『アイアンマン』 午後ローを予習する。

 さあ三連休の最後、海の日ということで放送時間帯が少し違う本日の午後ローは、現在も続々と新作が公開されているマーベルシネマティックユニバースの記念すべき第一作『アイアンマン』である。二〇〇八年の作品。
 主演はロバート・ダウニー・Jr。共演はジェフ・ブリッジスにグウィネス・パルトロゥ。それに今作限りのローズ役となったテレンス・ハワード。彼がウォーマシーンになった世界線も見てみたかった。マルチバースでなんとかなりませんかね。ならんか。監督は、今作以降もハッピー役として登場しているジョン・ファブロー。いい人そう。あとサミュエル・L・ジャクソンも出ている。

 僕がアメコミに触れたのは、だいたい九〇年代半ばぐらい。『X−メン』の日本でのアニメ放送の後に、同コミックシリーズの日本語版が定期刊行され、その後もマーベルのシリーズは続々と刊行された。ジム・リーやトッド・マクファーレンといったアーティストも注目され、イメージコミックスの創刊などもあって、日本のファンも増え始めた時期だったと思う。僕は日本語版を待てなくなり、専門店をいくつも回って、好きなシリーズや作家のコミックブックを買いあさった。ちょうど専門店や取扱店も増えていた頃だったのだ。
 そんな中にあって『アイアンマン』はさほど注目されていないタイトルだったように思う。地味なデザインで、中身は大富豪であるものの、特殊な力を持たない、装備の強さだけが頼りのヒーローという印象だった。
 それがこの化けようである。ロバート・ダウニー・Jrのトニー・スタークはそんなアイアンマンのイメージを一新させた。放蕩三昧で人格破綻者のセレブを見事に演じている。そして主役を支える共演陣の力も、スーツのデザインやストーリーもすべてが素晴らしい。
 軍事兵器を生み出し莫大な利益を上げている死の商人が、テロ組織に誘拐され、自社兵器の脅威の餌食にされかける。なんとか救出された彼は、軍需産業から足を洗う決心をする。それだけではなく、強化スーツを身にまとい、自分の生み出した兵器を悪用する敵を自らの手で始末していくのだ。話はシンプルだが、アメリカという軍事大国に常につきまとう影を、うまく娯楽作品に落とし込んでいると感じる。それが暗い話に落ちていかないのは、さすがとしか言いようがない。
 最後の記者会見で彼が放つ「私がアイアンマンだ」の台詞は、今後も長く続く戦いの狼煙であり、けして敵には屈しないという宣言にも聞こえる。そして『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも、ふたたび同じ台詞が登場する。この台詞によって『アイアンマン』の戦いは始まり、そして終わったのだと思うと、感慨深い。吹き替え版では藤原啓治さんがトニー・スターク役を努め、見事シリーズを最後まで完投し、二〇二〇年に惜しくも逝去された。
 そんな歴史の始まりを、また見なおすことができる。
 楽しみだ。
 
 

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