久々に同い年の奴の芝生が青く見えた。俺は負けたのか

さっきの出来事、バイトの先輩の佐藤君と話した。
佐藤君とは同い年だ。それで相手の今後の夢話を聞いた。佐藤君は現在大学生で今の飲食バイトとキャバクラのバイトを掛け持ちしているらしい。
それだけで凄い体力だと思う。

しかも両方とも接客業という強みもある。
普通の飲食と酒の席であるキャバクラのボーイ。その経験は人を見る目や世の中の事情や裏側を知れて人生において役に立つ時が来るだろう。
本音は酒の席でしか聞けない場合もあるからね。

そんでこれからの彼の夢なんだが、大学卒業後は東京に行き、経営をやるそうだ。
同じ志を持った仲間がいるらしくそいつと東京で経営をやるそうだ。 
不動産、飲食等の経営って言ってたな。
飲食に関してはよく分からないが、不動産に関してなら彼より知識と経験はあるつもりだ。

ここにまだ書いては無かったが実際既にに俺は20で経験もした。中古物件を見つけ購入してリフォームしてアパート化するビジネスをやろうとしてた。俺は既に200万は使った。材料費はそれなり、内装は自分で元職人に学ばせてもらいながらやってるから人件費はかからない。そして電気工事、水道工事は業者を雇わなければならない。それに100万超。
全て業者に頼むより安上がりだし、内装の元職人から経営に携わること(彼は元々ある経営者)や社会の怖さを教わった。まずは誰でも知ってるであろう領収書の書き方から。それから人の掌握の仕方、脅しから圧力まで、それから生き方。幸せの哲学まで。世間知らずな小僧だった俺を育ててくれたいわば第三の父。

イメージは良かった。しかし、筋書き通りには行かず銀行の融資も受けれず計画は一時保留になった。
所詮20過ぎの若造の力なんてこんなもん。
(ちなみに俺は彼に自分のことは何も話していない。身を危険にさらすのはいつも口だと教わったから。
彼はまだ数回しか会ってない素性も分からぬ俺にその話をしてきた。俺が悪人ならもう彼からいつか金を分捕るための材料は2割は揃ってるよ。
なんでもペラペラ喋るその甘さも含め彼はまだただのガキ)

話を戻すがそしてたったそれだけの中にも業者との値段交渉の難しさや対面しての駆け引きの難しさや屈辱、挫折を経験した。若いと業者にも舐められ値段ふっかけられる。勉強代と思えば安いものだ。
当時一番意識したのは"貫禄"の出し方を意識した。若造なりに目つきや表情、髪型、服装、髭を意識して必死に若く見られない方法を模索した。

それから融資を得ることの難しさ、信用に値する人物であるかの査定、これの難しさ、自分のちっぽけさを学んだ。
担保もない。超特別に高給な会社でもない、その他家柄や信用を裏付ける根拠もない。そりゃ当然融資は降りる訳がない。冷静になった今なら見えてくる。

ところで彼の不動産のビジネスモデルを聞いてみたら、俺のよりスケールがデカかった。しかし詳しく聞いたら呆れた。
どうやら彼のビジネスモデルは東京での商売。
それで商用ビルの売買、からのテナントの家賃代らしい。それでダブルで金を取れるから良いというビジネスモデルらしい。

社会にボコられたことがないいかにも大学生らしい発想だと思った。まず上手くいかないだろう。
その売買するビル物件を購入するときの融資は下りるのか? 
ツテも人脈も大してない東京で社会人1年生が会社1年生を作り、ガキでも思いつくような商売してそこに元々いた同業と戦えるのか?
社会に出て1年目の若造が作った1年目の会社。
信用的には白紙も同然。そんな会社に融資するアホな銀行がどこにある。公庫でも審査通らんだろう。それとも何らかの親か何かが担保となるものを持ってるのか?だとしたらそれこそ坊っちゃんだから尚更そいつの実力ではない。
本当に大学生の坊っちゃんが描いた甘い筋書きすぎて笑いを抑えるのに必死だった。

恐らく彼はまだ社会を知らない同じ学校の大学生連中にその話をいつもしているのだろう。
そこで夢を語りガキたちから称賛を得て気持ちよくなってる。そこまでは読めた。
それを同じように俺にもしてきたのだと思う。

しかし俺はなぜ負けたと思ったのだろうか?
年齢は同じ、体力的には互角、人脈も恐らく互角、経験は俺の圧勝、元の能力自体は相手が上だろう。そして行動力は既に行動している分俺の勝ち。総合的には俺の勝ちだろう。

しかし何かに脅威を感じた。
彼は東京、俺は九州とシマが違うのに強烈な脅威を感じた。
その正体はエネルギーだろう。
まだ社会を知らない坊っちゃん。これから社会で勝負に出る若者の野望を抱いた目。まだ社会にボコられたことがない奴のキラキラした目。
これに恐らく俺は脅威を感じた。

1年前の俺を見ているようで、その勢いに圧倒された。勝っているのに負けている気がする、この気味悪さが不快でならない。
特に同い年とはかなり相性が悪い。数年間関わってこなかったし、最も同級生と関わる学生時代、そこでは同級生にはいつも負けている感じがして劣等感の塊だった。
その感覚を半ば思い出して気持ち悪かった。
同い年に俺の敵になるくらいの奴はいないと思って忘れかけてたことを久々に思い出した。
本当に心が逆さまになった気分だ。穴があいたのではなく逆さまになるような気持ち悪さ。

彼に親やなんなりの後ろ盾やツテがあるかは分からないが。ないと仮定したらはまずは100パー失敗するだろう。

しかし俺が脅威に感じたあの目には計り知れない勢いを感じた。能力自体は彼の方が上だから挫折して這い上がったとき…経験が俺と互角に達したとき、俺は完敗するだろう。

結論。俺の無意識領域がそこまで読んだから脅威を感じたのだろう。


俺は全力でやって来た。元の能力も低いし、頭も悪い。実はガチの発達。というか境界知能。
でも全ての人生のリソースをそこに注いできたし出来ることは全てやった。

だから彼に負けるようなことがあろうとも後悔はない。はずだが…それでも悔しいものは悔しい。
現状は勝ってるがいつか負けるとしたらそれは元々の能力、もしくは親等の金の力という自分では選べないもので負けるのだから。

実際は勝っているはずなのに人の芝生は青く見える。他人の強みに目が行き、自分が飲み込まれるような気がする。

いつか感じた感覚。いつも感じていた感覚。
俺は未だ心の奥底では、いじめられて精神的に去勢され劣等感の塊だった学生時代から何も変わっていないのかもしれない。












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