[書評]あやうく一生懸命生きるところだった
この本は韓国人の方が書いたエッセイで、内容をひと言で言うなら、「頑張らない生き方でもいいんだよ」と言ってくれている本である。
一言で表せる本ではあるけれど、この本は正直一字一句読み逃したくないくらい共感できるし絵もユーモラスで読みやすい。
覚えておきたいところにマーカーを引こうとしたらほとんどの文に引くことになりそう。
本当にもう、共感の嵐。普通翻訳された本を読もうとすると、どこか言い回しが外国人っぽかったり難しい単語が出てきたりするが、
これは全然そんな事はなく、日本人が書いたのではと思うくらいの内容と言い回しだった。
読んでいると分かるがこの筆者の方は日本の小説や漫画などに触れている方で、だからかもしれない。
あとはもちろん翻訳者がかなり優秀なのもあるが1番は韓国という国は日本と似ている所が結構あるみたいだ。
例えば筆者は何度も浪人して苦労して難関大学に入ったのに、入る前に期待していた名誉や知識は全くつかなかったし、サラリーマン時代は常にお金の心配を抱えていた。
結婚のプレッシャーもあったそうだ。こんな話は日本でもよく耳にする話で、韓国でも似たような感じらしい。
どの国もそうなのだろうか。いい大学に入っていい会社に入るためだけの教育システムなんてうち(日本)だけだと思っていたから。
だから本当に変な話だが韓国人の方が書いたこのエッセイはほとんどの日本人に刺さるはず。
特に、何かを頑張りすぎている人や努力が報われないと感じている人には心に響くと思う。
この筆者の考え方はある意味斬新で日本で普通に育ったら許されないような発想なのである。
そして何より優しいメッセージ性がある。
読むと、「あぁ、こんな生き方もあるのかぁ」とか「そろそろ休憩してもいいかな」とか思えてくる。
多分中には読んでいて涙する人もいそう。でも結構笑えた所もいくつもあった。
心が疲れている人にぜひおすすめしたい1冊で、1回だけでなく何度も読み返して欲しい。
苦労が美徳とされるような教育がされるこの国で、燃え尽き症候群に陥って苦しんでいる人は少なくないはず。
そんな人にとってこの方の考え方は自分を守ってくれる盾となるはず。
昔の中国にこんな言葉がある。「過ぎたるは及ばざるが如し」。
やり過ぎはやってないのと同じだよって意味。
何百年も前の偉い人が言っているのだから聞かないではない。
きっと昔にも、頑張り過ぎて逆にダメになってしまった人が多くいたのだろう。
やり過ぎはそれほど危険なのだ。どうかこのエッセイに書いてある体験談を読んであなたの考え方の一つとして加えてほしい。