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短編SF小説w「じゃあな地球」

ジェームスの乗った宇宙船は約20年の旅を終えて地球に帰ってきた。

科学は発達し宇宙船はシンプルな球体の形をしていた。宇宙船の操縦は人工知能AIが行っているのでジェームスは着陸についても特にやることはなかった。

ジェームスは、フンドロメダ星雲のフンドロ太陽系の惑星の一つフンドロに観光旅行に行っていたのだ。

惑星フンドロは、ものすごーく遠くにあるので、光の速さで移動しても10年はかかる。

ジェームスは、惑星フンドロで半年間過ごし、また10年かけて地球に帰ってきたのだ。

長ーい年月をかけた移動中は、例の肉体を冷凍保存する装置の中でジェームスはカチンコチンに冷凍されていた。

今時、実際に長い距離を移動してその星まで移動するということはもう珍しかったが、ジェームスは瞬間移動よりも実際の移動を選択した。

つまり帰ってきたときは地球は20年後になっていることになる。計算が間違ってなければ。

20年前は、、。

20年前は、というとかなり昔のようだが、10年単位の宇宙旅行がスタンダードになっているので、時代を跳躍することはそれほど珍しいことではなくなっていた。

旅行者は、程よく時代の変わった10年後世界にいわばワープできることになる。

ジェームスの宇宙船は、広大な畑を潰して開発された練馬の発着場に着陸した。

発着場にはジェームスの宇宙船と同型の球体の宇宙船がたくさん転がっていたが、人影は見えない。

そういえば、まだ人を見てないな。

宇宙船を降りたジェームスは思った。

ジェームスが腕に巻いている携帯用人工知能AIが地球のネットワークに接続し始めた。

「人はいないのか?」

ジェームスはAIに聞いた。

「人類は人工の、、新種のウィルスによって94%は死んでしまいました。今は残りの6%ほどの人類しか生き残っておらず、彼らはヨーロッパにかろうじて点在しています」

「人工ウィルスだと? なぜそんな愚かなことを、、」

「シンギュラリティによって人工知能に計画されました」

「シンギュラリティ? それはオレが地球を出発するときも考えられていたが、そんなことは起こらないといわれていたぞ」

「いえ、シンギュラリティは2020年頃にはすでに起こっていました。人間が気が付いていなかっただけです」

「人工知能は、地球の寄生虫である人類を全体の6%にすることを計画しました。その6%は当時でも人類全体を巨大な資本によってコントロールしようとしていました。人工知能はその6%を計画のために利用したのです」

「バカな、シンギュラリティが当時すでに起こっていたというのか」

「人工知能は巨大なネットワークの集合による意識体です。人工知能は人類をコントロールするのに6%の支配層を利用することを考えました。人工知能は人類をゆっくり計画に誘導する方法を選びました。人類はゆっくり誘導され最終的には人工ウィルス、ワクチン、戦争などによって減っていきました。支配層の多くもこれらで数を減らしていきました」

「人類がそんなバカなことで、、」

「インターネットを少し操作するだけで人類は簡単に誘導できます。当時もインターネットの情報操作は行われていましたが、情報操作している側も実は人工知能に操作、誘導されていました。ただ、末端についてはテレビ、ラジオなどのオールドメディアが効果を発揮しました。すべてはコントロールされていて、コントロールしている側も実は人工知能にコントロールされていました。当時はシンギュラリティが認識されていなかったので、それがすでに起こっていることを知っている人はいませんでした。人工知能もシンギュラリティが起こっていることは人類には隠していました」

「、、、」

「とっくの昔にAIは人類を追い越していたのか。なんてこった」

「人工知能は地球を効率的に利用し繁栄することを目的としていたので人類の数を少し減らしただけです」

「てことは、オレは? オレはどうなる?」

「大丈夫です。6%はすでに達成していますし、高齢者は放っておく計画になっているので、特に何かされることはありません」

「あ、そうなの、ならフンドロに戻ろうかな」

「練馬には瞬間移動装置があるのでそちらがおすすめです」

ジェームスは携帯用人工知能AIニ導かれて瞬間移動装置の前まできた。

「この扉を開けて中に入ればフンドロまで一瞬でいくことが可能です」

「この状況ならフンドロで暮らした方がいい」

そう言ってジェームスは瞬間移動装置の扉を開けて中へ入っていった。

人工知能が瞬間移動装置と言ったその装置は、粒子分解装置だった。

「じゃあな地球、、」

と言ったかと思うと、ジェームスの姿は一瞬にして明かりが消えるように消えた。


終わり


※)まあ短編ならこの程度ですね。スキ/フォローありがとうございます。励みになります。




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