第72回サイエンスカフェ@ふくおか 「宇宙の謎にみんなで迫る ~市民と研究者の架け橋~ 参加レポート
去る2019年12月13日、上記イベントに行ってまいりました。登壇者は高エネルギー加速研究機構素粒子研究所(KEK)の上野一樹先生と、同機構広報室・科学コミュニケーターの高橋将太さんのお二人。
最初に高橋さんからKEKの紹介・科学コミュニケーターのお仕事について・なった理由・今頑張っている事を、次に上野先生から、素粒子の研究について・現在研究されているミューオンについて・研究の社会還元についてのお話がありました。
お二人ともとてもユニークかつ暖かいお人柄で、ともすれば難しくなりがちな素粒子や宇宙のお話を可愛いイラスト入りのスライドを使って分かりやすく、楽しく、魅力的に語りかけてくださいました。
ちなみに「KEK」は「Kou Enerugii Kasokuki Kenkyū Kikō」の略。もうここから面白い(笑)
☆N O Ca Ts No Li Fe☆
まずは高橋さんから。科学コミュニケーター(Science Communicator)とは、〈科学者・技術者〉と〈一般の方々〉をつなげる役割を担っていて、一般の方に科学をわかりやすく解説したり展示やイベントで研究の面白さを伝えたりするだけでなく、一般の方が科学について何を考えているのかを研究者側に伝える双方向のコミュニケーションを生み出すお仕事だそうです。
科学コミュニケーターの仕事内容は、イベントの企画・運営、メディア対応、見学・講義・実習の対応、ウェブサイトの管理・運用、写真・動画の撮影・編集、新規の科学教材の考案、等、多岐にわたります。高橋さん曰く「ザ・なんでも屋」さんだそうです(笑)
コミュニケートする相手は、/専門家/ステークホルダー(政府、市場メーカー等)/科学ファン/無関心な層/があり、高橋さんは主に科学ファンを対象に活動されています。"KEKキャラバン" という出前授業も行っているそうで、これはKEKが学校等に先生を派遣するものです。地域格差が出ないよう旅費はKEKが負担してくださいます。
サイエンスコミュニケーターになった理由として《おもしろそう!を選択し続けた》《0から1を作るのが楽しいと感じた》からだそうで、先日小型SAR衛星を打ち上げたiQPSのスタッフの皆さんも同じ事を言っていたなと思い、研究やものつくりに関わる人たちの醸し出す魅力の源にちょっとにんまりしてしまいました。
高橋さんが今頑張っていることは「よそではやってないことにトライする」「地域と研究者をつなげる」事で、ニコニコ生放送で BellⅡ測定器のロールインを生放送したり(結構凄い事です!)、学術系クラウドファンドを行ったり、各地でサイエンスカフェを開催したりと精力的に活動されています。
高橋 将太さん。とても明るく聡明で、寄り添うように相手の事を考えながらお話をされる素敵な方。この日お召しのTシャツはKEKオリジナル。表は研究所ネコ5匹と元素記号、裏はウサギと元素記号がプリントされてます。スタッフ用Tシャツが大好評につき商品化されたそうです。パーカーもあり。残念ながらつくばに行かないと買えないとの事なので、来年の一般公開参加を検討中です。
☆N O Ca Ts No Li Fe☆
後半は研究者、素粒子原子核研究所・助教、上野一樹先生の視点から。
猛スピードで話を展開させているのに全くそれを感じさせない巧みな話術と身振り手振りで参加者をグイグイ話に引き込んで行く先生でした。科学素人な私だけど本当に聞くのが楽しかった!
☆彡
話のはじめに車の写真が出てきて「これについて詳しく知りたいと思ったらどうしますか?」と聞かれ、心の中で「分解する…!って時計じゃないよなw」と思ったら、次が完全分解され部品がきれいに並べられた写真。ここで完全にハートを鷲掴みされました!(ちなみに物理学者的には分解がデフォルトだそうです)
大きなものを分解すると小さな構造が見えるが、小さなもののふるまいが分かれば大きなもののふるまいが全部分かるかというとそうではない。同様に、素粒子の「言葉」は素粒子のふるまいの記述には向いてるが大きいものには別の「言葉」を使ったほうが良いとのこと。
Q. では、素粒子を調べると何がわかる?
A. 宇宙のことがわかるかもしれない
Q. なぜ?
A. 宇宙は広がっている。この歴史を遡ればどんどん小さくなるハズ →始まりの頃の宇宙は小さかったハズ →エネルギーが高い状態なので素粒子が自由に飛び回っていたハズ
「自然界で一番大きな宇宙のことを調べていると自然界で一番小さな素粒子に行きついた!」(ウロボロスの竜)
Q. ではこの素粒子はどうやって調べる?
A. ①自然にあるものを使う(宇宙観測) ②素粒子を作る(加速器:LHC、SuperKEKBなど)
そして、検出器(BELLⅡ等)によって情報を得る!データを解析する!
☆彡
お次は「ミューオン」について。
〇素粒子の一つ 〇電子の仲間 〇宇宙線観測で見つかった 〇電子より200倍重い 〇自転(のようなもの)をしている 〇寿命が2マイクロ秒(※生物的な年齢とは違う)
そして実は…身近に存在しています!
現代においてミューオンは最先端の素粒子物理学の研究・物性研究・非破壊検査(考古学への利用)等作り出して利用したり、宇宙線物理学・宇宙天気・ミュオグラフィ等で宇宙線ミューオンを利用したりしているそうです。
ミューオンの発見により素粒子像は大きく変わり、現在の素粒子像へとつながったとの事です。
☆彡
最後に、加速器を使った素粒子研究の社会還元について。
〇未知の現象を解明する事で技術の発展へ貢献したり、DNAに刻まれた知的好奇心を刺激する〇巨額の費用への説明責任〇高い専門性の敷居を下げる努力等、教育・アウトリーチ・シチズンサイエンスなどが重要だと思ってらっしゃるとの事。
個人的取り組みとして、サイエンスカフェ・色々な単発プログラム(講義・実習)・つくばちびっこ博士(小学生)・ひらめきときめきサイエンス(中学生)・一般公開、科学おもちゃ作り、そして「探Q」を挙げられていました。
お手軽宇宙線(ミューオン)検出器開発の合言葉は、
目指せ「一家に一台宇宙線検出器」
100万円するものを1万円くらいまでコストダウン。食卓に飾ったりする(笑)名前は霧箱に対抗して「重箱」!!!絶賛自費で自作中!
本当に重箱使ってますw
愛称は「OSECHI」(Outreach & Science Education Cosmic-ray Hunt Insturment)。いかにも自作しました感がポイント。ミューオンが通過すると光ります。
最後に「OSECHI」の構造と光る原理の説明を動画で。
写真・動画の掲載は許可済みです。
むしろ拡散希望との事!
ということで、72thサイエンスカフェ@ふくおか「宇宙の謎にみんなで迫る!」の現場レポートは以上です!
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次回73thは・・・
「ニラマタンの謎に迫る!」
〜南太平洋バヌアツ共和国タンナ島の伝統建築を科学で分析する〜
令和2年1月24日(金)
19:00-21:00
詳細は下記リンクをご参照ください。
☆彡
サイエンスカフェ@ふくおか について
ILC計画の周知・理解を主な目的として福岡県と九州大学が主体となり、先端基礎科学次世代加速器研究会の主催のもと2012年8月より月1回のペースで開催中。第14回(2013年11月開催)からは素粒子物理に留まらず、テーマを幅広い分野に拡大。
「サイエンスカフェ@ふくおか」は講師と参加者の距離感を出来るだけなくし、どなたでも気軽に参加でき気軽に質問できる市民向け科学イベントです。
住 所:福岡市西区元岡744(九州大学素粒子実験研究室)
代表者:運営者 吉岡 瑞樹 准教授 (九州大学先端素粒子物理研究センター)
URL:https://sciencecafefukuoka.jimdofree.com/
http://epp.phys.kyushu-u.ac.jp/
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