いま、ここに在る「自然」
「センス・オブ・ワンダー」とは、自然界の神秘さや不思議さに目をみはる感性のこと。「沈黙の春」を著した生物学者のレイチェル・カーソンの遺作となったエッセイ集のタイトルです。環境汚染の問題を世界に告発した彼女は、最期に環境教育の大切さを、美しい文章に綴り伝えました。未来を生きる子どもたちの「センス・オブ・ワンダー」を育むことが、人と自然との共存へ道をひらくことになる、そのメッセージは、世紀を超えて、今も私の胸に響いています。
私はその書に感銘を受け、学生時代から環境教育に関わってきました。ですが、妊娠と出産、そして子育てを通じて、気づけば性教育に携わるようになっていました。私の内に宿る生命の不思議、産み育む身体の驚異、私を翻弄する?子どもたちの個性…! 大いなる自然は、扉の外に求めずとも、身の内に深く豊かに息づいていたのです。
そう気づくと、日々の暮らしの中に、小さな「ワンダー」を見つけ、いとおしむことができるようになりました。それば、例えばこんなささやかなことです。
(写真キャプション)生後5日目の末っ子を、当時4歳の次女と一緒に抱っこしてみました。今は二人とも小学生です。
子どもを毎晩添い寝で寝かしつけていた時期、「この時間があれば、あれもできる、これもしたいのに」と、いらだちを覚えることがありました。そんな時、子どもの胸に乗せた手のひらに、柔らかな鼓動が伝わってきました。この鼓動は、一体何万年、何億年の時を止まず刻んできたのだろう。その生命の連なりを想うと、一時の焦りが小さなため息とともに消えて、穏やかな気持ちで寝息を待つことができました。
いのちってスゴイ、カラダって面白い。私自身をハグし、子どもたちを育む原動力となった「ワンダー」を、このコラムで皆さんと共有できたら嬉しいです。
(常陽新聞2014年8月6日付掲載・13回連載中1回目)
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