狩野さん 最期の排泄介助part20
朝、社長の電話で目が覚めた。
嫌な予感がして電話をとると狩野さんが亡くなったと悲しいお知らせだった。
これから朝の排泄介助に行くところだったので、とりあえず狩野さんの家に訪問した。
二階から長男さんが泣きながら降りてきた。
「おはようございます。回復するように祈ってたけど・・・」
そう長男さんに伝えると「だめだった」と。
部屋に入ると眠っているように横になっている狩野さん。隣には次男さん。次男さん「一晩中、下あご呼吸していた。苦しそうな呼吸していて朝ゆっくり呼吸して止まった」と聞いた。私が訪問する一時間前に亡くなられたと。
狩野さんに話しかけた。
「狩野さん、きたよ!えらかったなあ、よく頑張られました。」
そっと手を握るとまだ温かい。
「いっぱいえらい思いさせてしまってごめんなさいね、最期にパンツ交換させてくださいね」と声をかけて、おむつ交換させてもらった。
今までと同じように
「あっち向いてね、今度はこっちね」
「痛くないですか?大丈夫?」
と声をかけた。
昨日まで痛い痛い言っていた言葉はない。
何の反応もない。
交換が終わってそっと手を握ったら、狩野さんの手が力が入っている気がした。
さっきまでと感覚が全然違って、握り返しているような気がして
涙がとめどなくあふれ出した。
「ちょっとこれ!狩野さんの手を握ってみて!握ってるみたい」と息子さん二人に伝えてみんなで握手した。そしてみんなで泣いた。
息子さんが「最後苦しそうだった顔を思い出して悲しい」と話された。
「狩野さんは幸せだったと思います、いつも息子さんに近くにいてもらって大好きな家で最後まで過ごせてよかったと思ってると思います。本当によくみてくださいました。」と伝えた。
そして、狩野さんに「お疲れ様でございました。ゆっくり休んでくださいね。ありがとうございました。」と伝えた。
社長からほかのヘルパーにはまだ報告しないように言われていたが
後輩が心配していたのを知っていたので後輩に伝えた。
ショックをうけていた。そして、今から行きますと連絡がきた。
「早いほうがいいよ、葬儀場に行っちゃうかもしれないから」と伝えて私はいったん別の訪問先に仕事に向かった。
翌日、仕事のためお通夜に行けなかったけど、退職したヘルパー下田さんが狩野さんに会いたいとのことでお通夜の後、一緒に顔を見させてもらった。
下田さんは狩野さんのことが大好きだった。退職した時に狩野さんに可愛いマフラーをプレゼントしていて、それから冬はずっと着けていた。
棺桶に入っている狩野さん、そのマフラーを着けていた。
息子さんたちに「ありがとうございました、明日の葬式こさせていただきますね」と伝えると
「ありがとう。明日自分と弟しかいないからヘルパーさんたちがきてくれると嬉しい」と。
「わかりました、行かせていただきます」といい、葬儀場を後にした。