キャリア漂流者
回顧録。
結局は、なにか一つの武器(強み)が、必要だ。
それはその業務経験が直結して形成される武器であったり、または自己研鑽を通じて、獲得するものであったり。
でも一番、成長と実力が伴うのは、実務で体験していることだと思う。実戦で培った武器ほど頼りがいがあるものはない。
【総合職】という響きは、【色々な事を体験できる、可能性を制限されず異動をしながら、自分に最適な仕事を模索できる】という、まさに職種を自らで絞りきれない言い訳として、大学のモラトリアム期間の延長のように捉えていた。
阿呆だ。一部、採用現場ではそのような香りでPRされるが、甘い事、このうえないし、危険だ。
直訳は【管理職候補生】であって、真実は【職種やアサインされる業務の決定権がない】というだけ。与えられた場所で磨くべきスキルを自分で見つけて磨くか、合わなければ、正直、転職も視野に思い切って外に出るか、するかしかない。
そして大手日系企業であればあるほど、実務スキル面は外注されてることが多く、己の手を動かす事は少ない。実際はアレンジや管理業務の比率が多かったりする。報告書づくり、パワポ資料作り、データ集計作業や、関係者対応に奔走する割合が高い。
自分に適性があるのか早いところ判断したいのに、その本筋業務にすら携われない事がある。人数が多くて役職が多いほど、いらぬ権限で触る業務を制限されて、正直、本筋の実務仕事は上の役職が握っていたりする。
出来る出来ないでいったら、20代で出来なくて50代の管理職だから出来る仕事って極論ない。ただ、させないだけ。やってる・やってないというだけ。能力が上がったから出来るようになるではなく、年数が経って年を食ったので年功序列で役職がついて、やるようになったという事も多い。
【一般職】は更にアウトで、専門職からかけ離れた、時間と若さの切り売りだ。そして女の美貌の切り売りでもある。【誰かのサポート部隊】これは漂流真っしぐらの女中業務で専門スキル(?)とは程遠い。どんどん派遣に切り替わる絶滅危惧職だ。若さと美貌と愛嬌が衰えた女中老婆に待ち受ける試練は、ゾンビよりおぞましい結末だ。
実際、今はあなた、何してるの?あなたの武器はなんですか?と聞かれて、それに対する回答は実は明瞭になかったり。
最早、引き戻せない年齢まで待ってしまって、諦めと愚痴が支配されてる漂流者も居る。リスキル、リスキルと言って騒ぐのは、そういった悲しき漂流者を、なんとかせねばと、あと、本当のところはぶっちゃけ漂流者を養う体力がなくなってきて、ようやく真実に向き合い始めたということ。
なんだよ、リスキルって。
飼いならしたゾンビが、この日本中で彷徨っていますって公言するようなもんだ。
体力と忍耐と継続力、そして気合は負けませんで!パワハラ〜!が生き残ってたりすると、とにかく量と、理不尽に耐えた実績で勝負してきた人なので、下にいる部下はしんどいだろう。
総括すれば、体験自体を選べないので、『色々な職種を経験して最適解を探して身を落ち着けたい』という希望が、まず前提から間違っていた。し、甘かった。
なんなら大学4年間かけて必死に専門資格勉強に励み、まず、仕事の第一歩を踏み出す事にしっかり取り組んでいた先輩や同期も多かった。平成令和は当たり前なのかもしれないが、これが意外とボーッと過ごしてしまうことが多かった。反省です。
自分と同じように、とりあえず世間体と学歴フィルターで排除されない、就活でも不利のない、偏差値が出来るだけ高い学部というだけで、法学部や経済学部に行ってる人は多そうだ。学歴で受けた恩恵は確かにあるけど、いわゆる日系大手で就職した先で納得できるキャリア形成ができてる人がいかほど居るんだろうか。満足に自活して福利厚生良い会社でとりあえず自立して生きるという当初の希望は叶ったけど、キャリアの軸がなければ、人形のように毎日を繰り返す虚しさが大きくなってくる。
研究者や学者を目指すのでなければ、モラトリアム期間ではなくて、本当に職業への第一歩が始まっていると捉えるべきだ。
打算的な思考ではなくて、本当に己の興味があることを学んで心から打ち込むべき。
マーチ以上の大学ランクで学歴だ云々で差別する人は、そこまでの人で、むしろ学歴しかない人だ。そういう人がいるコミュニティを避けられるのは逆に幸せだし、そういうゾンビはしばしばキャリア漂流している。
強く言いたいのは、【偏差値ではなくて、学びたいこと】。学びたい学問がある中で、より質の高い大学を目指すのは良いけど、はじめから偏差値ありきでは受験勉強の傀儡だ。
逆にその学問自体は難しくても、やりたい仕事に繋がるルートなら必死にやるべきだ。
まずは、大学時代から、業務内容を簡単なお仕事紹介パンフレットでも良いので、色々知っておくこと。知識をみておくこと。お仕事紹介でも良い。職探しは適性探し。待遇は方向性を決めてから。
その中で、待遇が良い順から会社を、選んでいけばよいと思う。正直、会社選びはどうだってよい。いつだって退社して別の組織に移ればよいだけ。仕事選びの方が重要だ。
例えば、その分野の上級スキルとして定義される公的資格例を調べてその参考書をパラパラ見て興味が湧くのか。とか。簡単なことから。
当時の私は、選択肢をできるだけ多く持って、自分の仕事に、色々な可能性を残しておきたかった。
でも今思うのは、それは言い訳。【選ぶ】【吟味】する苦労やストレスを背負いたくなかった言い訳。
可能性の出し惜しみをしないで、まずは一つの仕事に飛び込んでみること、確実に選んだ仕事の範囲内で経験を積むこと。
『選ばない』ということを【選んで】いるうちに、時間は着実に進んでいて、他の選択肢を捨てていっているのだから。