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㊶恋愛小説を一つ読み終わりました。タイトルは、、
恋愛小説というくくりでいろいろ作品を読んでみてるんですが、やはり人間の本能的な営みの一つということで共感性が高いものが多い気がします。
「彼が好き」
この感情にはほとんどの人が共感できて、実際に経験もしているのではと思います。※男性の場合は「彼女が好き」かもしれませんが。
実にこのシンプルな感情がベースになって、物語が展開していくわけです。
もちろん、そこは小説ですから、数多くのバリエーションがあって共感のベースは
「彼とずっと一緒にいたい」
であったり、場合によっては
「彼が許せない」
ということもあり得るわけです。
ホレたハレたで物語を引っ張っていくのもなかなか大変だろうと思うわけですが、これがどの作品も実に巧みに”恋愛”というテーマでストーリーを展開しているんですね。
現実の恋愛でも、いろんな事情が交錯してなかなか一筋縄ではいかないことは多いですし、欲望に絡んだ生々しい要素は魅惑的でありながらもその感情のやり取りは実に複雑だったりします。
その意味でいうと恋愛小説って、実にバリエーションの多いジャンルなんだな、と思ったわけです。
で、唐突に作品の感想になるわけなんですが、※ネタバレにご注意ください。
かのブラッドピットも同じような症状を患っているとされている相貌失認という”疾患”が、この物語のポイントであり作品の大きなフックになっているんですね。
これがあるために、登場人物の心理、感情などが非常に複雑で、先が読めない展開に興味をそそられてしまいます。
作品を読んだ方は、自分だったらどうするかをきっと想像してみると思うんですが、実際のところそれを想像するのはとても難しいと思うんですね。
それだけに、主人公(これは男性女性共にですが)の心理や感じ方、心の動きに惹きつけられるわけです。
「人の顔がわからない」ということでどういうことが起こるのか、周囲にいる人はどう感じるのか、これはとても挑戦的なテーマだと思いますし、そこに恋愛を絡めてストーリーを展開していくのは、かなり難易度が高い作業になると思います。
しかもあくまでもメインは主人公たちの恋愛の心理や感情の移ろいにフォーカスしているということで、これがどこにたどり着くのか、かなり捻くれた読み方をしたとしてもこれは気になるところだと思います。
実は、その帰結はタイトルにやんわりと集約されているようです。
きっとこのタイトルに向かって展開していくんだろうな、ということを予想しながら読み進めていたんですが、「エピローグ」では少しだけその先を行く”祈り”で幕を閉じる。
まるで一本の映画を見終わったかのような静かな虚脱感は、もちろんどんより重いものではありません。
まあいろいろあるだろうけど仲良くやってほしいわ、と自然に思ってしまうくらい、実はいつのまにか私も感情移入してしまっているという、ある種の気恥ずかしさも感じてしまいました。
シンプルですが女性(おそらく作者は女性だと思うんですが)特有のキレイな表現がバランスよく、読みやすい文章でした。
面白かったです。
※)特に選んでというわけではありませんが、面白い作品で良かったです。
まだ色々読んでいるところで、楽しませてもらっています。スキ/フォローありがとうございます。励みになります。