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失語症になった母が読み書き練習する話
母は病気による高次機能障害で、失語症になってしまいました。
今回は、文字の読み書きが難しくなってしまったことについてお話します。
手術して間もない頃、入院中の書類に母がサインをしたものを見たときは結構ショックでした。
署名枠内とはかけ離れたところに、文字とは思えない、ただ授業中にペンを持ったままウトウトしてしまったときにノートに付いちゃったような、そんなカタチというか点と線。
名前一文字の面影すらもありませんでした。
字を書くことが好きな母だったので、母からもう手紙が来ないのかと思うと悲しくなりました。
小学生のころ習字の宿題であんなにうるさく指導してきたのに。
母が読み書きの練習をするときは必ず家族の名前でした。
「それだけは忘れないように」と、何度も何度も書いていました。
その姿を見るたびに私は込み上げてくるものがありました。
ところで、字が書けない人に字を教えるということが、こんなにも難しいとは思いませんでした。
「こういう字だよ」とお手本を書いても書けません。
「この字を上からなぞってみて」と言ってもなぞれません。
「カタカナの『ス』を書いてみて、そして最後真ん中突っ切って。そしたら『ヌ』だから!」
と言ってもなぜか最後だけ書けません。
「それ『け』だよ、最後もっとくるんぱ!そう、それが「は」よ!」
私も母が書ける字を頼りに、なんとかヒントを出して書かせようと必死でした。
読めないし、書けないし、
書いても読めない、読めても書けない。
記憶障害もあるので忘れないようにメモをとるのですが、結局自分で読めないのです。
「・・・逆にハングルとかわかるようになってない?」
思わず聞いてしまいました。
そうこうしているうちに私までゲシュタルト崩壊するシマツ。
本当に難しいし、私も母ももどかしいです。
それでも治療によって当初よりはかなり改善しました。
今では自分の名前は漢字でキレイに正しく書けるようになりました。
しかもちゃんと母の字です。
これで迷子になっても一応大丈夫だねとお互い安心しています。
一方で私の名前を書けなくなりました。
「なんでこんな名前にしたんだろうね」と、母がぼやいていました。
たとえ以前のように書けなくても、書きたいと思う気持ちがあるならば訓練あるのみです。
言語聴覚士(ST)さんとのリハビリも継続中ですが、家でもプリントを用意しました。
「失語 書き方 プリント」などの用語で検索して出てきた、無料でダウンロードできる練習問題を印刷して使用しています。
絵とひらがなと漢字で単純な単語が書かれているものを選びましたが、それでもなかなか難しい。
絵を見てもわからないので、「ひらがな2文字」「日本の食べ物」「にぎるもの」
ここまで言って「すし」と回答できました。
平仮名50音は比較的スムーズに書けるので、2回正しく書けたらオッケーとしています。
これだけでも立派な書字訓練、脳トレです。
そもそも逆に考えすぎないほうがサラッと読めたり書けたりすることもあります。
反射的な反応なのかもしれません。
不思議世界。