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気候変動とランニング環境:未来のトレイルを守るために
はじめに:気候変動がトレイルランナーを襲う日
ある日突然、お気に入りのトレイルが水没していたら?
いつものコースが崩落し、通行禁止になっていたら?
気候変動は、温暖化だの炭素排出だのと難しい話を持ち出さなくても、ランナーにとってかなり切実な問題になっている。
走る場所がなくなったら、トレイルランニングはただの夢物語になる。
だからこそ、「気候変動なんて政治家と環境活動家の問題でしょ」と他人事にしている場合ではない。
本講座では、気候変動がトレイルランニングにどんな影響を与えるのか、そして未来のトレイルを守るために何ができるのかを徹底的に掘り下げる。
第1章:気候変動で「走れる山」が消えていく
① 気温上昇とランニングへの影響
気候変動による気温上昇は、単に「暑い」だけでは済まされない。
2023年の夏、アメリカのデスバレーでは気温が56.7℃を記録した。
このレベルになると、人間の体温調整機能は崩壊し、まともに運動できない。
日本でも35℃を超える酷暑が当たり前になりつつあり、特に低山のトレイルは命がけのサウナと化している。
② 降水パターンの変化とトレイルの崩壊
気候変動によって、大雨の頻度と強度が増している。
その結果、山の地盤が緩み、トレイルは崩れやすくなる。
例えば、2020年の熊本豪雨では、多くの登山道やトレイルが崩落し、修復には数年単位の時間がかかっている。
「昨日まで走れたトレイルが、明日も無事とは限らない」というのが現実だ。
③ 雪山トレイルの危機
温暖化の影響で、日本の山々の積雪量が減少している。
「いや、トレイルランナーに雪は関係ないでしょ?」と思うかもしれないが、それは大間違いだ。
雪が少ないと、春先の雪解け水が不足し、山の水源が枯渇する。
つまり、夏場にトレイルで補給できる水がなくなるということだ。
アルプス系のトレイルランナーにとって、これは死活問題になりつつある。
第2章:気候変動によるランニング環境の変化にどう適応するか?
「気候変動は止められない」としても、ランナーとして適応することは可能だ。
以下に、気候変動の影響を乗り越えるための具体的な戦略を紹介する。
① ヒートトレーニングの導入
酷暑の中でも安全に走るためには、「暑熱順化」がカギになる。
これには以下の方法が有効だ。
• 徐々に暑い環境でのトレーニングを増やす
• サウナや入浴を活用し、発汗能力を向上させる
• 電解質補給を徹底する(特にMag-onやOS-1がおすすめ)
② 水源を知り、持ち運ぶ水を増やす
気温が高くなり、水が減るなら、走りながらの水の確保がより重要になる。
• 事前に水場の位置を把握しておく(特に山間部)
• ハイドレーションパックを活用し、最低1.5L以上の水を持ち運ぶ
• 「Sawyer Mini」などの携帯浄水器を使い、川の水を飲めるようにする
③ 走る時間帯を変える
• 夏場は早朝・夜間ランを基本にする
• フルムーン・ナイトトレイル(満月の夜にヘッドライトなしで走る)を楽しむ
• 昼間のトレイルは標高の高いエリアを選ぶ(2000m以上なら比較的涼しい)
第3章:トレイルランナーにできる「未来のトレイルを守る行動」
適応するだけでなく、トレイルを守るために「攻めの行動」も必要だ。
以下は、トレイルランナーとして実践できる具体的なアクションである。
① 「グリーンランニング」の実践
ランニング自体は環境負荷の少ないスポーツだが、装備や移動には意外とエネルギーを消費する。
環境負荷を減らすために、以下の点を見直そう。
• 移動はできるだけ公共交通機関を使う(大会参加のために車を出しまくるのはNG)
• サステナブルなウェア・ギアを選ぶ(Patagoniaやonのエコモデルがおすすめ)
• 補給食のゴミを減らす(ジェルのパッケージを持ち帰るのは最低限のマナー)
② 植林・トレイル整備活動への参加
気候変動でダメージを受けた山を回復させるには、人の手が必要だ。
「走るだけ」ではなく、「整備する側」に回ることも考えよう。
• 「グリーンバード」などの清掃活動に参加する
• トレイル整備イベントにボランティアとして参加する
• 地元の環境団体と協力し、植林活動を支援する
③ 「未来のトレイル」を作る意識を持つ
今あるトレイルがダメになっても、新しいルートを開拓すればいい。
• 地元のトレイルコミュニティに参加し、新ルート開拓に貢献する
• 気候変動の影響を受けにくいエリア(標高の高い場所や樹林帯)に目を向ける
結論:走ることは「未来を作ること」
トレイルランニングは単なるスポーツではない。
それは、自然と対話し、環境と共存する行為でもある。
気候変動が加速する今、ランナーは「走れる場所があるのは当たり前」だと思わないことが重要だ。
未来のトレイルを守るのは、政府や環境団体ではなく、「走ることを愛する俺たち」に他ならない。
だからこそ、今できることを考え、行動に移そう。
「走り続けられる未来を、自分たちで作る」— それが、真のトレイルランナーの使命だ。
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