冷蔵庫で冷やす
たいていのご家庭には冷蔵庫があると思う。たいていのご家庭は冷蔵庫で食品などを冷やす。そういった目的で購入されていることでしょう。
僕の家でも同様です。同じ用途で使用しています。
かなりの年代物ですが、開けてみると、まだまだ中はひんやりしている。気になるのは、開閉部分が若干緩くなり、ちゃんと閉まっていないようにも見える点です。ちょっと浮いてるような気がする。それでも問題なく使用できるので、なんとなくずるずると使い続けてしまっている。
家電量販店で新製品の冷蔵庫を眺めていると、最近の物は僕の家にあるものと違って、スリムだし機能的だし、それなのに大容量だったりして、とても購買意欲をそそられる。
それでも冷蔵庫を買い換えるタイミングがいつなのか、見極められずに今に至る。だってまだ使えるんだよ、うちの冷蔵庫は。
それに買い換えるにしても、中の食品やら何やらをいったん外へ出さなくてはならない。最悪廃棄することになるかも知れない。奥の方に眠っている辛いんだか辛くないんだかわからないようなラー油や、しけった味付け海苔や、正体不明の瓶詰めなどを引っ張りださなくてはならない。塩辛かも知れないし、なめたけなのかも知れない。なぜか使いかけの塩昆布の袋がいくつも出てきたり、チューブのわさびが何本もしまい込まれていたりする。
自分自身の怠惰という罪が、物理的な質量をともなって、眼前に次々と現出する。
そんな恐怖を想像すると、新製品の購入に足踏みしてしまう。
それで帰りに鮭の切り身を買ったりする。わさびが切れているかも知れないと思い、チューブのわさびもカゴに入れたりする。そうしてちょっと使ったわさびが、冷蔵庫の中にしまい込まれ、いつしか奥へ奥へと追いやられ、そうしてチューブわさびたちの墓場が、冷たい密室の中につくられるのだ。
合掌。