韓国発・2大ゾンビ映画が面白い!
今年もハロウィンの季節がやってきた。様々なコスプレが街を彩る中、つい観たくなるのがゾンビ映画。そこで『新感染 ファイナル・エクスプレス』『感染家族』というジャンルの異なる2作を紹介する。
怪物なのはゾンビか、それとも人間か
「列車」という密室空間の中で巻き起こる恐怖のパンデミック。それこそが、『新感染 ファイナル・エクスプレス』の魅力だ。
発車間際の列車に、1人の不審人物が乗車。彼女が感染源となって、次々と乗客がゾンビ化。時速300kmで走る高速鉄道は、凶暴化したゾンビが跋扈する地獄絵図と化す。
この絶体絶命の窮地を乗り越え、無事終着駅へと辿り着けるか。主人公、ソ・ソグ(コン・ユ)らの命を懸けた戦いが始まる。
さらに、恐怖と共にむき出しになるのが人間の醜さ。自分の身を守るために、他の人を平気で犠牲にする。そんな保身とエゴに思わず怒りが湧いてくる。だが、コロナ禍を通じて様々な差別や偏見を目の当たりにしてきた今見ると、これらが決して誇張ではないことを思い知らされる。
理性の皮を剥げば、人間もまた怪物。そう実感するノンストップサバイバルだ。
マ・ドンソクのカッコよさに思わず惚れる!
こうしたパニックムービーに必要なのが、人間味あるキャラクター。特に、より利己的になる人物がいるほど物語が面白くなる。
そういう意味では、ヨンソク(キム・ウィソン)は気持ちがいいほどのヒールキャラ。このヨンソクのせいで、罪なき人々が次々と犠牲に。途中から「お前が早くゾンビに喰われてしまえ」と石でも投げつけたくなる、最高の憎まれ役だ。
逆に思わず推したくなるのが、ユン・サンファ(マ・ドンソク)。見た目はちょっと怖そうだけど、主人公の娘、スアン(キム・スアン)を助けたところから株が急上昇。強力な味方となって大活躍してくれる。
口は悪いけど、男気があって、妻に一途。人気投票をしたら間違いなく1位になるだろう最高のイケオジだ。そんな愛すべきユン・サンファを待ち受ける運命に、きっとあなたも涙するはず。
まったく怖くないゾンビ映画、爆誕!
『新感染 ファイナル・エクスプレス』が一級のホラーエンタメなら、『感染家族』はゾンビを題材にした痛快コメディ。「怖いのは苦手……」という人でも楽しめるお気楽さが、この作品の魅力だ。
なんといっても、ゾンビがちっとも怖くない。犬に追いかけられたり車に轢かれたり、人を襲おうとすると必ず災難に遭ってしまう不運すぎるゾンビが、そのうちなんだか愛らしく思えてくる。
しかも、ゾンビに噛まれると若返るということを知ったパク一家によって、金儲けの道具として利用されることに。ゾンビに噛まれるために老人たちが列をなすというシュールな光景は、もはや完全にギャグ。ひたすら利用される不憫なゾンビも、商魂逞しいパク一家も、気づけばどちらも大好きになっている。
肩の力を入れて観る必要は一切なし。「くだらねえ〜」とツッコミながら大笑いしてほしい。
ゾンビと人間のキュートな恋
本作最大の推しキャラは、何と言ってもチョンビ(チョン・ガラム)。ゾンビのはずがいつの間にかパク一家のペット的な存在となり、馬車馬のごとく働かされる、なんとも間の抜けたキャラクターだ。でも、そこが最高にいとおしい。
しかもこのチョンビ、実はめちゃくちゃイケメンなのである。パク一家の末娘、ヘゴル(イ・スギョン)のはからいでメイクを施されるのだけど、涼やかながら凛々しい目元。ゾンビなのに精悍すぎて、こんなゾンビだったら全人類が噛まれたいという話。
当然、へゴルもすっかりチョンビの虜に。だけど、そんな2人の前に不穏な影が。チョンビに噛まれた人々がついに凶暴化。すっかり街じゅうがゾンビタウンと化す。はたしてチョンビはゾンビの魔の手からへゴルを守り切れるのか。
ゾンビと人間のキュートな恋の結末をあなたの目で見届けて!
Text/横川良明
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横川良明(よこがわ・よしあき)プロフィール
1983年生まれ。大阪府出身。ドラマ・演劇・映画を中心にインタビューやコラムなどを手がける。著書に、『役者たちの現在地』(KADOKAWA)、『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)がある。X(旧Twitter): @fudge_2002