鋼タイプ運用論(トリプルバトル)
ここではトリプルバトルで多くの構築で必要とされる鋼タイプについての運用論を述べていく。
鋼タイプの役割、特徴などから効果的な運用方と、それに必要な構成などを導いていく。
今回は鋼タイプでも特に有力なヒードラン、ギルガルド、ドリュウズの3種と、トリパの鋼タイプとして有名なメガクチートを例として挙げる。
鋼タイプの役割、共通する運用について
鋼タイプはトリプルバトルの環境を形作っているメガガルーラのノーマル技の一貫を切るのが最も大きな役割である。
しかしながら鋼タイプはノーマル以外にも多くの耐性を持っており、構築全体の技の一貫切り、引き先、盾を担う存在である。そのため、実際の運用として、対戦中は後発からの運用が基本であり、その体力の管理は対戦の重要な要素で、ゲームセットを迎えるまで極力多く保つことが求められる。故に恵まれた耐性を持つ鋼タイプのポケモンは最後に残りやすく、強力な鋼タイプは単体でもパーティ構築の時点で勝ち筋の1つとなる。
事実、上記に挙げたヒードラン、ギルガルド、ドリュウズ、メガクチートは「体力をなるべく高く保った上で終盤を迎え、本体が持つ詰め手段でゲームセットに持ち込む」という教科書的な運用が共通している。
鋼タイプは採用した時点で構築の勝ち筋の1つになることも必要な役割なのである。
本論ではこの詰め手段でゲームセットに持ち込む為の運用をパーティ構築時点で目指して論ずる。
なお、鋼タイプが最後に残りやすいということは、最後に鋼vs鋼の構図になりやすいということでもあり、鋼タイプに勝てる鋼タイプは評価が高い。裏を返せば鋼に打ち負ける鋼は評価が落ちるということでもある。
また、鋼タイプが先発しなければならないマッチングというのも当然存在する。その場合は基本的に鋼タイプの体力を使って、他の勝ち筋を追っていくことになるが、元々の耐性や耐久に恵まれているため、先発してもその鋼タイプが勝ち筋になることも多く、不用意に体力を失うことは避けるべきである。
ヒードラン
ヒードランはトリプルバトルにおいて最も多くの構築に適応する鋼タイプであり、雨パであっても真っ先に検討すべきポケモンである。
そのヒードランの詰め手段はドーブルを抜く素早さ、そして身代わりである。鋼かつ鋼に弱点を突ける炎複合であり、大地の力も持つため対鋼への打点も申し分ない。
詰め手段の身代わりであるが、終盤に身代わりを盾にしたヒードランの突破には基本的に2手必要とするため、突破が困難なのは論を俟たないだろう。しかし終盤だけでなく、序中盤でも相手のゲームプランの破壊、身代わりを盾にした熱風、守るの価値上昇、果てはリスク・リターンが釣り合っていれば身代わりを持ったまま交代という選択肢も強力になる。身代わりは体力の1/4を差し出す技だが、それに見合うリターンを得られる技である。一回の身代わりを破壊された程度であれば体力は3/4残るので終盤を迎えるのにあたって十分である。
ただし、ヒードランは有利不利のはっきりしたポケモンであり、身代わりを採用するにあたって素早さ関係も明朗にした方が良い。具体的には最速か最遅のどちらかである。
また、身代わりを採用しないまたはできない場合であるが、その場合はシュカの実以外の持ち物を持つことが難しい。体力を保つにあたって不意のめざ地などで大きく削られるのは避けなければならないのである。シュカの場合、素早さは一応は自由だが、やはり有利不利の明確なポケモンなので、最速または最遅が望ましい。シュカの場合の懸念点として、受け出しなどで削られていると、高火力の地面技にはシュカを貫通されて落とされる場合があることは認識しておきたい。
身代わりを持つ場合は持ち物は自由に決められるので、身代わりを採用したいので身代わりを採用、持ち物を自由にしたい場合の身代わりの採用、技枠を1つ自由にしたいならシュカという3パターンに分けられるだろう。
身代わりヒードランは極めて強力な詰め筋なので、身代わりの不採用はパーティ構築の終盤に決めると良い。
例
身代わり
素早さ:最速もしくは最遅
持ち物:自由
技:熱風、身代わり、守る、残り1枠
シュカ
素早さ:最速もしくは最遅が望ましい
持ち物:シュカ
技:熱風、守る、残り2枠
ギルガルド
メガリザYの相方。
ギルガルドの基本的な構成、運用は以前の記事で言及済み。なので基本的に終盤の詰め手段について言及する。
ギルガルドの詰め手段は影討ちと身代わりである。
影討ちか身代わりのどちらかを採用しないと、ギルガルドの詰め性能は大きく下がる。
身代わりはヒードランとほぼ同様であるが、特筆すべきは影討ちの存在。素早さの低いギルガルドが終盤にファイアローのような掃討役を担えたり、ラス1同士のタイマンに強くなれる。
対鋼タイプでは一方的に弱点を突かれることが多く不利であるが、霊技は鋼に等倍で通るので体力が潤沢であれば、一発耐えてシャドーボール+影討ちで勝ち目があるし、既に相手の鋼が虫の息なら影討ちで仕留められる。
ギルガルドのもう一つの特徴であるワイドガードを習得する鋼という点であるが、鋼タイプとしての勝ち筋を重視すると実際に覚えることはできない。影討ちや身代わりを採用するために技枠が足りないのである。シャドボ、キンシ、影討ちor身代わり、ノーマルタイプに干渉できる技(アイヘ、聖剣、毒々、めざ氷など)で技枠が埋まってしまう。ノーマルタイプに干渉できないギルガルドはノーマルタイプへの詰め筋を失いガルーラやドーブルにTODされてしまったり、ガルーラに無視されて隣を延々殴り続けられてダメージレースで後れをとり敗北してしまう。
そもそもであるがギルガルドに限らずトリプルバトルにおいて有力なワイガを覚えるポケモンは、襷ドーブル以外(ギルガルド、スカーフドーブル、ハリテヤマ、カポエラー)はワイガを上手く扱えないという問題点がある。これはワイガよりも覚えるポケモン側の特徴や問題が大きい。理由はそれぞれ異なるが、ギルガルドの場合は突き詰めると「自身が鋼タイプである」という点に帰結する。
襷ドーブルとギルガルドを比較していくと、襷ドーブルは耐性がないので基本的に先発、ギルガルドは耐性が豊富なので後発である。ワイガがアドを稼げる勝負手(叩き雪崩やファスガ大爆発、手助け範囲技、ハイボ地震など範囲技2発)が使われるのは対戦の最序盤から中盤に差し当たる頃であり、先発の襷ドーブルは自然にワイガで咎める機会に遭遇できるが、後発であるギルガルドはその機会に恵まれにくい。ギルガルドも先発する機会自体はあるものの、その場合は主に構築内の他のポケモンが先発できないか、相手がエルテラドーであるかの2つである。前者の場合ではギルガルドは他のポケモンの障害となる存在を取り除くために戦わないといけないのでワイガをしていられる状況ではない。エルテラドーに対しては有効な手段となり得るが、ギルガルドの詰め性能を毀損しているためエルテラドー以外の相手には勝率を落とすことになる。
またギルガルドと襷ドーブルの体力と命の価値の差もある。
襷ドーブルは最優先すべきは自身の生存とその後の2回目の着地であり、生存さえしていれば残りHPは多い方が望ましいものの不問である。一方ギルガルドは体力を高く保つことが求められる。ギルガルドはワイガ択を単体技などで咎められた際のダメージが対戦自体の直接の敗因になりやすく、リスクが襷ドーブルに比べて相対的に高いのである。また、襷ドーブルは最速詰めや対戦の直接の勝因になることはできても最終的な詰め筋になることはほぼできないため、2回目の着地が叶わなくとも引き換えに相応のものを得られれば倒れても問題ない。しかしギルガルドの場合は詰め筋を担える耐性豊富な鋼タイプなため、序盤で失ったり致命的なダメージを受けることは許されない。引き換えに相応のものもらうとしてもそれは襷ドーブルと引き換えとなるものとは比べ物にならない程大きいものでなくてはならない。そしてそれはもはや対戦の大勢を決めるほどのものであり、ギルガルドのワイガでそれが実現できることは極めて稀である。
結局のところ、ギルガルドのワイドガードは構築時点でも、対戦中でもリスクリターンが釣り合っていないのである。
ドリュウズ
メガマンダの相方。
耐性こそあるものの、耐久自体は高くはなく、メガマンダとともに先発して、主に自身の速さ、打点と圧で味方を守ることで鋼タイプの役割を遂行する異端の鋼タイプ。
ドリュウズの詰め手段は終盤に2回目の着地をし、最速クレセドランより速い素早さからの地震アイへ、それらが通らない相手への岩雪崩で味方が削ったあとの残りを一掃することである。特性の砂かきによって砂嵐下ではさらなる速度を出すこともできる。
全体技が強い代わりに先制技はなく、身代わりも覚える余地がないので先発したときに大きく削られるのは避けるべきポケモンである。命の珠を持つことになるので尚更。
また、終盤に向けての運用として、ドリュウズは削りを行うポケモンでは基本的にない。先発時のドリュウズは自身の技で抜群を突いてワンパンするか、マンダとの連携で相手を1ターンの内に処理するのが役割である。これらの行動を何らかの相手の動きでいなされた場合が結果的に削りに見えているだけである。物理一辺倒なので威嚇の影響が大きく、メガマンダの行動回数を稼げたなら早期に引き、2回目の着地を万全にすべきポケモンである。
例
素早さ:最速
特性:砂かき
持ち物:命の珠
技:地震、アイへ、岩雪崩、守る
メガクチート
トリパの鋼タイプの例として適切なので述べる。最遅ドランにも当てはまることが多い。
メガクチート自体の問題はきりがないので割愛する。
メガクチートの詰め筋は2回目のトリル下による打点とトリルが解除された後の不意打ちである。
メガクチート等トリパの鋼タイプの課題として1回目のトリル開始から11ターン以上の生存を構築時点で想定することが必要となってくるところである。トリル役もトリルを2回使わないといけないので相応の生存能力が必要となる。またトリル下でダメージレース優勢を取らないといけないので、構築時点でも対戦中でも考慮しなければならないことの期間が長く、課題自体も多いので詰め筋とするためにはどうしても扱いが難しくなりがちである。
例
特性:威嚇→力持ち
素早さ:最遅
技:不意打ち、守る、残り2枠
残り2枠のうち片方はタイプ一致技であること
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