子どもの肥満の治し方(2)

行動療法のすすめ ~子どもと一緒に楽しく取り組むために~

子どもの肥満解消の鍵は、「食事療法」と「運動療法」を実践することにありますが、実際にそれを始め、続けるのは簡単ではありません。特に子ども自身が楽しみながら取り組めるようにするには、保護者のサポートが重要です。ここでは、行動療法の概要とコツを簡単にご紹介します。

行動療法とは?

ここで言う行動療法とは、子どもの生活習慣や行動を少しずつ変えることで、健康的な生活習慣を手にいれる方法です。これは単に「頑張る」、「頑張れ」ということではなく、目標行動を立て、それに向けて環境を整えたり、目標を工夫したりして、「自然に健康的な行動が選ばれる」状態を作ることを目指します。一般的に「記録すること」が大事で、カレンダーでもメモ帳やスマホでも良いので、目標行動の実行状況を記録します。できたら○、できなかったら×のような単純なもので構いません。成功へのコツは、無理のないペースで進めることです。

記録の一例:写真は著者が実際の診療に用いている「グラフ化体重日記」です。糖尿病内科の診療ではよく知られている方法で、1日に4回体重を測り(起床後、朝食後、夕食後、寝る前)ます。私はグラフ部分の下に行動目標を書き込む欄を加えていますが、「体重をつける」だけでも立派な行動目標です。

行動療法の3つのステップ

  1. 具体的な目標を設定する 曖昧な目標ではなく、やったのかやらなかったのかがはっきりして、達成可能な目標を立てることが大切です。
    ・ 悪い例:「もっと運動しよう」
    ・ 良い例:「1日10分、家の近くを一緒に散歩する」
    小さな成功体験を積み上げる事で、子どもの自己効力感が高まります。

  2. 環境を整える 子どもが自然に健康的な選択をできるように、家庭の環境を工夫しましょう。
    ・お菓子をテーブルの上に置かない代わりに、フルーツやヨーグルトを目につく場所に置く。
    ・運動がしやすい時間を家族のスケジュールに組み込む。

  3. 褒めることを忘れない 子どもは親の反応に敏感です。たとえ小さな努力でも、「よく頑張ったね」と褒められると、自信とやる気が生まれます。
    ・「今日はお菓子を少しにできたね。すごいね!」
    ・「散歩できて楽しかったね!」

保護者が知っておきたいコツ

完璧を求めない 最初からすべてうまくいくことはありません。一度失敗しても、「じゃあ次はこうしてみよう」と前向きに考えることが大切です。
・子どもと一緒に取り組む 子どもに「やりなさい」と指示するだけではなく、親も一緒に行動することで、子どもが楽しく続けられるようになります。たとえば、一緒に料理をしたり、家族みんなで運動を楽しむ時間を作ったりすることで「やらされてる感じ」が薄まります。

最後に

行動療法は、子どもの肥満を解消するだけでなく、家族の絆を深めるきっかけになります。「無理なく、楽しく」を合言葉に、ぜひ日常に取り入れてみてください。次回は、具体的な「食事療法」の工夫について書き留めます。

著者について:
山田克彦
私は小児科医として30年以上、子どもたちの健康に関わってきました。現在は、介護老人保健施設リハビリサポートひうみの医師として、また佐世保中央病院小児科の非常勤医師として勤務しています。「子どもの肥満」に悩む多くのご家族のお役に立ちたいと思い、このノートを始めました。

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