JOL2018-1 英語、チェコ語、ポーランド語、スウェーデン語 解説

日本言語学オリンピック2018
第1問．英語、チェコ語、ポーランド語、スウェーデン語
ジャンル：文字
難易度：☆2
問題・解答は 過去問・資料まとめ より引用。

JOL2018-1 1枚目

JOL2018-1 2枚目

訂正：問題のスウェーデン語の最終行に誤りがあったそうです。 誤vighet→正evighet

解き方の方針​

英語の問題文とチェコ語、ポーランド語、スウェーデン語の対応を見る問題です。問題文が英語であること、内容が主の祈りと比較的ポピュラーなものであることもあり、そちらから文と言語の対応を考えてから解くのが実践的かもしれませんが、解説ではそこにはあまり触れずにいこうと思います。 解き方の方針としては、各言語で１文目と７文目が分かっているので、そこから分析するのが無難でしょう。 以下の解説では、各言語の１文目をs１、２文目をs2のように表記します。

頻出単語の分析​

英語の文で、s1、s7に出てきてかつ文章中に複数回登場する単語は以下の通りです

・ our​

まず、s1の最初のコンマに区切られている区間に着目して、各言語のourにあたる語を特定します。

原文では、Fatherが大文字になっており、これはキリスト教で何かしら特有の表現であると推測できます。ここに着目すると、スウェーデン語ではFaderが大文字であることからFaderとFather、すなわちOurとVårが対応していることがわかります。

続いてチェコ語とポーランド語ですが、こちらは大文字になっているのが文頭のみです。ここから考えられるのは、

①これらの言語では文頭以外を大文字にしない
②Fatherが一単語目と対応する

の二つでしょう。そこで、Otče/náš/Ojcze/naszを文中から探してみると、選択肢eにnášが見つかります。

このことから、②が正しいこと、eがチェコ語のs4またはs5であることがわかります。他の文でourにあたる可能性のある単語はありますが、現時点ではこれ以上確実に言えることはないので次に進みます。

・ and​

次に分かりそうなのは、s7に2回、全体で4回出てくるandでしょう。これに対応する他言語の単語については、s7に2回出てくるというだけではeverの可能性もあります。しかし、2回出てくる単語は、チェコ語、ポーランド語ではi、スウェーデン語ではochで、これらはs2〜6にも存在していることから、andであると分かります。この時点で、h、iはチェコ語あるはポーランド語のs5、6、j、kがスウェーデン語のs5、6と対応することがわかります。

ここで、h、iについて考えます。出てくる語彙及び単語数についてみると、aとh、bとiに類似性が見られ、またチェコ語とポーランド語で文法がよく似ているという記述から、aとb、hとiがそれぞれどちらかの言語に対応していると考えられます。そこで、具体的に単語を見ていくと、hとiにはポーランド語の単語naszが変化したと思われる単語が出てくることから、a、bがチェコ語、h、iがポーランド語と分かります。

・ thy/heaven(S2の特定)​

原文s1にはこれらの2語が出てきますが、これはs3と共通です。このことから、各言語のs3が特定できると考えます。 各言語でこれらの単語に相当する語はわかっていませんが、複数個の単語が共通しているところから予測を立てると、cがポーランド語のs3、dがチェコ語のs3、nがスウェーデン語のs3であると分かります。

・ kingdom​

各言語のs7と、a~oのうちs2に該当しえないものを除いた文を比較します。

残りの文章を特定する​

ここまででわかっている情報をまとめます。

すると、残ったfとgはポーランド語とスウェーデン語が1つずつなので、既出の語彙を比較すれば、fがポーランド語、gがスウェーデン語であると分かります。

残りの文章を特定していきます。 aとbについては、bにourにあたるnášのような単語が連続していることから、ここがus ourにあたると気づけ、S4だと分かります。hとiについても同様です。 問題を解く上で必要はありませんが、スウェーデン語についても同様に並び替えることができます。

以上より、対応は以下の通りです。

別解​

明らかに英語と近いスウェーデン語はすぐ外せると思います。問題はチェコ語とポーランド語の2択ですが、与えられている文s1とs7をよく見比べましょう。 2言語間で類似する単語がいくつか見られますが、そのうち"v"を用いているのがチェコ語で"w"を用いているのがポーランド語だと分かります。 これはかなり大きなヒントです。統語について考えるよりも文字を見た方が、時間の節約になります。

そのほか、アポストロフィなどの記号の使い方などでも絞れるかと思います。「ことはじ」でジャンルが「文字」になっているのは、そういう理由からだと思います。

解答​