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世界的名匠の個性際立つ、鮮烈な2作品

新作『別れる決心』が日本上陸! バイオレンス×映像美がせめぎ合う鬼才パク・チャヌク監督の艶めかしくも戦慄する傑作『オールド・ボーイ』『お嬢さん』の魅力を紹介。

鮮烈に脳裏に刻まれる独特の構図とカメラワーク

『オールド・ボーイ』

カンヌ国際映画祭でグランプリに輝き、ハリウッドリメイクもされた『オールド・ボーイ』(2003)と成人指定ながら世界でヒットを記録した『お嬢さん』(2016)。公開当時はもちろん、いま観てもそのスタイリッシュな映像表現に息を吞むことだろう。前者は建物の屋上で転落しかけている男のネクタイをつかむ主人公を捉えた構図、後者は建物の内部をハイスピードで縫うようなカメラワーク……どちらの作品にも一度観たら忘れられず、年月を経ても色あせない印象的なカットが立て続けに登場する。新作『別れる決心』に至るまで、全シーンの絵コンテを描くというパク・チャヌク監督のこだわり抜いた映像世界は、他の追随を許さない。

必然性に裏打ちされたバイオレンス&エロス

『お嬢さん』

パク・チャヌク監督の代名詞といえるのが、バイオレンスとエロス。『オールド・ボーイ』『お嬢さん』共に容赦ない暴力シーンや攻めた性愛シーンが登場するのだが、過激な描写の数々にもかかわらずグッとのめり込んで観てしまう。その大きな要因は、作品の中でまるで浮いておらず、必然性を感じられるからであろう。芸術的な切り取り方に陶酔させられる映像マジックに加えて、それらの“行動”が登場人物の奥底から情念を引きずり出す仕掛け――つまり人物の掘り下げ・心情描写と見事にリンクしているのだ。ただショッキングなだけでは、観客の心に強く残すことはできない。鬼気迫る生の表情を提供した役者陣の奮闘含め、総合力の高さを感じさせる。

濃い、だが観たい! 抗えない物語の面白さ

『オールド・ボーイ』

映像の強度が高い作り手や作品が陥りがちなのが、映像美が前に出すぎてしまう「中身がない」状態。しかし『オールド・ボーイ』『お嬢さん』をはじめとするパク・チャヌク監督の作品は、物語が映像を組み伏せんとするばかりに分厚く、骨太で強力。両作品ともに“原作もの”だが(前者は日本の漫画、後者は英国の小説)、舞台を現代韓国や日本統治時代の朝鮮に移し、所々に映画的なアレンジを加えている。「当然拉致され、長年監禁された理由」「詐欺師たちの腹の探り合い」といったサスペンス&ミステリー要素をテンポよく描きつつ、かと思えば果敢にギャグもぶっ込んできて、作家性だけでなくエンタメ性も担保している。濃いのに食傷気味にならない“観やすさ”が敷かれている『オールド・ボーイ』と『お嬢さん』。ぜひ思い切って飛び込んでみてほしい。

Text/SYO

▼『オールド・ボーイ』はこちらから

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SYOプロフィール

1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマ・小説・漫画・音楽などカルチャー系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。トーク番組等の出演も行う。Twitter:@SyoCinema