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(第16回) 虚血にしたら虚血に強くなる!? Ischemic Preconditioning 後編 大学院はつらいよ

(第15回) 虚血にしたら虚血に強くなる!? Ischemic Preconditionig 中編
より続きです。
昔の、僕が大学院生になって学位論文として書いた論文からIschemic Preconditioning (IPC)の紹介です。
注:動物実験のお話であり、前編に記載しておりますように苦手な方は読まなようにしてください。

中編の最後で、


腸管粘膜障害の経過

小腸移植してから3~6時間という時間に、C(コントロール)群では小腸の粘膜はボロボロになります(Park スコアという評価で、4-5くらいと相当なダメージ)。
しかし、IPCやRIPCをした群では腸管が守られている…というお話をしました。
この差は統計学的に有意差があって、間違いなしということになっています。

しかし、12時間、24時間後ではスコアが悪くなって、コントロール群と同じになっていますね(有意差なし)。

これはなぜか。

実はこれは今までの研究でもわかっていたことなのですが、
IPCで臓器が守られる時期(タイミング)には、2つのフェーズがあるとされています。

IPCを施行してから1~3時間くらい臓器が守られる、early phaseと
IPC後24時間から3日ほど続くとされているlate phaseです。
(Ambros JT et al: Ischemic preconditioning in solid organ transplantation: from experimental to clinics. Transpl Int 18(1): 44-52, 2007)など
だから、数時間を過ぎてくると防御効果が薄れてきてしまうんですね。
ちなみにこのearly phaseとlate phaseですが、臓器によって片方がなかったりもするとのこと。
へぇ~。

今回の実験では臓器のダメージが「そこそこ深刻」くらいにとどめているので、24時間もすると何も前処置をしていないC群のほうも臓器障害はそこそこに落ち着いてしまいます。
なので、今回の実験はlate phaseの効果を検討するには向いていない実験系ということになります。

でも、このIPCとRIPCの効果はすごく劇的に得られていますから、「なんでか」を知りたいですよねー。
うーん、研究心がうずく。


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