“心のかたち”をいかに守るか(後編)
看板業務をベースに
そのなかでも、当スタジオは設立1年後の2002年10月にはメールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』を創刊、その1か月後に「青少年支援セミナー」というイベントを開催。前者は今でも続いて219号まで配信、後者は2014年3月に終了するまで20回開催しました。
メールマガジンは広報の一手段として創刊したのですが、私が実践経験を積み重ねていくにつれ次々と伝えたいことが増えてコラム(本文)は毎号長文となり、読者の評価もうなぎ上り。そこでその文章をテキストに使う家族会を開催するようになり、メール相談でも必要に応じてリンクを貼るなど、あらゆる業務に活用。2014年には一部が『不登校・ひきこもりが終わるとき』という本になるなど、今や全国に1000人を超える登録読者を擁する当スタジオの看板業務となっています。
相談は完全予約制で、面接時間は2時間以内。必要なら家庭や学校、関係機関に出向きます。不登校からひきこもり(おとな)まで幅広い年齢の方の親御さんがほとんどで、ご夫婦の比率が高いです。
今年度7年目を迎えた家族会「しゃべるの会」は、最初は不登校の子どもとひきこもりのおとなのご家族の合同で3か月に1回開催していましたが、4年目からほとんどの回で10人を上回る盛況ぶりで、かえって参加者どうしの話し合いが困難になっていたため、6年目から「不登校編」と「ひきこもり編」の分散開催とし、少人数による充実した話し合いが復活しました。
ただ、親御さんによる自発的な会とは違って、私が担当者としてテキスト読み上げや進行をしながら、必要に応じて解説を挟むスタイルです。
“心のかたち” をいかに守るか
人は誰でも、それぞれ “心のかたち” を持っています。しかし「学校に行かない/社会に出ない」人たちに対して親御さんや周囲の方々は「心がどんなに削ぎ落とされてかたちが変わってもいいから学校復帰/社会復帰させよう」と考えます。「みんなそうやって適応しているのだ」と。
しかし私は「本人の心が極力原型に近いかたちで自分の生き方を見出すこと」を目標にしています。本人が心を削ぎ落としながら学校/社会復帰への努力を重ねた結果、心のかたちが原型をとどめないほど変わってしまっていたら、復帰できたとしても本人は決して幸せではないと考えるからです。
そこで、私は常に、相談や家族会、メールマガジンのなかで不登校やひきこもりの心理や対応のあり方をどう伝えるかに心を砕いてきました。
相談面接では、ホワイトボードにギッシリと書いた図や言葉を、相談内容に応じて選んで解説することもしばしば(筆者注:カバー写真)。一方的な指示やお説教をすれば相談者は否定されたと感じ、伝わるものも伝わらなくなるので禁忌です。親御さんや学校の先生は、本人の気持ちが理解できると本人への見方が変わって接し方が良くなります。そうなれば本人は楽になり、それにつれてエネルギーが回復していくわけです。
15年、そしてこれから
当スタジオは今年の10月1日で設立15周年を迎えます。そのうち相談業務は13年半、家族会は通算9年続いています。
私は10年余りの援助経験から、発達や精神の障碍がないか、あってもその影響が軽微な不登校とひきこもりについては、対応のあり方が明らかになっていると認識しています。すなわち、周囲の適切な対応によって、本人は学校/社会に出ないことを除けば生きていくのに支障ないところまで歩んでいけるのです。それ以上のことを本人たちに求めるなら、支援や学校や社会の側が本人たちに合った仕組みに変わらなければならないと考えています。
初出:
本文=メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第220号(2016年11月4日)
設立15周年へのメッセージ=『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第223号(2017年4月5日)
⇒⇒⇒⇒⇒設立15周年へのメッセージ(2)
関水徹平さま(立正大学講師)*****
ひきこもり経験の理解と支援について、地に足のついた明晰な言葉を発信し、実践してこられた丸山さんから、たくさんのことを学んできました。これからも当事者の人生を応援する丸山さんの活動への共感が広がり、自分と他人の人生を応援し合える関係が広がることを願っています。
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※次回以降は、Facebookに書いた文章も交えて転載していく予定です。
※ヒュースタでは、来たる17日(土)に家族会「ダべるの会」を開催いたします。不登校とひきこもり(おとな)合同の茶話会です(ご家族限定)。また私は、翌日に八王子市で講演します(一般公開)。どちらもオンライン併用ですので全国どこにお住まいでもご参加いただけます。 ↓ の公式ブログ記事をご一読いただき、末尾にリンクしている告知ページで詳細ご確認のうえ、よろしければお申し込みまたはご紹介をお願いいたします。
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