最後の「青少年支援セミナー」での重要な指摘(前編)
※一昨年度と昨年度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文を転載してきましたが、今年度からはメールマガジン(メルマガ)にかぎらず過去に書いた文章を毎月1本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています。
※先々月の最後に予告したように、先月は先日開催したメルマガの創刊20周年記念イベント2日目のプログラム「当事者パネルトーク」にちなんで、10年前に開催した「第18回青少年支援セミナー」で初めて盛り込んだ際のパネラーの発言を精選した機関紙の記事を転載する予定でしたが、掲載号の現物も原稿データも行方不明のため投稿できませんでした。
※そこで、その記事の現物が見つかったら投稿するとして、今月はその2年後に2日間の日程で開催した「第20回青少年支援セミナー」(最後のセミナーでした)の報告記事(メルマガの「特別企画」欄)を転載します。全体の報告ではありますが、そのなかで3度目の「当事者パネルトーク」(カバー写真)に登壇した林恭子・勝山実・伊藤書佳の3氏や、2日目のプログラムに登壇したふたりの当事者経験者による発言の数々は、その後も私がメルマガで引用するなど8年経った現在も当事者経験者の間で語られている重要な指摘ばかりです。ぜひご一読ください。
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1日目「シンポジウム」
(3段落略)
15分の休憩後、前々回からおなじみの “当事者トリオによる本音トーク” へ。今回のテーマは丸山の近況に関連した「 “当事者本” 対談」と、丸山が参加している当事者中心の会について語り合う「居場所はどこに」の2本立て。
前半は初めて著書を持つことになった丸山と、すでに2冊の著書で知られる勝山実氏が中央に着席。まず勝山氏の最初の著書『ひきこもりカレンダー』が出版されて「自分には文才がある」と舞い上がってから再び落ち込むまでの気持ちの変遷を振り返っていただき、続いて2冊目の『安心ひきこもりライフ』について、編集した伊藤書佳氏に “元ネタ” のブログや新聞連載を本にしようと思った理由をうかがいました。続いて丸山の近著について “元ネタ” のメールマガジンを「出版されたら “当事者本” (転載者注:当事者経験者が書いた本)ナンバーワン」と評していた林恭子氏にあらためて評価していただき「わかりやすい」「親御さんに優しい」などと文章をほめてくださいました。
話題はお互いの立場の異同に移り、当事者向けに書いている勝山氏と親御さんをはじめとする周囲の方々向けに書いている丸山の、それぞれの思い、さらに前回の「人物対照表」に記載されていた勝山氏の「ひきこもり時代は悪いことしかなかった」というコメントをめぐって、氏の説明とそれに共感する丸山と林氏のコメントがありました。
小休憩をはさんで席替えを行い、後半の「居場所はどこに」に移りました。
伊藤氏は「いけふくろうの会」という “不登校・ひきこもり飲み会” の、勝山氏と林氏は「新ひきこもりについて考える会」の、林氏はもうひとつ「新ひきこもりについて考える会・読書会」の、それぞれ共同世話人のひとりとして運営に携わっておられます。そして丸山は、そのすべてに参加しています。
それぞれ自己紹介と会の紹介、さらに様子や魅力を順に話していただいたあと、丸山が「いけふくろうの会」でほかの参加者から聞いた話をもとに「3つの会に共通しているのは<安心感>では?」と話を向け<安心感>が醸し出される要素としてどの会も「支援を目的とした居場所ではない」「参加者が居場所だと思える場所」という認識で一致しました。
この点を伊藤氏は「通過点ではない」と、林氏は「いつでも戻ってこられる場所」と、それぞれ表現しておられました。さらに林氏は「新ひきこもりについて考える会」に参加するようになっていた時期を振り返って「マイノリティ(少数派)の人たちとの出会い」が支えになったと語りました。
一方「それらの会に参加できない段階の当事者が居場所にできる場所は?」と丸山が問うと、勝山氏は「無料でいられる場所」として「図書館」「古本屋」を挙げ、林氏は「映画」「自転車に乗って海」を挙げました。また両人とも当事者が安心する対応を家族ができるようになるまで時間がかかることを指摘しました。それを受けて丸山は「家庭を居場所にすることの重要性」を強調しました。
最後に「質問用紙」や挙手による質問に、4人それぞれが各自の持ち味を出して微妙に違う角度から回答し、3度目の “当事者トリオ” を招いてのトークが終了しました。
(1段落略)
<後編に続く>