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エイドは神、コーラは聖杯 〜トレイルランナーの補給食讃歌〜

エイドステーション、それはトレイルランナーにとって天国の入り口であり、地獄からの一時的な脱出地点だ。100kmを超えるレースにおいて、エイドはただの補給所ではない。むしろ、それはドラマの舞台、心のオアシス、そして自分の無力さを痛感する場所だ。

疲れ果てた体がエイドにたどり着くと、そこに待っているのは単なる食べ物ではない。エイドの補給食は、エネルギー源を超えた神の恵み、人生を救う黄金のアイテムだ。小さな紙皿に並んだオレンジのスライス、塩分の効いたポテトチップス、色とりどりのジェル、それらすべてがもはや食物の域を超え、まるで勇者がダンジョンで手に入れる秘薬のような輝きを放っている。まるで「食べ物じゃないんだ、これはエネルギーの錬金術だ!」と叫びたくなる光景だ。

一口かじっただけで、疲れた足は再び走り出し、挫けそうな心は燃え上がる。特にコーラの魔力は絶大だ。炭酸のシュワシュワが口の中で弾け、糖分が即座に血液に浸透する瞬間、どれだけのランナーが「これでまた100km走れる」と勘違いすることか。エイドのコーラは、ランナーにとってのネクター、ギリシャ神話でいうところの神々の飲み物なのだ。

そして、エイドでの食事は他でもないランナー自身の自我を解放する儀式でもある。普段は健康志向のランナーも、レース中のエイドでは一転してガッツリとカロリーを摂取する。ポテトチップスを口いっぱいに詰め込み、バナナを一気に食べ、ショットグラスに入った塩を手に取り「もっとだ!」と叫ぶ姿は、どこか狂気じみた宗教的な儀式にすら見える。彼らは食べ物をただの栄養素としてではなく、生きるためのエネルギーそのものとして崇拝するのだ。

エイドステーションはまた、ランナー同士の静かな戦場でもある。「あ、まだ残ってる!」と他のランナーが手を伸ばした瞬間、隣のランナーが一瞬でそれをさらっていく。そこには暗黙の了解があり、「エイドでは手加減しない」という不文律が存在する。おにぎり一個をめぐる熾烈な争い、それはまさにサバイバルの縮図であり、いかに効率よくエネルギーを吸収するかという戦略の戦いだ。

走り終わってゴールする頃、ランナーたちは皆一様に言う。「あのエイドのオレンジ、あのコーラがなければ、絶対にゴールできなかった」と。そう、エイドの補給食はただの「食べ物」ではなく、ランナーたちの希望、再生、そして勝利の鍵なのだ。次の一歩を踏み出す勇気をくれるその一口は、ただのカロリーの塊ではなく、魂の救済なのである。

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