問にお答えします。

質問1
保護監督者からの性暴力に暴力脅迫要件って必要なんです?

<回答>
現在の刑法では、13歳未満に対する性交等については、暴行脅迫の有無を問いません。
また、現に監護する者が18歳未満の者に対し性交等を行った場合には、暴行脅迫の有無を問わず処罰されます。
したがって、18歳以上の者については、現在の刑法では、例え監護者が被害者の意思に反し性交等を行った場合であっても、暴行脅迫要件を充たさない限り処罰することはできません。

質問2
行為者に「故意」がなかった(「同意していると思っていた」)場合、無罪となることについて、検討会の論点整理では、「被害者が性交に同意していないことについて、一定の行為や状態が認められる場合、検察側ではなく被告人側に立証責任を求める規定を創設するか、または「不同意である」と推定される状況を規定に挙げるべきか」とあります。
これは実現可能だと思いますか?

<回答>
スウェーデンのように、積極的参加がなければ違法、という考え方は、行為を起こす側が相手の意思を確認する義務を設定しています。同意の有無が曖昧だったら、してはいけない、曖昧であることのリスクは行為者が追う、という考え方です。

これに対して、不同意が罪、というのは、もう少し手前で、あくまでも、不同意であることを、行為者が客観状況から認識する必要があります。
そこで、何が「不同意」の徴表なのかを具体化していく、ということが必要となります。HRNが6月に発表した改正案は、そのような意図から作成されました。

質問3
男性、女性限らず、性暴力の問題について意識の差、知識の差があると思います。関心を持ってもらうための土壌づくりには何が必要なのでしょうか

<回答>
 今回のイベントに参加してくださった皆さんや、日頃から性暴力に関心のある方々が、身近なみなさんと共に、性暴力とはなにか、現在の刑法の何が問題なのか、1人でも多くの方と意見交換をしてくださることが必要だと思います。

質問4
性暴力をなくす土台としての社会構造の変革を求める意見を寄せる必要性を感じます。海外では、性暴力とジェンダー差別・格差はどう関連して前進しているでしょうか?

<回答>
 2014年4月に欧州評議会「女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンス防止条約」いわゆるイスタンブール条約が発効しました。同条約では、女性に対する暴力は人権侵害であると規定され、女性に対する暴力を犯罪とすることを締約国に求めています。

男女の不平等な力関係が暴力の背景にあり,女性の地位向上の達成を阻んでいるとして,締約国にジェンダー平等政策の実施と女性のエンパワーメントを促し、条約の実施および規定の影響の評価にジェンダー の視点を含めることを求めています。(出典:欧州評議会「イスタンブール条約」 東洋大学法学部教授 今井雅子 国際女性No.29p84~88)

イスタンブール条約で指摘されているとおり、性暴力の背景には、ジェンダー不平等や性に対する差別があります。これらを解消していくことが性暴力のない社会の実現にもつながると思います。

質問5
政府と自治体が性暴力サバイバーの意見を聞くのは大切です。なぜ日本政府はサバイバーの意見を体系的に聞き声を犯罪被害者政策の中心にする制度を作らないのでしょうか?

<回答>
 ご意見のとおり、犯罪被害者を中心とした被害者支援体制の構築は必要であり、日本ではまだ不十分でしょう。現在、法務省内で犯罪被害者支援弁護士制度検討会が設置され、弁護士による犯罪被害者の支援を 充実させる観点から、支援の対象とすべき犯罪被害者の範囲、支援の在り方等について、法制度化に向けた課題を含め広く検討し、論点整理が行われます。
こちらの動きも注視いただければと思います。
http://www.moj.go.jp/housei/sougouhouritsushien/housei04_00017.html

質問6
「暴行・脅迫」「抗拒不能」の要件を撤廃し不合意のみの犯罪成立となると冤罪が生まれるんじゃないか?と懸念されています。どう思いますか?

<回答>
何をもって「不同意」を認定するか、ということが重要なポイントなってきます。被害者の認識だけに帰せしめると、認定が不安定になる、ということが議論になっているのだと思います。社会の常識が「一緒にを飲んだら同意」「車に乗ったら同意」「密室に入ったら同意」というところから、どのような場合に不同意なのか、ということを、共通認識を作っていくことが大事だと思います。

また、冤罪が生じやすいのは、人質司法や、弁護人の取り調べ立会権が無いことや、録音録画が限定的であるとか、刑事司法手続き全体の問題もあります。

刑事司法を変えていくことと、「性的同意とは何か」というコンセンサスを作っていくことが大事です。このような思いから、6月に条文案をバージョンアップしました。

質問7
私は昨年の11月21日の12団体の提示された改正案で進んでいくと思っていましたが、どうしてヒューマンライツ・ナウは独自で改正案を出され、記者会見されたのでしょうか?

<回答>
11月の改正案と、6月の改正案の大きな違いは、不同意を示す徴表としての行為類型を、暴行脅迫以外の類型を付け足したことです。
威迫、不意打ち、偽計、欺罔、監禁を用いたっ場合は「不同意」であるという点と、人の無意識、睡眠、催眠、酩酊、薬物の影響、疾患、障害、洗脳、恐怖、困惑などの状況に乗じて行った場合、も不同意であるという点です。不同意性交罪を創設したい、という思いは同じです。

昨年の提言を発表後、その提言内容に関して、ヒューマンライツ・ナウとして、さまざまな関係者から意見を聴取し、より精度の高い提言とする必要性を感じ、改訂の必要があると考えました。検討会の議論が始まるタイミングで速やかに公表することが重要と判断したため、6月の発表に至りました。

改訂版をの前文に「国内外の法律家や市民との対話を実施しました。これらの対話により、 認識が深まった部分や論理的整合性などを考慮し」
記載しております。

〜終わりに〜

この秋も、刑法性犯罪規定改正の機運を高めていくため、イベント・キャンペーンを開催していきます。これからも私たちと一緒に声をあげてください。よろしくお願いします!

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