鼻からスイカって本当ですか?
中高生の女の子から、妊娠や出産について、不安げな質問を受けることがよくあります。中でもお産について、「鼻からスイカを出すくらい痛いと聞きますが、本当ですか?」と尋ねられます。そのたびに私は、この単純にして強烈なイメージへの対抗心が、ふつふつと沸いてきます。
他の霊長類と比べてヒトのお産は難しく、とある本には、前者をスキーの直滑降に例えるなら、後者はボブスレーだとありました。二足歩行をするため、複雑な形に変化した骨盤。ヒト特有の脳を収める、大容量の胎児の頭。ヒトの誕生は、進化がもたらした母と子のせめぎ合いと協調とが随所に凝らされ、知れば知るほど感嘆の泉、まさにワンダーの宝庫です。
(写真キャプション)誕生学では、骨盤を通るために赤ちゃんが備えている知恵や工夫を紹介します。写真はお誕生の瞬間。頑張った赤ちゃんに、祝福の拍手が贈られることも。
私自身は素晴らしい助産師さんとのご縁で、3度の出産を気持ちのいい経験に導いていただきました。誕生の困難を補うため、ヒトはお産を支える知恵や技術も高めてきたのかなと思える場面が、いくつもありました。陣痛のさなか、腰に添えられた助産師さんの手の温もり。すうっと痛みが和らいだ、あの感覚は忘れられません。素人の夫が、いくらさすってくれても煩わしいばかりだったので(ゴメン!)、なおさら魔法のように感じられたものです。
鼻からスイカを出した人は世界に一人もいないけれど、人の数だけお産はあります。私たちの身体が持つ素晴らしいデザインと、温かな支え手の存在を伝えることで、将来ママになるかもしれない女の子たちのギモンに、応えていきたいなと思います。
(常陽新聞2014年8月27日付掲載・13回連載中4回目)
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