ルームシェアが始まらなかった話
社会人になって共通の趣味で知り合った女性が、お金の使い方という共通の悩みを抱えていて、お互い生活習慣も似ているし、ルームシェアしてお金を浮かそうか?という話になった。私の転職が成功したら、という条件付きで。
わざわざファミレスで話し合ったりして、目ぼしい物件を見に行くまでしたけど、結局駄目になり、LINEをブロックするまで発展した。
一番大きかったのは、金銭的負担の偏りを彼女が軽視したことだと思う。
私は住宅手当がもらえるが、彼女はもらえない。住宅手当があること、言わなきゃよかった。とにかく、その不公平さを整えるため、住宅手当分、私が多く家賃を払うことになった。
それだけなら別に良かったのだが、目をつけていた部屋が和室と洋室の2LDKで、どちらがどちらの部屋を使うかということで揉めた。
彼女は、「公平に、1ヶ月ごとに部屋を交換しよう」と言ってきた。1年毎なら分かるけど、1ヶ月毎?!大体、家賃負担が実質多いから、選んでいいよって言うところじゃない?!
ということを実際彼女にも言ったんだけど、1ヶ月毎がいい、家賃負担とは違う話だから持ち込まないでほしい、ということだった。結局話は平行線で、「でも、結局転職はまだ決まらないんでしょ?」と言われて、決着はつかなかった。
そのとき私は、すでに最終選考まで進んでいて、前の会社では深刻な病気を患いかけたこともあり、転職が決まるより前に、既に退職していた。だから転職もすぐ決まりそうだし、時間的には焦ってるんだよね、と伝えると、彼女は「そんな大事なことを言わなかった。そんなことだろうと思った」と怒り出した。
私としては、転職が決まる手応えを感じていると伝えていたし、そもそも転職が決まらなければ話が流れるだけであって、退職したことは驚かれるとは思ったけど、特に問題ないと思っていた。転職が決まらなければ、話が流れるだけというスタンスは、お互い共通して認識していたからだ。それ以前の私の状況まで共有しなければならないとは、考えていなかった。また、自分の体調や近況をペラペラ話したい相手でもなかった。あくまでもドライな付き合いをしていた。
だから、何に対して「そんなことだろうと思った」のか全く理解できなかった。それまでの話し合いが上手くいかなくなっていたこともあり、感情的に口をついて出た言葉のように感じた。
それからというもの、私は彼女の怒りから始まる精神の不安定さに怯え始めていた。それまでの付き合いの中でも、時折自分の思い通りにならないところで突発的に怒りの感情を見せる素直さというか、幼稚さがあった。私は前の会社で情緒不安定な臨時職員からハサミで脅されるなどしていたため、彼女のそういうメンタルの不安定さに強い恐怖を感じるようになっていた。
そもそも彼女は、会社で壁にぶつかると精神を崩し、休職して服薬治療を行って、体調が戻っては自己判断で服薬を中断して復職し、また壁にぶつかっては休職して服薬治療を行って…ということを繰り返していたので、メンタルが不安定なことは、私も分かりきっていた。それなのにルームシェアの話で盛り上がって、話を進めていこうとしたのだから、今更という感じだった。もっと早くにルームシェア生活を想像しておいて当然だったけど、全然考えていなかったのだった。
結局、転職先でも変な職員からハサミで脅されるなどした場合で、かつ、帰宅したら思い通りにならないことに怒りの感情を見せ、メンタルが不安定で医師の判断なく勝手に服薬を止めてしまうルームメイトがいる生活、というのを想像して、無理だこりゃと思ったので、「じゃあ、ルームシェアは無しってことで」と話自体が流れて終わった。
みんなはどうやってルームシェアなんてやってるんだろう?始まるまでにかなりコストがかかるので、パフォーマンスが悪く感じる。会社に、大学の友達8人で賃貸物件をルームシェアしている人がいるけど、羨ましい。
最初から私もソーシャルアパートメントを探すべきだったんだな。そしてソーシャルアパートメントでも、隣人を選ぶことはできないので、その家賃に相応しい人が入居してくるわけだ。
それから私は、彼女の姿を見て、医師の判断なく服薬治療を自己判断で中断するのは絶対に止めようと思った。何度も休職と復職を繰り返せば、「またか」と周囲の信頼を失うし、自分の自信も目減りしていく。復職するにあたっては、仕事と健康とを両立できそうな薬剤量を徹底して見極めることが重要だということに気付いた。
実は私も、前職の経験から眠るのが下手くそになり、夜だけアルプラゾラムを処方されている。面倒くさいし、私はもう大丈夫だからと飲むのを止めたくなることもあるけど、彼女の姿を思い出して、思い留まっている。それにこの薬を飲むと肩凝りが消えるんだよね。ぐっすり眠れるし良い事だらけだ。
残念ながらルームシェアの話は流れてしまってたけど、私が今、服薬しながらでも健康に社会生活を送ることができるのは彼女のおかげだと思う。
結局、出会いに無駄なんかないんだな。