これも親ガチャ?(第25話)

帰宅途中にコンビニで弁当とサンドウィッチを
買った。それを自宅のテーブルで、愛と2人で食べた。
『お兄ちゃん、なんだか凄い話になって
愛、ちょっと怖いよ~。』
サンドウィッチをほおばりながら愛は呟いた。
『まあな、でも、今まで通りに愛の好きな絵を描いてたら
良いんじゃない?カオリンさんからアドバイスを
受けたら、アドバイス通りの絵と愛が描きたい絵を
描けばいいんじゃない?後は、カオリンさんがやってくれるし。
そんなお願いをしたんだから。
問題は、茜だよね。ここまで問題が大きくなったら、
ちょっとずつ、話さないとね。
愛が来てから、少しストレスが溜まってるっぽいしね。』
俺は、最後が愚痴になってしまった事を
言葉にしてから気づいた。
『私って、邪魔?』愛が反応した。
『茜ってさ、寂しがり屋なんだよ。
だから、愛が来るまでは、たまに、
俺のベッドに入ってくるわけ。
もう、あれって、夢遊病だよな~。
だから、茜の息抜きが出来るように部屋がいるんだよね~。』
『それって、変?』愛は絶句していた。
『まあ、変だよね~。おっさんの俺は、ウェルカムなんだけど、
相田勉が河合真奈ラブだから、性的なものがゼロなのよね~。
だから、今まで、H的なものは全く無いんだ。
変だろう?』
俺の呟きに、愛がホッとした表情をした。
その晩、茜に『引っ越ししたいんだけど~』と、
俺は話し始めた。
『えっ、茜、何もしてないよ。愛ちゃんの件だって
承諾したし!何も悪いことしてないんだけど!』
茜は、なぜか逆切れっぽく反論した。
そうきたか!と、俺は意外な展開に驚きながら
茜の興奮を落ち着かせようとした。
『まあ、アイスクリームでも食べながら
話そうか?!茜。ハーゲンダッツを何種類か
買ってるんだけど、何を食べる?』
俺は話しながら、テーブルにハーゲンダッツのカップを
4種類並べた。
『何か、誤魔化してない?』茜は渋い顔で、1つを選んだ。
俺もバニラを選んで、残りを冷凍室に片づけて
テーブルに座った。
アイスの蓋を開けながら、話を続けた。
『別に、誤魔化してないさ。俺が部屋が
欲しくなっただけの話さ。それから、引っ越し先は
みんな一緒に暮らす予定だから、勘違いしないでよ?茜。』
俺は、アイスを2口食べて、美味しさを実感してから
話を続けた。
『申し訳ないんだけどさ、愛も一緒に暮らさせてもらえない?』
『まあ、兄弟だし、そうなるわよね。』
茜は、ちょっと、不満らしい。
『あのね、引っ越し先なんだけどね。
中古のマンションを買おうかと思ってるんだ。
物件はこれから探すから、茜にも付き合って欲しんだけどね。
何も決まってないんだけど、愛の事もあるから、
一番に茜に了解を貰いたいな~って思ったのよ。
OKしてくれない?』俺は、控えめに都合のいい話だけをした。
『仕方ないな~。で、どこに引っ越すの?』
茜はアイスを食べるのを止めて、目を輝かせた。
『だから、何も決めてないって。
ただ、新しいのはダメだよ。予算が足りないから。』
俺は少し慌てて火消しに走った。
まさか、真奈の部屋まで準備する羽目になるとは?
想像もしていなかった。


茜が夜勤明けの夕方、茜と待ち合わせて
病院から徒歩圏内の中古マンションを見に行った。
3LDKのそんなに古くない物件が3000万円台だった。
室内もきれいな状態だったので、茜は買う気満々だった。
茜の表情で、不動産会社の社員さんも直ぐにでも
契約書を持ってきそうな勢いだった。
『茜さん、今日は帰るよ。見るだけね。』
俺は火消しに必死で最初の10分しか
物件のチェックができなかった。
俺が茜を連れて帰ろうとすると、
社員さんは伝家の宝刀を抜いた。
『実は、この物件、他にも迷っているお客様が
2組いて、明日は無いかもしれませんよ!』と言う。
『ム~君、無くなっちゃうよ!』茜は悲鳴のような声で言う。
『茜~、今、社員さんも言っただろう。
迷ってるって!売買目前の時はね、「他のお客様の承諾を取らないと
いけないので、ダメな時はご了承くださいね。」って言われるから、
余裕があるってことなんだよ。だから、帰って、買えそうかどうか
会議をしないと!』そう言いながら、足早にマンションを離れた。
マンションの外に出るとお腹が空いた事に気付いた。
愛に、スマホで弁当のリクエストを聞いて、
3人分の弁当を買って部屋に帰った。
食後に、スマホの画像をチェックしてると、真奈が来た。
真奈はコンビニでシユ-クリームを人数分買って来て
『茜さ~ん、おじゃましま~す。ちゃんとお土産もありま~す。』
真奈の声がするなり、茜の表情が険しくなったけれど、
真奈も茜の操縦方法が解ってきたのか、
始終持ち上げていたが、急に泣き出した。
何か企みがあるのは想像できたが、
かなり切羽詰まった状況らしい。
俺は、黙々とオムライスを作り始めた。
出来上がった頃には、真奈は泣き止んで
黙々と食べ始めた。それを見て、茜も食べたくなったらしい。
フライパンに残してあったチキンライス部分を
皿に盛って、食べ始めた。
‘おいおい、今、弁当を食べたばかりじゃんかよ~。’
と思ったが、真奈が話せる状態では無かったので、
『真奈、シュークリームごちそう様!』と言ってから、
俺は笑顔でシュークリームをいただいた。
真奈は、オムライスを半分ほど食べたところで、
『美味しい!相田君、レストランしたらいいのに・・・。
ウグ、ヒック、ウウウ・・・。私どうしよう?』
と食べながら、泣きながら、愚痴った。
どうやら、真奈のお父さんが転勤するらしい。
真奈は生活費も自分で捻出しないと計画が
頓挫してしまう状態に追い込まれたという話だった。
『相田君どうしよう?相田君にお金を返せないよう~。』
真奈はお腹も満たされ、悩みも吐き出せたので
少し落ち着いたのか、我が家の冷蔵庫の中を覗きだした。
アイスコーヒーに牛乳を足して
即席カフェオーレを勝手に作るとシュークリームと一緒に食べ始めた。
ワガママ三昧だが、フ~と一息つくと、
俺を見つめて、返事を待っていた。
『「ごちそうさまでした。」ぐらい言えば?』と俺から言われた。
まあ、そのぐらい切羽詰まっていたのだろうけど・・・。
『ごちそう・・・、茜お姉様、そのマンションのパンフは
何でしょうか?もしや、マンションを買うのですか?』
落ち着くとサイドテーブルの上に置いてあったパンフに気づいたようで、
いきなり真奈は食いついてきた。
この時、22時を過ぎていた。
突然、俺は、背筋に寒いものを感じた。
『真奈、もしやと思うけど、ここに来ることを両親に話してるよな!
まさか、「お父さん、大っ嫌い!」って言ったまま、
黙って来てないよな~。』
俺が慌てて聞いた時に、真奈のスマホが鳴った。
『姉ちゃん、今どこ?お父さん、カンカンだよ。』
真奈の弟からの連絡だった。
無言のまま、真奈はスマホを切った。
ヤレヤレ、俺はため息をついて‘風呂でも入るかな~?’と思った時
俺のスマホが鳴り始めた。



『あっ、おはようございます。相田勉と申しますが、
岡田香さんをお願い致します。』
『おはよう、勉君。何かあった?』受話器の向こうから
カオリンさんの明るい声がした。
『おはようございます、カオリンさん。
教えて欲しい事が幾つかできたんです。
この町の近隣の公証人役場と御社と付き合いのある弁護士さんを
紹介して欲しいんです。』俺はカオリンさんに用件だけ伝えた。
『なんだか、すごい話の様ね、良い弁護士がいるから
弁護士に勉君に連絡する様に伝えるね。』
カオリンさんは何も聞かなかった。
『カオリンさん、ありがとう。
出来れば、明日以降の連絡が有難いな!』そう伝えてから電話を切った。
そして、中学校の森先生に連絡を入れた。

『もしもし、森ですけど、相田君?』森先生からの
折り返しの連絡があったのは、昼休みに入った頃だった。
『森先生、連絡をありがとう。
以前、先生に俺の小学校3年生の人格が
たまに出てくるって話したことがあるんだけど、
覚えてます?』
『ええ、覚えてるわ。私、とってもビックリしたもの!』
俺は、先生が覚えていてくれた事に感動しながら話を続けた。
『その時、先生は、小学校3年生の人格を助ける方法が有りそうな話を
してたと思うんですけど、実際にあるんですか?』
『相田君、今日は午後4時過ぎだったら時間が出来るから、
中学校まで来てくれない?』
森先生は、俺の質問に答えずに約束だけすると電話を切ってしまった。
‘森先生の事だし、何か方法が有るんだろうな!’そんな期待を抱きながら
俺は明日の弁護士に相談したい要件をノートにまとめた。

なぜ、こんな急展開になっているかというと
記憶が無いのだ。
シャワーを浴びようと思ってた所に
真奈の弟から電話があって、その電話を切った後の記憶が
思い出せないのだ。
翌朝、愛が新聞配達から帰って来た時に
ソファーから起き上がるまでの数時間の記憶が無いのだ。
‘やべ~、早く手を打っとかね~と怖い状態になるかもしれない。’
そう考えつくのに10分もかからなかった。
寝ぼけた状態から、恐怖で目が覚めたらしい。
『あっ、おはよう、お兄ちゃん。
昨日は体調悪そうだったけど大丈夫?』
それだけ言うと愛は部屋に入って仮眠し始めた。
‘一応、小3の勉が思いっきり出てた訳ではなさそうだな?’
そう思うと少しホッとできた。
だから、朝から色々と計画を企てて、みんなの助けをお願いしている。

つづく

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