【本曜日】6年生に贈りたい1冊の絵本を、小学校で読んできた
地上400メートルの、綱渡り。
綱の上で彼は、幸せを感じ、自由だった。
今朝は晴れ、6年生の教室から富士山がよく見えました。こんにちは、極夜です。
娘の小学校は今、読書旬間。
読み聞かせボランティアに行ってきました。
6年生に読み聞かせをする機会は、残り2回。最後の3月は体調不良で(子どもも読む親も)欠席者が出やすい。その為、体調不良の少ない11月でお願いして、長女の6年生クラスを担当させていただきました。
「自分のクラスで、お母さんにこの本を読んでほしい」
という、長女の希望を叶えるためです。
長女の好きな絵本です。
『綱渡りの男』
モーディカイ・ガースティン 作
川本三郎 訳
大道芸人、フィリップ・プティがいちばん好きな曲芸は、2本の木のあいだに張ったロープの上を歩き、踊ること。
ある時彼は、マンハッタンにある地上400メートルに達する、完成間近であるツインタワー「の、あいだ」に惹かれて、そこで綱渡りをする事にしました。
って、ちょっと待ってくださいな。
…なんでしょう、この「そこに山があるから」的な発想。
確かに、彼の完璧であろう技術ならば、可能かと。
問題は技術以外。
ひとつ、その行為は罪である。
ひとつ、フィリップは生身の人間である。
故に、まともならば、そんなことしない。させない。
そんなこと、判りきっている。だからこっそり準備する。
そんな彼には、協力者もいる。
そして彼はやり遂げます。
一晩かけて準備して、翌朝、警察と地上の群衆に見守られ、2センチ幅のロープの上に、1時間。
上空の風も鳥も彼を祝福しているように思えます。
彼にとって、この上ない、至福のとき。
物語の舞台は、ワールドトレードセンター。今はない、アメリカ同時多発テロのツインタワーです。追悼の意を込めて、かつて完成間近のツインタワーで本当にあった出来事をスケール大きく描ききった作品。コールデコット賞受賞作。悲しい記憶の場所ですが、この物語の主役、フィリップ・プティのあのすばらしい朝は、ツインタワーのすばらしい思い出であるはず。
この本の最後のほうで、ツインタワーがもうないことが書かれています。
しかし、ページをめくると、
人々の記憶にはふたつのタワーは残っているよ、
フィリップがタワーの間を歩いたすばらしい朝のこともね。
…というような終わり方なんです。
どう読むべきかは、ずいぶん迷いました。
最後のページの終わりかたに、習うことにしました。
ラストの絵は、ツインタワーのあいだに綱とフィリップ。
テロがあった事実は事実として伝えるけれど、話の中心はこのフィリップの生き方に、何かを感じてもらいたい。
その気持ちで読むことにしました。
そりゃフィリップの行動そのままされたら困るわけですが(苦笑)、フィリップの行動は、誰かを不幸にしていない。わたしとしては、これはアリだと。
子どもたち、みんながひとつの型にはまらなくてもいい。それぞれの信じる道で、幸せを追い求めてほしい。進む道は自由なのだと。
さて、読んでいるときの子ども達の反応。
高学年ともなると、声に出したりのリアクションはあまりありません。
とはいえ、長女のクラス。興味津々なのは手に取るようにわかります(笑)
みんな本を見て微動だにしなくなりました。
次に、声は出さずとも顔と口が『えぇー?』『おっ!』『うわ~』の形になっている。
同時に、だんだんと前のめりの体勢に変化。
終わると、『ほぉーっ』と息をつく様子。
本を閉じた時、拍手いただきました。
実は、担任の先生の反応がいちばん良かった(笑)
長女との約束、守ることができました。
今日の読み聞かせが、いつか長女の力になると良いな。
そろそろ長女の帰宅時間。
どんな言葉がくるかしら。
読んでくれて、ありがとう。