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「串外し」より、焼き鳥への向き合い方が問題ではなかろうか。

久々に大人数で焼き鳥屋に行き、例のシーンを久々に目撃した。

いわゆる「串外し」

大勢でシェアできる様に、串から外してバラしてしまう、アレだ。特に大人数の場合は、それがマナーとされている感がある。個人的に、この習慣はどうにもいただけない。もう、外した段階で焼き鳥ではないとすら思う。そう思う人が多いのか、この問題は何かと議論になりがちだ。もちろん優勢なのは「串から外すな派」だ。彼らは口を揃えてこう述べる。串のまま食べるのが、本来の食べ方だと…

で、それを聞くたびににこう思う。

『当たり前だ』

自分が「串から外す派」では無いにも関わらず、「串から外すな派」の主張には、かねてから違和感がある。

この違和感の正体はなんだろう。


▪️論点は『本来がどうか』では無い

まず「外すな派」の主張である『串のまま食べるのが、本来の食べ方』は、この論争においては何の意味もない。そもそも本来の食べ方でないから論争になってるのだ。外す派の人も「外すのが本来の食べ方」などとは一言も言ってないし思ってもいない。単純に、大人数で楽しめるように、良かれと思ってやってるだけだ。その行為には、彼らなりの必然性がある。つまり「串から外すな派」は、串から外す事が、具体的にどうダメなのかを、明確にする必要がある。


▪️せっかく串に刺したものを外すなんて…


お店の方に失礼ではないかというのは、一見もっともだ。せっかく串に刺した労力を無駄にするのかと…。しかし、よくよく考えてみればこれはおかしい。焼き鳥を、串から外さず食べるのは不可能だ。「外すな派」の人も、口を使って外している。串ごと食べる訳ではないのだから。では「外すな派」はなにを問題視してるのか?食べる前にいったん串から離れて、バラバラになってしまう事だろう。では、この状態はどんな不都合をひき起こすのか。

▪️串から離れると、本来の味が楽しめない

これも先ほどと同様、本来の味より落ちるは当然なので、問題はその程度だろう。食べる前に、いったん串から離れる事で、どの程度味が落ちるのだろうか?「外すな派」の具体的な主張を見ていこう。

①食べる順番が変わると、味が落ちる

焼き鳥は串で食べる事を想定して、その順番に工夫が凝らされている。てっぺんの一口目を敢えて大きくししたり、味も濃い目にしたりとか。バラしてしまうとその工夫が台無しになり、味が落ちてしまうという主張だ。しかしこれも何かがおかしい。例えば、てっぺんの一口目を食べたあと、ビールを飲んだらどうなるだろう?舌がリセットされて、本来の二口目が一口目になるではないか。複数種の焼き鳥を、一口づつ食べる人だっているだろう。串から直接食べる人のやり方も、一様ではないのだ。順番の影響が、そこまで大きいとは思えない。

②串から外すと、肉汁が逃げる

それならば、カリカリの鶏皮や軟骨、野菜類は外していい事になってしまう。溢れるほどに肉汁たっぷりの焼き鳥も、あまり見た事がない。

③美味しく感じる角度で刺してある

一口目を上から縦に食べる人も結構いるが、その場合角度は90度変わってしまう。必ず横向きで食べろ、という注意書きも見た事がない。また、口内で角度が一定になる程、焼き鳥の一口は大きくない。

④串から外すと、温度が下がる

これは全くその通りで、串から直接食べるべき最大の要因だろう。私が外したくない理由もやっぱりこれだ。とはいえ、串外しが行われるようなグループ客の場合は、やはり大した差にはならない。温度低下の最大要因は、焼き台から離れてからの時間経過であり、その影響は、串から外す外さないの比ではあるまい。大人数の飲み会で、焼き鳥が冷めない内に完食される確率は、相当低い。彼らにとって、料理の味より談笑のほうが優先だ。特にコースの場合はそうだが、焼き鳥に限らず、あらゆる料理はしばしば放置される事になる。


▪️問題は食べ方ではなく、向き合い方だ。

こう考えると、串から外す外さないは些細な問題に思える。それよりも許し難いのは、せっかく美味しく焼き上げた焼き鳥が、談笑のついでに食べられてしまう事だ。これはどう考えても納得いかない。そう、食べ方よりも向き合い方が問題だ。

改めて、焼き鳥本来の味を楽しむ為に、厳格なルールを提唱しよう。

グループ客はお断り。3人以上は焼肉屋に行け。
1本1分以内に完食すべし。超えたら罰金一万円。
1本完食するまで会話は厳禁。見つけ次第、即出禁
👉※『串外し』は、ルールの範囲内でお楽しみ下さい。

これでいい。
いや、これがいい。

『食べ方くらい自由にさせろ』?

そう、全くその通りだ。
いくらでも、串から外せばいいだろう。

向き合い方さえ、改めてもらえれば…


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