新型コロナ禍とひきこもり(前編)
※2020年度と2021年度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文を転載してきましたが、今年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。
※今から3年前の2020年は、新型コロナ禍によって春先から多くの業務や活動がストップ。私がやっているヒューマン・スタジオも、公開業務(家族会・イベント・連続講座)は2月28日に開催した『ごかいの部屋』に文章を200本掲載したことを記念する読者会を最後に、2月と3月の連続講座が延期になったうえ新年度は中止。家族会「しゃべるの会」も4月は中止になったうえ相談件数も一時はゼロに。私の講演等依頼仕事も、2月から4月に入っていたものはすべて延期か中止に。同様の閉塞状況はあらゆる業種に及んでいたので、ほとんどの方が大変なことになっていた1年でしたね。
※そんな厳しい状況のなか、5月に支給された特別定額給付金について「ひきこもり状態の人にも分配されるのだろうか」という懸念を当事者活動仲間と話した結果、自分にできることとして同月緊急談話を発表。さらに5月に開催するはずだった年次イベント「不登校・ひきこもりセミナー2020」を、感染状況がいったん改善した9月に開催しました(カバー画像)。そこで今月は、緊急談話を前編に、同セミナーの報告文のひとつを後編に転載します。どちらも重要な指摘に満ちていますので、ぜひご一読ください。
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特別定額給付金の取り扱いに関する緊急談話
不登校・ひきこもり・報道 関係各位
特別定額給付金が世帯主に一括支給されることに決まり、申請が始まっています。
給付金をDV等の被害者や住民票のない方等にも行き届かせようという働きかけがなされていますが、私は自身の不登校・ひきこもり体験、ならびに不登校・ひきこもり相談室「ヒューマン・スタジオ」での援助経験を踏まえ、不登校状態の子どもたちやひきこもり状態のおとなたちへの影響を懸念しています。
一般に世帯主の方は、家族の人数どおりに給付金を申請し受給するでしょうが、それを家族各人に配分する際「ひきこもり状態であることを理由に配分を拒まれた」という本人の話を聞きます。
私は、ご家族による不登校/ひきこもり状態の本人への対応のあり方のひとつとして「特別扱いしないこと」を挙げています。「特別扱い」とは「学校に行っていないから/仕事についていないから、〇〇する/しない」という対応です。そうではなく、本人がどのような状態であっても「家族の一員として接する」「ほかの家族と違う扱いをしない」という姿勢が大切です。
そのため、給付金に関して本人不在の決定やほかの家族と差をつけた金額または配分拒否は、家族から排除されたという絶望感や行動するための金銭不足による意欲の減退など、本人に悪影響を及ぼしかねません。
この観点から、このたびの定額給付金受給の際にご留意いただきたい点を挙げておきます。
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1.本人が家族と会話できる関係にある場合、受給する給付金の受け渡し方法について、家族会議等話し合いの場で、または個別に、本人の希望を聴いたうえで決定する。
2.本人に口座があれば振り込み、口座がなければ口座を開設して振り込むなど、確実に本人に配分する。
3.やむを得ず受給額のとおりに配分できない事情がある場合、家族会議等話し合いの場で、または個別に、事情と使途を説明し本人を含む家族全員の同意を得たうえで決定する。
4.本人が家族と会話できる関係にない場合、メモなどの手段で上記3点と同様に進める。
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これを、不登校/ひきこもり状態への対応のあり方を再考する機会にしていただけるよう願っております。
2020年5月17日(5月23日一部修正)
ヒューマン・スタジオ代表兼相談員 丸山康彦
初出:『特別定額給付金の取り扱いに関する緊急談話』<ヒューマン・スタジオ公式ブログ「ヒュースタ日誌」(2020年5月17日)
<後編に続く>