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わかりにくい人は、無意識かつ巧みなメソッドで誤認を誘う。

「すいません。来年1月の件で相談があります」

部下からの相談から年の瀬を感じる。今日は12月2日。早いもので2024年もあと一ヶ月か。

「なんの相談かな?」

「A社に新しい部長が着任されるので、1月にご挨拶にお伺いしようかと」

早くも1月の情報をつかむとは、営業マンとして頼もしい。更に言えば、こういうのは早いほうがいい。ライバル社よりも先にご挨拶にいけば、評価があがるかも知れない。

「1月のどのタイミングで行くつもりかな?」

「1月の前半にしたいと思っています」

お、彼も早いほうがいいと思っているという事か。いい考えだ。褒める前に理由を聞いてみよう。

「なぜ1月前半にしようしてるのかな?」

「12月の後半は先方が忙しいからです」

ああ、後半は先方が忙しいのが理由か。
まあ、結果オーライなのでそれでもいいが。

ん?

12月?


何故いきなり『12月』が出てくるのだろう。今、『1月』の話をしてるのではなかったか。

「『1月』の後半が忙しい、の間違いではないかな?」

「いえ?『12月』の後半が忙しいのが理由ですが・・・」

頭が混乱するので、もう一度念を押してみる。

「『1月』後半が忙しいから、1月前半にしたいのではないの?」

「いえ。『12月』後半が忙しいから、1月前半にしたいのです」

推理を働かせて、ある疑問に思い至る。

「新しい部長が着任されるのは『1月』だよね?」

「いえ、新しい部長が着任されるのは『12月2日』です」

12月2日?今日ではないか。


謎が解けた。
彼は巧みなテクニックで私をミスリードしてたのだ。



彼は声かけの段階から「1月」を連呼している。結果私は、相談の内容は「1月に限定した話」だと思い込む。
つられて、新しい部長の着任も「1月」だと思い込む。

「着任が1月」とは一言もいってないのも巧妙だ。
そして、彼は訪問を「1月前半で検討している」と話す。

私は当然、彼が「1月の中」から「前半」を検討していると思い込む。この手の商談は早いほうがいい。

私は、彼がより良いタイミングを選択をしてると思い込んだ。

事実は違う。

彼は「12月後半が忙しいから1月前半を検討している」と言った。そして、新しい部長の着任は1月ではなく12月2日だった。つまり、その気になれば「12月前半」に挨拶に行ける事になる。

より良いタイミングどころではない。
彼は、新任部長へのあいさつを、1ヶ月も先延ばししようとしていた。

つまり、途中までの私の解釈と事実は真逆だったのだ。

着任から1ヶ月も挨拶に行かなければどうなるだろう?評価が上がるどころではない。下手したら取引縮小にもつながりかねない大失態だ。



彼に私をだまそうとする意図はない。普通に「12月後半が忙しい」と、ある意味自白しているからだ。

いや、悪気がないだけにタチが悪い。
動機がない犯行の捜査と同じだ。

わかりにくい人は、無意識かつ巧みなメソッドで誤認を誘う。

我々はこのメソッドに翻弄されるしかないのだろうか?

方法はある。
相手が自分をだまそうとしている前提で聞けばいい。

『部下の言葉は詐欺師と同じ』
これだけ覚えておけばいい。
これでリアル詐欺師にも騙されなくなる。

一石二鳥だ。

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