コラム12医学部OSCE対策 その3 OSCE診察編
医学部の卒業前最終試験であるOSCEのお話 第3弾。
OSCEというのは「医療面接の試験」です。
なので、①患者さんに問診をする ②患者さんの診察をする ③プレゼンテーションをする の3要素を、既定の時間内にすることが求められます。
それぞれに注意すべきことがあります。
今回の 医学部OSCE対策 その3 は、診察編になります。
念のためお断りしておきますが、あくまでもこのコラムは、僕が「VR OSCE」を開発するにあたり考察したこと、学生さん達への講義の中で考察したことを基にして記載しています。
実際のOSCEの合格を保証するものではありません。
診察編 目次
1. すでに鑑別診断はできていますか?
突然ですが、もう問診が終わった段階で鑑別診断は複数あがっているでしょうか?
熱があって来院した患者さんに、咽頭発赤を見ない医者はいないでしょう。
腹痛を主訴に来院した患者さんの、おなかの所見を取らない医者もいないと思います。
なぜなら、発熱の際には様々なウイルス性疾患を含む上気道炎は必ず考えますし、腹痛であれば胃腸炎、イレウス、虫垂炎、憩室炎などなど様々な腹部疾患を考えるからです。
これが鑑別という行為であり、これに基づいて診察を行う部位を決めていくことになります。
鑑別診断が全く頭に浮かんでいない状態であれば、「どこから診察していいのか分からない…」ということになり、完全にフリーズしてしまうか、とりあえず思いついたところから漫然と診察する…ということになります。
これではまともに考えることなんてできません。
Post CC OSCEを受ける医学部の6年生であれば、さすがにここまでひどいことはないと思いますが…。
ちなみに4,5先生くらいにOSCEのトレーニングの授業をしてみると、4人に1人くらいはこの「どこから診察していいのか分からない…」状態に陥ってしまうので、「頑張って復習してから実習しようね」と励ましてあげます。
そうは言っても、この鑑別をあげるというのは難しい行為です。
医学部ではまず、最初の4年間でひたすら知識を詰め込みます。
基礎、臨床含め、ありとあらゆる授業が行われ、臨床であれば「この疾患ではこういう特徴があってこういう症状が出る」というような知識を、山ほど習うわけです。
そのあまりの大量さゆえに、医学生はみんな「授業」→「テスト前勉強」→「合格する」のサイクルの沼にはまっていき、どんどん眼の光を失っていくほどです。
僕もたいがい魚の死んだような眼をしていたと思うのでよくわかります。
しかし、4年生も終わりにかけて試験を受け、pre CC OSCEにも合格すると、晴れて「Student Doctor」として認められ、病院での実習が始まります。
すると今度は、4年生までに修得してきた知識を、反転させて使うことを求められるのです。
医療面接において必要なのは、主訴や様々な所見に基づき、病気の方を推察していく行為です。
これがとても難しい。
見逃し、うっかり、知識不足。
そんな原因での誤診が多発する。
実際の医療現場でそれが起きれば、患者さんの命に直結するわけです。
だからこそ、5年生、6年生と2年もかけて実習を続けていきます。
OSCEの問診において鑑別診断がきちんと挙がるかどうか。
そして鑑別診断に基づく的確な診察ができるかどうか。
この2年間の頑張りが試されます。
(ここから有料になります。僕の有料記事の売り上げは、基本的に広島大学病院小児外科において小児がんの研究のための基金として使用させていただきます。
続きに興味がある方は、ご寄付のつもりでどうぞ~)
ここから先は
¥ 500
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?