「アマルコルド」の名シーン②(洋画)

 沖を夜中に、大型客船「レックス号」が通過するらしい。町は大騒ぎだ。その客船を一目見るため、みなこぞってそれぞれボートや、小型船に乗り込み、沖を目指す。
 町の人々の目が輝いている、浮き足だっている。客船は人々に幸運をもたらす「宝船」のようなものだ。
 ただ1艘の大型客船を見るために、老いも若いも一斉に繰り出す。その情熱が尊い。
 闇の中、ボートの上で無言の者、歌を歌う者、世間話しをする者。
 町一番の美魔女グラティスカは、自らの恋愛観、結婚観を友人に語ったりする。
 客船は予定時刻になっても、現れない。痺れを切らして、居眠りを始めた。
 1時、突如巨大なレックス号は現れた。辺りは客船の明かりで、急に明るくなった。立ち上がって客船に手を振る者、大声を発する者、抱き合う者。みな、感情を爆発させた。この感激が尊い。
 スマホで撮る者はいない。自分の記憶に焼き付けるのだ。
(1973年 フェデリコフェリーニ監督)

いいなと思ったら応援しよう!