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紡績工場跡地で伝える、“遠州織物の本質” -entranceショップのOPEN-
遠州産地の課題に取り組む、entranceの活動
これまでにもお伝えしてきたように、高級アパレル生地を生産している遠州産地ですが、かつては1000軒以上あった機屋さんも現在は数十軒。
今も毎年、廃業する機屋さんは後をたたず、残っている機屋さんの数も年々減少しています。
もちろん、課題はたくさんあるのですが、僕が考えている大きな課題はストレートに2つです。
その2つの課題に集中して取り組んでいくチームとして、遠州の若手繊維関係者が集う「entrance(エントランス)」というグループをつくっています。
■entrance
■sou「遠州織物の産地に夢中になる入口、「entrance(エントランス)」の取り組みを紹介!」
遠州の機屋、染工場、産元、紡績企業などの若手世代の職人や経営者を中心に、アパレルブランド、デザイナー、クリエイター、行政などがメンバーとなっています。確たるメンバー表はあえて作らないようにしてウチ/ソトのないゆるい組織とし、遠州産地を盛り上げたいという思いのある方が集っています。
その都度参加できるメンバーが集い、2ヶ月に一度の「遠州さんちの未来会議」という会議を開催しているのですが、会議には毎回entranceメンバー以外の方もさまざまな方が参加してくれていて、回を重ねるたびに参加者が増えています。
2023年に「遠州織物でつくるセミオーダー会」、2024年には東京・清澄白河での「entranceマルシェ」、百貨店催事への出展、市内の小学校での出前講座なども開催しています。
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こうしたentranceの活動をはじめてから、本当にありがたいことに、いろんな話が次々に舞い込んでくるようになりました。
未来会議では、そうしたお話の中で、「おもしろそう」「課題の解決につながるかも」というものをみんなで検討し、お受けしたものは企画して、現在さまざまなプロジェクトを同時に進めています。
取り組む一つ目の課題
さて、そんな産地存続のための課題のうちの一つ。
メゾンブランドなどハイエンド層へのB to Bに流通特化している遠州織物の分かりやすい課題は、「一般消費者への認知」です。
最終製品となった遠州織物の多くは一般の方には手の届かない価格のブランド製品になってしまう。そして、メゾンブランドになるほど自社が発注していることに関し口外を禁止する。(機屋さんは秘密にするよう厳重な契約書を結ばされています)
その結果、一般の方が遠州織物のことを知る機会も体感する機会もないのは構造的にごくごく自然なことなのですが、それにしても地元の人にすら知られていない。
実際、10万円を超えるようなシャツを、一般の人はなかなか買って着ることはありません。
ブルーマウンテンの生産地であるジャマイカの人が、一杯2,000円もするようなブルーマウンテンを飲むことはまずないのは仕方ない、みたいな話なんですが、それはそうにしてもブルーマウンテンのような世界的に価値のある高価なものを生産している国である、ということを国民はおそらく知っていると思います。
でも、日本人も、遠州の人も、遠州織物のことを今知らない。少なくとも地元の人くらいは、誇りに思えるような地元の産業のことや、それを今担っている人たちのことを知ってあげてほしい。
HUISの活動もそうした思いが根本的な原動力になっているわけなんですが、entranceでは、担い手のみなさんと一緒に直接伝えていこう、という活動をしています。
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こうした中、今月8月2日にイオン浜松市野内にある「LIVING HOUSE.」さん店内の一角でスタートしたのが、entranceメンバーによる常設コンセプトショップ【entrance to 遠州さんち】です。
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出展ブランドは、
・古橋織布
・カネタ織物
・和田染工
・髙田織布工場
・テアトリーノ
・BABY BOX Project
・HUIS
の全7ブランドの商品が並ぶ半年間の期間限定のコンセプトショップです。
オープンして1週間が間も無く経とうとしていますが、連日たくさんのお客さまにお越しいただいていて、足りなかったものを少し届けに立ち寄っただけでも、いつも売り場にお客さまが寄ってくださっています。
お声かけするとお話も聞いていただけるので、なんやかんやとご説明させてもらって結局長居してしまう、という嬉しい状況があって、やっぱり浜松もいいお客さまがたくさんいらっしゃるなと感じているところです。
遠州織物のことをきちんと知る機会がなかっただけで、きっかけがあればすごく興味を持ってくれる、という状況が多く、その一歩が今まで地域の中にあまりになかったんだなと、あらためて思います。
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ちなみに、お越しになっているのはどんな方かというと、HUISや各ブランドさんのリピーターさんはもちろん多いのですが、リビングハウスさんへご来店のお客さまがこのコンセプトショップに興味を持って立ち寄っていただくこともありがたいことに多く、いろいろなお話をさせていただいています。
「十大紡」のすべてがあった浜松
そんな中でご説明させていただいている一つのお話が、今回コンセプトショップをスタートしたこちらの「イオン浜松市野」は、もともと近藤紡績所さん(https://www.kondobo.co.jp)の紡績工場の跡地であるということです。現在も敷地自体は近藤紡績所さんのもので、イオンが土地を借り受けているものになります。
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遠州地域にお住まいの方はご存知かと思いますが、この「イオン浜松市野」は他の商業施設も数多く隣接する広大な敷地の中にあります。
これだけ大きな敷地に紡績工場が建っていたということをイメージしていただくと、遠州がいかに繊維産地として栄えた場所だったか、その歴史を感じていただくことができるのではないかと思います。
かつて、浜松には「十大紡」と言われた日本の大きな紡績会社すべてがありました。
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こちらの画像に「十大紡」の企業名が記載されていますので、ぜひご覧になってみてください。(化粧品のカネボウ(鐘淵紡績)などは馴染みのある企業名ではないかと思います。日本のかつての紡績企業の多くは現代では他業種に移行されています。)
繊維産地は数多くあれど、「十大紡」のすべてが拠点を構えていた地域は稀。いかに遠州が特別な産地だったかを物語っています。
では、なぜこうした大きな紡績企業が遠州にあったのか?それは、当時から遠州は高級生地を織る特別な技術を持っていた産地だからです。
紡績企業はいかに細い高級糸を生み出すか、ということを目指して各社が技術を切磋琢磨してきました。こうした高級糸を高密度で織られた生地が、いわゆる高級アパレル生地となり、その国の産業の技術力を示すものになります。
ただ、そうした細い高級糸になるほど織るのは難しく、高い技術が必要になります。高密度に織るとなればなおさらです。
どれだけ良い糸も生地にならなければ価値は生まれません。紡績企業にとって“糸づくりの力”を示すためには、高い機織りの技術が必要だったのです。こうしてみると、遠州に「十大紡」のすべてがあった理由がよく分かるのではないかと思います。
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いかに細い高級糸を生み出すか、そして、その素晴らしい糸を、いかに素晴らしい生地に織り上げるか。遠州織物はかつての繊維産業に関わる職人たちの技術の結集であり、その歩みは、世界に誇る日本の高級生地が生産されてきた歴史なのです。
豊田佐吉が生まれ、近代繊維業の発展の礎となる織機メーカーが集中していた遠州だからこそ、旧式の織機を操る職人技術も蓄積され、現在もこうした細番手の高級糸を高密度に織った最高品質の生地が作られています。
すべての人が耳を傾けてくれるわけではありませんが、足を止め、耳を傾けてくれる方々がいます。
このご縁ある場所で、担い手の皆さんとともに少しずつ伝えていきたいと思います。
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なお、もうひとつの大きな課題「担い手の確保」についてのプロジェクトも始動をはじめました。またあらためて記事にしたいと思います。
■期間限定コンセプトショップ【entrance to 遠州さんち】
8月2日(金)〜半年限定
イオンモール浜松市野・リビングハウス内
■出展ブランド一覧
・HUIS
・古橋織布 @furuhashi.weaving
・カネタ織物 @kanetaorimono
・和田染工 @somewada1951 @sosog_chusen
・髙田織布工場 @takadaworks
・テアトリーノ @teatrino_mimi
・BABY BOX Project @babybox_project.hamamatsu
■entrance
https://enshu.entrance-textile.com