これも親ガチャ?(第15話)

『茜お姉さん、こんばんは。これから、お世話になります。』
真奈はへつらう感じの笑顔でキッチンに上がり込んだ。
『あら、いらっしゃい。こんな時間に来るなんて、お行儀の良い事!』
茜の軽いジャブが始まる。
『これでも、塾が終わってダッシュで帰ってきました。はい!
相田君、私にもカレーを頂戴!』
ここまでくると両方とも大したもんだと尊敬してしまう。
『畏まりました、真奈お嬢様。今、お支度致します。』
と俺も皮肉を言っってやったが、
『そんな、お嬢様だなんて・・・、もっと言って!』
と返してきやがった。
微妙な空気の中、3人で黙々とカレーを食べた。
真奈はお腹が減り過ぎてガッツいていたからだが、
茜と俺はこの後の展開を想像したから、
自然と無口になったんだと思う。
『あ~、美味しかった。茜お姉さん、天才ですね。
肉がチキンなのは、カロリーを計算してですか?
野菜もたくさんで、とても美味しかったです~。』
と真奈は感想を言った。
『このカレー、ム~君が作ったのよ!』
茜が嫌味な口調で言う。
『相田君、天才!あなた、そんな特技があったんだ。』
目を丸くして真奈が言う。
時刻は22時になろうとしていた。
『真奈、親が心配するぞ。そろそろ帰れよ。』
そう、俺が話しかけた時、携帯が鳴った。
正のお母さんの番号だった。
『はい、相田です。』俺は、すぐに電話に出た。
嫌な予感がしたからだ。
『もしもし、相田君?今日、真奈ちゃんに会わなかった?
真奈ちゃん、行方不明なんだって。何か知らない?』
正の心配そうな声が聞こえてきた。
『こんばんは、正。真奈なら知ってる。
心配ないよ。ところで、今の話の顛末を、
正の知ってる範囲で良いから、教えてくれない?』
そう、俺は答えた。
『さっき、僕のお母さんに、
真奈ちゃんのお母さんから電話がかかってきたんだ。
「うちの真奈、伺ってませんか?
どこかで会ったとか、どんな情報でも構いません。
ご存じなことを教えて戴けませんか?
ちょっと、親子げんかしてまして・・・。
帰りが遅いので、部屋を覗いたら、
着替えとか4日分ぐらいの荷物が無くって!
まさかとは思うんですけど、
家出したのかもしれないんです。」
という話があったんだ。真奈ちゃんのお母さんは、
警察に届けようとしたらしいんだけど、
お父さんが、「受験直前だ。
まず、知り合いへの連絡から始めよう」ってことで、
僕んちにも連絡があったんだ。
僕のお母さんと真奈ちゃんのお母さん、仲良いから!
それで、真奈ちゃんの事なんだけど・・・。』
俺は、正の質問に答えた。
『事情を教えてくれて、有難う。
真奈は、今まで、カレーをガッツいてた。
ここに居るから安心しろ。
そう、正のお母さんに伝えてから、
お母さんに電話を代わって欲しいんだ。』
俺が言い終わる前に、会話を聞いていた正のお母さんが、
いきなり電話に出て来た。
『良かった!それで、相田君、私に用事って、何?』
『ああ、叔母さん、こんばんは。
叔母さんに頼みがあるんだ。
実は、俺も、真奈から話を聞いてなくって、今の正の話で、
やっと事情を把握できたところなんだ。
それで、今夜は、真奈をここに泊めたいんだ。
だから、叔母さんから、真奈のお母さんを
説得してもらえないかな?
もちろん、茜も一緒だから。』
そんな会話をしていると
『ム~君、何、勝手に決めてるの?
この生意気な女、
なぜ、ここに泊めなきゃならないのよ!』
と、茜が叫びだした。
『あ~ら、茜お姉さま、真奈は改心しております。
なんとか、ね!』
真奈は、必死に事態を繕おうとしている。
『今から、真奈を家に帰しても、
根本が解決しないとまた家出するんじゃない?
次は、俺んちにも来れないだろうから、
探し当てるのに苦労するかもよ。
それで、事件に巻き込まれることを考えたら、
真奈の言い分を聞いてから
帰すのも悪くないんじゃない?』
俺は、正のお母さんに、そんな話をした。
『そうね、じゃあ、明日の19時頃に、
真奈のお母さんにこの電話番号に
連絡させても良いかしら?』
『有難う、叔母さん。助かるわ。
そうそう、茜に代わるね。
茜が居ないと話が成立しないもんね。』
正のお母さんの理解の良さに感謝して、
俺は茜に携帯を渡した。
『佐藤先輩、聞いてくださいよ。・・・』
どうやら、茜が喋るのを、
正のお母さんは静止して話してるらしい。
『は~い、解りました。』
茜は、ブス~っとしたまま、携帯を切った。
そのまま携帯を投げられても困るので、
『茜、アイスでも食べない?』
と声をかけながら、携帯を取り上げた。
『そんな事で、許される話ではないのよ!』
茜の怒りは収まらない。
『相田君、神!コンビニアイスが良いな~、私。』
真奈は、家に帰されずに済むことが解ったので、
ご機嫌に答えた。
『真奈、何かしらの考えがあっての事だろうから、
話は聞く。アイスも奢るさ。
ただ、嘘やごまかしがあったら、
正のお母さんや茜の顔に泥を塗るってことを忘れるなよ。』
俺は、真奈のペースを潰す意味を込めて言ったのだが、
茜の機嫌もなぜか直った。
『じゃあ、ム~君。私、いつものヤツを買って来てね。
お風呂に入るから。』
渋々、俺は、一人でアイスを買いに行った。
だって、真奈をこんな時間に連れて行って、
補導でもされた日にゃ、話しにならね~。

真奈との話しは、俺の新聞配達の時間で打ち切られた。
真奈は、俺の布団で寝ることになった。
‘俺、また、徹夜だよ!
明日は、みんなを送り出してから、
2度寝しよう!っと’
今夜の話は、こんな感じだった。

真奈のお父さんが進める進学希望は、
中央高校の1ランク下の北都高校で、
私立は真奈がダサい制服と切り捨てる聖心高校だった。
真奈は、どうしても中央高校を受けたかった。
これは、真奈の負けず嫌いが理由だと思う。
そして、私立は、やはり地域で進学トップの京王高校だった。
この2か月間、真奈はお父さん、お母さんと話し合ったが、
聞く耳を持ってもらえない。
だから、ボイコットの意味も込めて、
家出に踏み切ったそうだ。
ただ、いざ、家出を計画しても、
すぐに泊めてくれそうな友達が居なかった。
進学の決定時期は、どんどん迫ってくる。
追い詰められて選んだ家出先が俺んちだったそうだ。
俺は、真奈に提案した。
3つのテーマを調べて、進路の答えを出すこと。

1つ、真奈が最悪、中央高校に不合格だった時、
私立高校はどこにするのか?
京王高校にするのか、他にも条件の良い学校があるのか?
そこを、なぜ、選んだのか?
3年間の費用はどのくらいかかるのか?
そして、大学進学まで考えて、
7年分の借金を返済できるのか?
また、返済するメンタルを維持できる仕事を
その進路で得られるのか?調べる事。
2つ、そのことを両親にしっかり説明する事。
3つ、将来に進みたい職業、
借金を返済できるだけの将来性を持ち合わせた職業を考える事。


『入試まで3か月半、勉強時間と検索時間を
しっかり計画しないと間に合わないよ。
それをクリアー出来たら、真奈の両親が反対しても
真奈の両親の代わりに、
俺が投資をしてやるよ、真奈の未来に!
だから、一生懸命考えな。そう話して、話を終わらせた。

‘俺の資産から真奈分の3000万ほど避けとかないと!
いくら残るんだっけ?
相田勉に、何を残そう?俺も急いで決めないと!’
そんなことを考えながら、
フラフラと新聞を配って走った。

つづく。
さあ、真奈ちゃんの計画はどうなるのでしょう?
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