散文:スラムダンク
キッズステーションの土曜徹夜しナイトでスラムダンクがやっていたので、つい何時間も見てしまった。
キッズ向け番組のくせに徹夜が推奨されていて、これは大丈夫なのかと心配になる。
番組はなんと朝6時までやるらしい。さすがに限界なのでもう寝ようと思ってこれを書いている。
スラムダンクは、漫画は何十回、アニメも4、5周はしているのに、やってるとつい見てしまうもののひとつだ。
観客のざわめき、続いて静かにタイトルロゴが出てきて、曲が始まる。あのオープニングがあまりにも好きだ。
ということで、今日は雑にスラムダンクについて語ります。
初見のときは思わなかったが、何回も見ていくうちに湘北の強さは本当に現実離れしているなぁと感じる。
まず桜木花道がすごい。課題認識能力に裏付けられた成長スピードが、ちょっと尋常ではない。
超初心者ゆえに伸び代が大きくみえるのだと思っていたが、ディフェンス・リバウンド・シュートと毎試合小さな課題を見つけ練習や次の試合で解決策を実践し改善していくさまは、冷静に考えると完全にKPT法に則っている。
めちゃくちゃ論理的だ。テストで赤点とるくらい勉強ができないのに、花道は自覚なくものすごく論理的な人間である。
さらに自らを天才と評するくらい自己肯定感が高いのに(これは花道の美点)、自らのミスを認めて人に頭を下げられる素直さもある。
目標と自分の距離を正しくはかることができ、自分のできることできないことがわかる、つまり自分を客観視できる力もある。
ふつう現実はこんな風にうまくはいかないし、そこが見ていて気持ち良く感じる部分なのだが、かなりファンタジックなキャラクターだなと思う。
他のレギュラーメンバーの話もしよう。
流川はもはやサイボーグというか湘北を勝たせる装置なのか?というくらい、どんな強敵からもチームを救ってくれる。これも現実味がない。
りょーちんの達観してるとでも言うべき落ち着きぶりは本当に高2か疑いたくなる。
ゴリのリーダーシップと信念の強さとたゆまぬ努力はまるでマーベルのスーパーヒーローだ。何事も言い続けると叶うと言うけれど、中学生から同じ事を願い続けるのは、そうできることではない。
ゴリに関してはいろいろな回想を経ての海南戦の「一年の時からずっとだ」のセリフが最高に名シーンで、めちゃくちゃ泣ける。
というかこれずっと高校一年かと思ってたけど今考えたら中学一年のことなのか…?そんなの、青春のすべてじゃないか…!泣かせるなよ!
唯一ミッチーに関しては、バスケ部を潰しに来てたことを実はまだちょっと根に持っているし、ポカリのプルタブが開けられないのはメガネくんが机にリバウンドさせて練習してた時におめーが遊びまくってたからだよ!と思うしあんまり好きではないが、2年もブランクあるのにセンスだけであれだけスリーポイントが入るのは、もうギフトなんでしょうね。中学MVPおそるべし。
もし3年みっちりやってたらどんな逸材になってたかと思うと本当に悔やまれる。
このメンツが揃ったらそりゃあ全国までいけるでしょう。
さてそんな銀河系軍団のなかで、メガネくんはとりわけスーパーな能力もないふつうのバスケ部員といった風情で、はじめて漫画で読んだ時はメガネの人くらいの印象しかなかった。
でも大人になってからその人間のできっぷりに気づいて大好きになった。
ミラクル超人たちと同じチームにいながら自分の存在を卑下することもなく、一年にスタメンを奪われても腐ることもなく、チームメイトを称賛するすごさ。
ゴリの夢が途中でくじけなかったのは、メガネくんが一緒に頑張ってくれたお陰も大いにあるだろう。
そんなメガネくんの名シーンといえば、陵南戦のスリーポイントを決めたシーン。
あのゴールはチームにとってとてつもなく大きなものだったし、それを湘北の穴だとされた「ふつうの部員」メガネくんが決めるところが最高に良い。これはNBAではなく部活のバスケなんだと思いださせてくれる。
メガネくんの中高6年間が、確かにあったとされる瞬間だ。
そう、スラムダンクで描かれるバスケはプロではなくあくまで部活だ。
だから選手の実力も様々で、学生は勉強をしたり他にもやることがあるのでバスケばかりやっているわけにはいかない。
三年間の中でメンバーは目まぐるしく変わるし、怪我をしたり、嫌になればいつでもやめられる。
そんな中でバスケを選び、そこに情熱を注ぐ人々の物語なのだ。
連載の中で流れている時間は4月〜夏のインターハイまでで、実は描かれている期間はとても短い。ナメック星爆発くらい時間の感覚がおかしい。
三年間ですらない、3,4ヶ月なのに、あのドラマティックさ。
部活漫画といえば他校も重要だ。スラムダンクはそこの描き方も見事で、枚挙にいとまがないくらい本当にいいキャラが揃っている。
正当なライバル校はおそらく陵南だが、陵南は監督とエースの雰囲気がチームにも伝播しているのか、ちょっとふらふらしたムラっ気のあるイメージ。
そしてわたしは仙道がどうも苦手で…顔かな…考え方かな…。
茂一は好きだが、やっぱり安西先生と高頭監督に比べるともう一歩感があり、逆にそこが人間くさくてかわいい。彦一との要チェック問答は和んで好きです。
対して海南の高頭監督は初心者の花道相手でもミヤさんで対策してきたり、小物を殺すのにも全力でくる姿勢がさすが王者といった感じで、チームもみな努力を惜しまない。綻びを出すとすぐにやられるということがチームの意識にあるのだろう。
そしてそんな海南が大好きで考えた考察があるので、ちょっと書かせてください…。
海南は牧・神・清田が派手なので誤解するが、選手のスター性でいうと湘北のほうが数段上で、実は地味なチームだと個人的には思っている。
じゃあ海南の強さはなにか、と考えると、それはもともと才能のあるプレイヤーをシステマチックに育てる「仕組み」なのではないか。
海南の練習はついてこれる人しか残らないという話があったが、反対に言うとそれをやればある程度通用するプレイヤーになれるということで、だからミヤさんのようなプレイヤーが生まれるのではないか。
名門である海南には、才能のある人材が毎年沢山くるはずだ。けれどチームプレイの相性だったり、部活動であるがゆえに良い人材もいつかは卒業してしまう。
そこで生まれたのがパフォーマンスを属人化させない海南のシステムなのではないか。
と、ここまで完全な妄想ですが、高頭監督も「うちに天才はいないが、うちが最強だ」と言っていたし、17年連続でずっとインターハイに出場し続けるというのは、何かそういう個人に拠らない仕組みが絶対にある。
一回や二回ならその時のメンバーが最高だったで説明がつくけど、17年は単純にそれだけでは無理。
システムである程度育成できるからこそ、あらゆるパターンに対応できる選手層の厚さも生まれる気がする。
海南はおそらく3年6年単位でチームやプレイヤーのことを考えていて、その場限りではなくずっと強さが持続するチームづくりをしている。
作中ではたった一回のインターハイしか描かれないけれど、海南はきっとまた次の年も、その次もずっと全国へ行き続けていくんではないかなと思います。
全国大会出場の椅子が二枠あって本当によかった。
もう一つ好きなシーンとして、三浦台戦と翔陽戦の間のなんとか高校との試合の朝にミッチーと桜木花道が以前の喧嘩相手に因縁つけられて鉄男と桜木軍団が助けにくるやつ、大好き。
これアニメ版オリジナルなんですが、鉄男の「じゃあなスポーツマン」というセリフが、ミッチーの道が再びバスケに繋がったことを象徴しているようでジーンとする。堀田といいミッチーは良い友達に恵まれてる。根が素直ないいやつだしグレても友人関係ちゃんとしてたんだろうか。
初期はこうやって急に世界観がファイナルファイトになってしまうところが神奈川みを感じて好きだったのに、バスケットマンになっていく花道に沿うように話がスポーツメインになって、あんまり見られなくなるのが寂しかった。
スラムダンクの良さは、この不良要素(昼からパチンコいったり)と花道の独特なネーミングセンス、たまに出るギャグっぽい絵柄やセリフによって、王道少年漫画になりすぎない軽やかさがあるところなんじゃないかと勝手に思っている。
全然まだ書き足りないけど、それはまた別の機会にして、今回は終わることにする。おやすみなさい。
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