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【実例紹介】Humanome Eyes × 顕微鏡画像を使ったAI解析

顕微鏡画像は、論文やプレゼンに利用するだけでなく、画像解析と組み合わせることで細胞やコロニーの状態を定量化する事が可能です。例えば、以下のような事例が考えられます。

  • 細胞の増殖速度を計測:培養条件の評価や薬剤の効果の確認

  • 細胞の種類と個数を調査:分化状態や分化した細胞の同定

AIを利用して定量化する、あるいは、定量化されたデータをAIで解析することで、今まで、技術員の方が計測していた内容を自動化でき、コスト削減や定量性の向上を見込めます。また、定量性の向上は、より的確な疾病診断や生物学的発見へとつなげる可能を高めます。

ここでは、血液の顕微鏡画像から赤血球と白血球の量を計測するAIを、画像認識AI構築ノーコードツール「Humanome Eyes」を利用し、実際に計測する事例をご紹介します。

1. 目標設定

AI開発をする際は、まず目標を設定し、そこまでの道筋を噛み砕くことで、本当にAIが必要であるか、開発すべきAIは何であるかを明確にしてから開始します。

今回の事例では、健康診断で採取された血液の異常を調査するため、AIを利用して赤血球・白血球の個数を計測する流れを考えます。

一般に、肺炎等の疾患を持つ方は白血球数が多くなるため、画像を利用した血液検査は疾病診断の第一歩となります。実際、現在白血球数は専用の検査機器を用いて数を数えられており、顕微鏡を用いて数えることはありません。

しかし、研究対象がiPS細胞の分化や、特殊な細胞であったりする場合、専用の測定装置は販売されていないと思います。これらに関しては、自分専用のAIを作成することで、数を数えられるようになります。

AI構築を行う際の目標設定方法や全体の流れについては、こちらのnoteにまとめています。本記事と合わせてご参照ください。

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2. AI構築の概観

赤血球と白血球を数えるAIを構築する流れを説明します。
赤血球や白血球の数を数えるため、まず写真を利用して、赤血球や白血球がどこにあるかを認識するAIを構築します。この「どこにあるかを認識する」ことを物体検知と言います。

物体検知のAIが構築できたら、検出された赤血球・白血球の数を数えることで、自動的に赤血球・白血球の数を数えることができます。

物体検知のAI構築は、大きく分けて以下の4つのパートに別れます。対象の画像を集めれば、残りの工程はすべて Humanome Eyes の中で実施可能です。

1.  画像の収集
2. アノテーション(AIが学ぶ答えを作る工程)
3. AIモデルの構築
4. 構築したモデルの評価

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3. 画像の収集とアップロード

まず、見つけたい赤血球や白血球の画像を準備します。このとき、最終的に判断したい顕微鏡画像と、可能な限り類似した状況で写真を収集してください。

例えば、以下のように実際にAIが利用されるシチュエーションと異なる画像を集めることは避けましょう。

① 赤血球・白血球が複数混じっている状態で数を数えたい
 ⇒ ✗ 赤血球1個だけを拡大した写真を収集する
② 顕微鏡画像はカラーで撮影できる
 ⇒ ✗ 白黒画像を沢山収集する

AIは与えられたデータを愚直に覚えます。そのため、利用されるシチュエーション(倍率、色味など)と異なる写真は「これは違う」と判断し、学習対象として利用されなくなってしまいます。

よく「何枚の画像が必要ですか?」という質問を受けます。集める画像の枚数は、事前に知ることが難しいです。AIは人間と違います。人間が分かりやすいと感じても、AIにとっては学習が難しかったり、その逆もよくあります。

一般的には100枚〜500枚程度を集めて、これから説明する工程を一度実施し、その結果、精度が十分出なかった場合には、更に画像を集めてAI開発を実施します。場合によっては、AI以外の方法を利用して問題解決を考えることもあります。

AIに学習してほしい画像を集めたら、Humanome Eyes にアップロードしましょう。集めた画像ファイルをドラッグアンドドロップするだけでアップロードできます。なお、目安として最低10枚は画像をアップロードしてください。

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4. アノテーション

AIに認識してほしい場所や内容を示した目印をアノテーションと呼びます。今回は用意した写真から白血球と赤血球を認識してほしいので、顕微鏡画像に写った赤血球と白血球にアノテーションを実施します。

Humanome Eyesでは、ブラウザ上でアップロードした写真に対して、マウス操作だけでアノテーションを実施することができます。今回は364枚の画像に、約5000細胞をアノテーションしたデータを利用します。

5. AIモデルの構築

アノテーションが終了したら、AIモデルの学習を実施します。Humanome Eyesでは「開始」ボタンを押すだけでAIモデルの学習が開始されます。

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学習が進み始めると、Humanome Eyes上で、現在のAIの学習状況を確認することができます。次の2枚の写真は、左に「人がアノテーションをした結果」右に「現在のAIモデルが予測した結果」を示しています。1枚目の写真は学習初期の様子、2枚目の写真は学習が進んだ後の様子です。

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学習初期のAIの様子(一部の細胞は見つけられているが、見逃しも多い)
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学習が進んだ後のAIの様子(人間がアノテーションしていない細胞も見つけている)

AIは最初から完璧なものではなく、無垢な子供の状態からはじまります。データを確認しながら学習を進めることで、2枚目のAIのようにになり、人間が指示していない細胞も、的確に見つけることができるようになります。

6. AIモデルの評価

作成したAIモデルが実用に足るものかを評価します。評価の仕方は、作成したいAIを活用する場面や要求する精度によって異なります。ここでは、これまで学習に使っていない顕微鏡写真をテスト用画像として使うことで、本当にAIが細胞を認識できているかを確かめてみましょう。

Humanome Eyesには、構築したモデルを利用した物体検知機能だけでなく、検知した数を数えてくれる機能も搭載されています。

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上の検出例では、与えた画像の中から白血球(WBC)1個と、赤血球(RBC)11個が見つかりました。細胞同士が重なっているところは、AIを利用しても認識が難しく、その細胞数は数えられていません。

顕微鏡写真は平面の図です。より正確に数を計測したい場合には、細胞間の重なりがないように、あらかじめ撮影条件を工夫する必要があります。

7. おわりに

この記事では Humanome Eyes を利用した細胞数認識の実例をご紹介しました。同様の手順で、例えば投薬後18時間・36時間・72時間など、時間を追って計測された画像に対して、オーダーメイドのAIを作成・適用することで、薬剤ごとの効きの差についての定量計測等が実施できます。

本ページのデモにおける血液画像およびアノテーションは、BCCD Dataset を利用いたしました。


Humanome Eyesによる解析事例については下記でもご紹介しています。

Humanome Eyesの利用法は、動画で紹介しています。ぜひご覧ください。

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