「ハードルが上がる」を別の言い方にしても意味がない【にほんご迷子10】
かねてから「ハードルが上がる」「ハードルが下がる」という表現が気になってはいた。で、調べると多くの人がこの言い回しに疑問を呈している。
私が気になった理由は
『ハードルって、上げ下げしてなくない?』
『それどころか、豪快に倒しまくってない?』
『高跳びのバーの方がふさわしいのでは?』
なのだが、これは少数派らしい。
ほとんどの場合は
『ハードルが上がる/下がるはいわゆる俗語である』
『なのでビジネスやフォーマルなシーンでは使いたくない』
『なのに、それに代わる言い回しが見当たらない』
で、あるらしい。
つまり「ハードル」という言葉を用いずに、同様の意図を表現したいというわけだ。
確かに「改まった場にはふさわしい言葉ではない」というのはうなずける
「ハードルが上がる 類似語」がサジェストででるくらいなので、検索する人も多そうだ。
で、しっくりくる言葉が出てこない。
「敷居が高くなる」
「難易度が高くなる」
「より困難になる」
どれも、同様のニュアンスは出せない。
本当に「ハードルが上がる」に代わる言い回しはないのだろうか?
普通に
「期待値が上がる/下がる」
で良いと思う。
「期待値が上がったかも知れませんが・・・」
「期待値が下がったと思いますので・・・」
これなら改まった場でも違和感がない。多分私はすでにこの言い回しでも使っている。
これで解決。
と思いつつ、やはり何やら違和感が残る。
「ハードルが上がったわ~」
とか、
「ハードル下がっただろ?」
という言い回しは
期待に対する「ソフトな言い訳」的な意味合いをもつ。
それほど重要でないけれど、失敗したくない場面ではとても便利な言い回しだ。だから芸人が「スベった時」の保険として使われたりする。
故に、おそらくだが、フォーマルな場面で
「ハードルが上がる」を言い換えようとする事自体に無理がある。
改まった場で「ソフトな言い訳」をしようとする時点で間違えている。
重要な商談やプレゼンで「ハードルを上げ下げする」余裕はない。多少スベって傷ついたとしても、潔く受け入れればいい。