見出し画像

エッセー 「死ぬまで手元に置いておきたい本5冊」③

平凡パンチ増刊「大橋歩表紙集」(1964年~1971年)マガジンハウス
              大橋歩

とにかくクール!カッコいい!
 一見雑なタッチのようだが、対象の特徴をうまく表現している。構図も素晴らしい。昭和レトロの若者、ファッション、風俗も気に入っている。懐かしい。

 ここにはフォークソング「神田川」のような、感傷的なシーンや貧乏臭さがない。
 背筋を伸ばし、アイビースタイルの若者が大股で街を闊歩している。
 仕事と遊びを使い分け、人生をポジティブに生きようとしている姿が描かれている。
 一方、女性たちはアイシャドウとつけまつ毛がかわいらしく、悩ましいランジェリー姿やかわいいミニスカートで、男どもを魅了する。

 また凛とした雰囲気漂う和服の女性、機内で緊張感を持って働くキャビンアテンダントもステキだ。

 大橋歩のイラストは、当時の若者を模倣したのではなく、当時の若者たちが大橋歩のイラストを模倣した。

(同じように、今、流行りの蔦重の浮世絵も、作者が当時の人びとを模倣したのではなく、当時の人びとは、浮世絵の人物たちを模倣したのかもしれない)

 僕は最近の妙に萎縮した、過敏な若者より、これらの表紙を飾る「群像」がはるかに好きだ。

 今でも、これらの表紙から、人生の楽しさ、元気、積極性、カッコよさをもらえるのである。
 たとえ金はなく、萎びた老人の僕であっても。

いいなと思ったら応援しよう!