heyに入ってからの10ヶ月で取り組んだエンジニア採用のふりかえり
この記事はエンジニア採用Advent Calendarの21日目の記事です。
こんにちは heyの @huin です。
僕は今年の3月1日にheyに入社し、今月で10ヶ月となります。
現在の本業はテクノロジー部門モバイルアプリケーション本部という部署のシニアマネージャーですが、3月の入社から今日に至るまで、テクノロジー部門全体の採用を横断的にサポートする役割も持っています。
そこで今日は、heyに入って10ヶ月間で取り組んだエンジニア採用に関する工夫について振り返りを書きたいと思います。
先にネタバレしておくと、他社と比較して特別なコトをしたわけではありません。ひとつひとつは他社さんがすでに実施されていることだと思うので、その中の事例として参考になれば幸いです。
heyという会社とheyの採用体制
heyは、誰でもかんたんにネットショップが作れるサービス 「STORES」をはじめとして、お店のキャッシュレスサービス「STORES 決済」、無料から使える予約システム「STORES 予約」、ネットショップとひとつになったPOSレジアプリ「STORES レジ」と大きく4つのサービスを提供している会社です。
外から見ると、「お店のデジタル化をまるっと」というコンセプトのもとに複数の事業を展開している企業ですが、歴史的には複数のスタートアップがくっついてできた会社なので、動いているシステムは独立したものになっています。(Railsが多く使われているという偏りはあります)
全社で400名、エンジニアだけでも100名近い規模の組織なのですが、前述の経緯により同じバックエンドエンジニアであっても採用要件が少しずつ異なります。そのため現時点では各プロダクトごとにポジションを用意し、採用活動をしています。
採用体制としてはリクルーターが (おおむね) 本部ごとに担当としてつき、各プロダクトのシニアマネージャーやマネージャー (EM) と連携しながら採用進めるイメージです。
僕自身はというと、そういった各プロダクトの採用状況を把握しつつ、PRチームやリクルーターと連携してエンジニア採用全体の調整をやっている立場となります。
というわけで前置きが長くなりましたが、そんな組織での採用を振り返っていきます。
2021年に取り組んだ5つのこと
採用ダッシュボード
今年取り組んだことの中で、もっとも価値があったと思えるのが採用ダッシュボードの制作です。
「推測するな、計測せよ」はRob Pike氏の格言ですが、プログラミングに限らずエンジニアリングの基本です。何かものごとを改善しようと思ったら、まずは現状を正しく把握して、解決すべき課題を明らかにする必要があります。
というわけで、今年の夏にATSから候補者の生データをDLしつつスプレッドシートで主要なKPIを確認する簡易ダッシュボードを作成しました。(僕自身で全て作ったわけではなく社内のエンジニアの手も借りています)
現在は下記の数値を中心に採用の課題発見や分析、戦略に利用しています。
各ポジションのエントリー数の月次推移
採用チャネルごとのエントリー数の月次推移
各ポジションの各選考ステップの実施回数・通過率・辞退率
採用リードタイム (応募から内定までの選考日数)
今ドキの応募管理システム (ATS) であればレポート画面はあると思いますが、ふと思いついた仮説に対してアドホックな調査をしたいときには、
生データに対して直接分析できるツールがあるほうが何かと便利です。
そういう意味でGoogle スプレッドシート製のダッシュボードは重宝しています。
課題としては、今年は試行錯誤が多くダッシュボードが散らかっているので
定常的な分析項目は、Google データポータルに移行しようと考えています。
選考基準の明文化
採用における最も難しいことのひとつは、候補者の能力を正しく評価することです。もとより候補者の能力をたった1時間 x 数回の面接で完全に評価することなど不可能です。
一方でその努力を諦めてしまうと、曖昧な基準で入社したメンバーに現場が混乱したり、面接という行為が職人による秘伝の技術となってしまい、採用自体スケールせずに終わってしまいます。可能な限り明瞭かつ客観的な選考基準と、公平な面接によって採用を行うべきと考えています。
というわけで、4月から7月にかけて選考基準を明文化する活動を行いました。内容としてはGoogleのre:Workで解説されている「構造化面接」を目指しており、複数の「評価観点」と「水準」から構成される内容となっています。また、ただ水準を描くだけではなく面接においてどんな会話でそれを確認するか?を定義した面接シートも作成しました。
現在は一部のポジションで試験中のステータスです。
面接官からは事前に面接の内容を組み立てやすいというポジティブな感想や、カバー範囲が広いため質問の流れを作るのが難しいといった意見ももらっています。また、そもそも本当に良い人材を採れているのか?という評価や、その精度をあげるための継続的な改善もしていく必要があります。
ここについては来年も継続的に改善しつつ、可能なら他のポジションへの展開も進めていくつもりです。
Techイベント
採用を推進するにあたって最も古典的なアプローチが「情報発信」であり、具体的にはTechイベントの開催ではないかと思います。heyでも情報発信を強化すべく、hey Talk というイベントを開催し、2021年だけで全6回開催することができました。
4月 : 急成長するSTORES 予約の開発と組織作り
5月 : STORESのカジュアル面談全部お見せします!
6月 : STORESとSTORES 予約の「今夜くらべてみました」
8月 : 新プロダクト「STORES レジ」を支えるエンジニアリング
11月 : 「徹底討論!FE/BEの職域は分けるべきか」
12月 : 「質・スピード」への挑戦 - STORES 決済/予約
(メンバーが企画・運営してくれたものも含んでいます)
感想としては、登壇してくれるメンバーの満足度は高い一方で、毎回ゼロから企画・運用するのは相応の負担がかかるということです。また、イベントから直接応募するケースは希で、イベントの開催が採用に寄与しているという実感を持ちづらい現実があります。
こうした発信活動の位置付けをどうするか?という点で2022年は改善の余地があると考えています。
イベントスポンサー
自社イベントによる発信と並行して、認知獲得の活動として強化したのがイベントスポンサーです。今年は1年間で10件のイベント・カンファレンスについてスポンサーをさせて頂くことができました。
カンファレンススポンサーと聞くと「(1回の) スポンサーで何人採れるの?」とROIをシビアに求めてくる企業もあると聞きますが、Techイベント同様に地道に認知を高めるための活動だと考えており、数年先に結果が出ればいいかなと考えています。
また、今年のheyはスポンサーを頑張ってます! で書いたのですが、個人的にはスポンサー活動は採用以外の目的を含んでもいます。
ただし、今年において効果が全くなかったかといえばそうではなく面談の場などで「スポンサーで会社名を知った」と"認知"に効果がでている実感はあります。さらに、iOSDC Japan 2021 ノベルティうらばなし のようにメンバーが積極的に取り組んでくれることで社内としても盛り上がる機会になっており、採用効果だけでない副次的な価値もあると考えています。
というわけで、来年についてもイベント・カンファレンススポンサーを積極的に行っていく予定です。
2022年採用戦略・採用計画
2021年の採用が終わったらどうなるかご存知でしょうか?
そうです、2022年の採用が始まります。
ここは採用関係者というよりもシニアマネージャーとしての立場が大きいですが、ここ数ヶ月2022年の採用目標とそれを実現するための戦略の検討をメインで取り組んでいます。
採用計画の中心は「プロダクトロードマップに基づいて必要なエンジニアの数」ですが、人件費予算、採用チームの採用能力(+翌年の見込み)、現チームの受け入れ能力などさまざまな変数を絡めて調整する必要があります。
当然、この活動もさまざまなチームとコミュニケーションが必要で、マネージャーやリクルータはもちろん多くの人の力を借りて取り組んでいます。
そして、ここでも今年つくった採用ダッシュボードが活躍します。現実を無視した「必要人数」だけに引っ張られることなく、今年の実績データをもとに議論・意思決定ができるのです。
heyでも今年のエントリー人数から入社までの人数・通過率をデータとして出し、改善の余地が大きい部分について高めの数値目標を置きつつ全体として不可能ではない数値目標を設定しています。また、別途採用に関わったメンバーとの振り返りを行い、定性的な情報も得た上で、計画に落とし込みます。
採用市場は季節性の波があり、それを逃すと取り戻すことができません。
年が明けてから「何をしよう?」と考えていては大事な機を逃すことになってしまいます。そういった理由もあり、年内に大枠を作り上げることを目指して取り組みました。
2021年のエンジニア採用で学んだこと
というわけで、heyに入って10ヶ月間で取り組んだ5つのことをご紹介しました。他にも採用ピッチのリニューアルや、メンバーインタビューなどなど色々やってはいるのですが、特に思い入れの強い5つを紹介させていただきました。
さて、ここからはこれら採用活動から学んだことを書きたいと思います。
採用は会社の総合力が試される
10ヶ月を通じて何より感じたのは「採用は会社の総合力が試される」ということです。
採用はリクルーティングチームが頑張れば結果が出るというものではありません。そもそも、エンジニアを必要としているのはエンジニア組織自身です。しかしどれくらいのエンジニアが必要になるかは、プロダクトロードマップの影響を受けます。
また、いざ採用をするにあたっても、何を武器に候補者をアトラクトするのか?も必要になります。さらに長期的な採用のためにはPRチームとともに会社・組織のブランディングもしていく必要があります。何かを発信するとなれば、より候補者に届くようにデザイナーの力を借りる必要もでてくるはずです。
採用はとにかく多くの人たちの協力がないとできない活動なのです。
なので、日頃から協力してもらえるだけの信頼を得ておく必要があります。
短期の採用施策と、長期の認知施策をしっかりと分けて考える
これはどちらかというと「今年失敗した」種類の話です。
先に紹介した通り、今年はTechイベントやスポンサーなどの活動を積極的に行ってきました。それらの活動は「"採用のための"情報発信」を掲げてやっていたのですが、これが中々に難しさをうみました。"採用のため"と枕詞がついてしまうと、イベントやスポンサーから何人が選考に進んだか?という短期的な成果を求めてしまうのです。
しかし、考えればわかりますが、スポンサーCMを数回見た程度で「よし選考を受けてみよう」となることはまずありません。候補者が転職を考えた時にはじめて、CMのイメージから転職先の候補として選んでもらえるのです。
言い換えれば、認知活動というのはそれ自体が転職を引き起こすものではなく、転職する時に選択肢に入れてもらうための活動なのです。
そんな活動で直接的な採用成果をもとめると結果が出ずに落ち込んで終わるだけです。今年はそこに気づくまでに多くの時間をかけてしまいました。
来年はその辺りをきちんと整理し、メンバーの期待値を調整した上で活動を展開していこうと考えています。
採用に関わるエンジニアにとってのメリット
前述の認知施策の話が失敗した話だとすると、この話はまだ答えの見えていない話になります。
イベントやカンファレンスでの登壇などはエンジニアのキャリアにとって基本的にはプラスの活動となります。なのでメンバーにお願いするにも比較的やりやすいのですが、一方でスポンサー活動やイベントの運営などに興味を持ってくれるエンジニアはheyの社内でも少数です。
どんなモチベーションやメリットを感じて貰えばこういった活動に積極的に取り組んでもらえるようになるのか?ここが、今年の採用活動を通していまだに答えの見えていない部分です。
「会社として必要な仕事だから」とトップダウンでやってもらうこともできるでしょうが、それでは持続性がありません。
ここについてか投げることは2022年に持ち越しの課題となっています。
おわりに
というわけで、heyに入ってからの10ヶ月で取り組んだ採用活動と、そこからの学びを書かせていただきました。まとまった内容ではない & 画像がぼかしばかりで恐縮ですが、エンジニア採用に関わる方へ何かの参考になれば幸いです。
最後に宣伝ですが、Meetyで「エンジニア採用について情報交換させてください」という面談を作りました。エンジニア採用に関わっているリクルータ・広報・エンジニアの方々、ぜひMeetyからご応募いただきお話しましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました!