5-2 イギリス編 長期滞在のディープな魅力 ベテランスペイン撮影コーディネーターのぶらり旅
6月13日 2日目 ケンブリッジ
朝日が眩しくてカーテンを開けたらまだ5時だった。もうひと眠りする。
朝食は彼女お手製のプラムのコンポート、ココナッツクッキーにメレンゲのトッピングのギリシャヨーグルト、ブラックコーヒー、アフガンのパンにブリティッシュベーコンとプチトマトをロースト。トマトは酸っぱいベークド用、ベーコンと共にイギリスならではの味。アフガンのパンはナンのように薄く平たく長くて、モチモチしたおいしいパン。これも私のお気に入り。多民族が住むケンブリッジには各国の食材を扱う専門店があちこちにある。これらを渡り歩きおいしいものを探すのも楽しい。
先日彼女は携帯を失くしてしまったのだがまだ携帯会社に連絡していなかったので、近所のスーにSOS。彼女と一緒にあーでもないこーでもないとやってみて、結果その携帯は誰かが色々としていることが判明。事情を携帯会社に伝え、現在のSIMをストップして新たなSIMカードを手配してくださり一件落着。スーは犯罪学の専門家で、犯罪をテーマにした小説も出しているとても頼りになる隣人。
今日は天気が良いので散歩がてら、ちょっと遠くの大型スーパーに行く。旅先で私が好きな場所の一つが地元のスーパーや市場に行くこと。まず食文化からその国や地域の様子を見るのはとても楽しい。TESCOはイギリスの老舗スーパー。品揃えの多さと、会員カードを持っていると適用される特別価格商品が特に魅力的。今日の私達のお目当てはギニア産ホロホロ鳥の丸ごと一羽の生肉。これはローストにすると旨味と食感が素晴らしい上品なお味。一羽1kg位で約9ポンド。フランスやイタリアでは高級食材として扱われているのにこのお値段はうれしい。
午後、約3年前に老人ホームに入所したMさんを見舞う。アルツハイマーが進み今は会話がほぼ成立しないが、顔色も良く、私のことが判ったのか手を握って時々手を動かしてくれた。私がしていたカラフルなスカーフが気に入ったようで、もう一つの手で触ってみたり、時々笑ったり何か言っていた。ご機嫌な様子で良かった。このプライベートホームはインド人の経営で、大家族で育ったような国の人たちが介護をしているので、皆さんとても優しくて敬意と親しみを持って滞在者たちに接しているそうだ。いつもとても清潔で、病院のような匂いはせず、素晴らしい施設。聞けばスーのおじさんもリバプールで一人住まいだったが、唯一の姪である彼女のそばを希望し、最近ここに入居したそうだ。入りたいと聞いて友人がすぐに施設に話したら、調度空きがあってラッキーだったと後で聞いた。
帰ったら解決したと思っていたのに携帯会社から、他の人が彼女のアカウントでした事と、彼女がした事の区別がつかないので、改めて確認のメールが来ていて、再びスーに助けてもらう。明日の朝は字が読めないイギリス人の成人女性のために図書館で英語を教えるボランティアに行くという。なんとイギリス人の40%が文盲だそうで、その女性は書くことを知らないので、予定などをメモることができず、全て記憶に頼っているとの事。良く今まで暮らしてこられたと彼女もとても驚き、ボランティアを始めたそうだ。
そういえばスペインに私が住み始めたころは、郵便局でよく宛名書きを頼まれた。その時はまだスペインの事情が分からず、何故東洋人の私に?と思ったが、誰かが書いた元の住所自体がよく読めず、困ったこともあった。当時の年配の女性たちは戦争や家族のために学校に行くことができなかったと後で聞いた。しかしこの先進国イギリスで今こんな話を聞くとは思ってもみなかった。文盲とは違うけれど、80歳のこの友人や高齢者はこのデジタル通信社会において皆不自由な思いをしている。病院の予約、役所の手続き、レストランのメニューも今やデジタル。今回の携帯会社もそうだが、電話の応対を全くしていないところがどんどん増えている。スペインはヨーロッパ一スマホ普及が全ての世代においてとても速かった国。あっという間にみんながスマホを使ってWhatsupというアプリでメッセージ、写真、ビデオ等々色んなものを送り始めた。一方日本人の団塊の世代以上の友人たちは、未だにとても悪戦苦闘しているとよく聞く。Googleの音声検索の機能やレンズで翻訳ができたり、彼女の好きな花の名前等が写真を撮って検索できる事を早速彼女に教える。そして携帯やタブレットの使い方教室に行くことを薦める。彼女は「小さな子供でも使えるのに」、と言うが今の子供たちは歩き始める前から使っているので別人種。そこは割り切って一から習うべきだと思う。
24文字のローマ字が分からないイギリス人と、1800以上の漢字が読み書きできるのにスマホが使えない一部の日本人。10年後は一体どんな社会になっているのだろうか。
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