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オカルトと都市伝説の庭で「地底人」を考える

◇ 約5,000文字

 オカルトや都市伝説のよもやま噺についてのシリーズは、まず地球の中心部からもっとも近いところより考えてみたい。


われわれ人類が知っていること

 地球の中心には核(コア)があって、その外側にはドロドロに溶けたマントルが存在していて、表面は地殻で覆われている……ということを教わるのは小学校の理科の授業だったろうか?誰かが実際に見たり調査したわけではないが、そういうものだと習ったし、それを疑う必要など微塵もなかった。

 人類が海洋で把握している地形は全体の15%であり、調査できているのは5%ほどと言われる。陸地の地下については深さ数キロの範囲すら解っていない。事実、ブラジルでアマゾン地域の地下約4kmにアマゾン川よりも幅が広い全長約6,000kmの地下水脈が流れていることが判明したのは、2011年8月という最近のことである。
 ちなみに、人類が掘った最深の穴はバルカン半島に近いロシアの西方域で、その深さは12kmなのだそう。ボーリング掘削の深部では掘削機の先端が引っ張られるような感触があり、それにより壊れてしまったという。また、最大深部で記録されたと言われる「無数の人間の叫び声」のような音がYouTubeにあるので、もし興味ある方は SOUNDS OF HELL で検索を。

 もちろん、その地下12kmの叫び声を根拠にしているわけではない(むしろ疑っている)が、地球の内部には地底人が住んでいると信じて疑わない人が存在すると聴いて、最初は「はぁ~っ?!」としか思わなかった自分も、いまは「その可能性はあるかもね」くらいに感じている。

 まず、地底の住人で自分に想像できたのは、地表面に開いた穴から下へ下へとアリの巣のように広がる地下空間に、(TOP画のような)泥と一体化したようなモンスターっぽい褐色の地底人が身を寄せて暮らす様子である。
 想像力には限界があるので、underground people や地底人で検索してみるが、ヒットするのは地下鉄の通勤風景だとか、ルーマニアのマンホールタウン(ブルースリーや丸山ゴンザレスの画像)くらいで、隣国の半地下に暮らす住人すら出てこない。
 地底の深くには高度な文明社会が存在していると唱える人たちが一定数いるのだが、残念ながら地底人は認知も議論も端緒についていないようだ。


地底王国アガルタ

 元CIA職員のエドワード・スノーデン氏が「地球のマントルには、我々よりはるかに知的な生命が存在する」というファイルを2013年に暴露しており、それに激怒した当時のバラク・オバマ米合衆国大統領が(スノーデン氏の亡命先である)ロシア連邦のプーチン大統領に対して、氏の返還を迫ったとされている。
 どうやら、アメリカは極秘裏に地底の文明社会と密約を結んでいるとも言われるらしいのだが、その穴を掘ってゆくと胡散臭くなってしまいそうなので、一旦はフタをしておきたい。

 ここでいきなり月刊ムーの世界観になるが、地底文明の存在を信じている人は地球空洞説に基づいており、想定しているのは地底王国アガルタなのである(地球空洞説については、以下の項で詳述したい)。また、仏教でシャンバラと呼ばれている伝説上の仏教王国が、地底の世界に存在しているのではないか?というような言伝もある。
 その地底王国は地表と同じように陸地や海、豊かな自然と太陽(のような光源)が存在しているとされる。我々がピンポン玉の表面で生活しているとすれば、内側にも同じような世界が構築されているということなので、地平線は地上の我々とは逆に両端が(わずかに)反り上がっているように見える筈だ。そんな内側の世界は、機動戦士ガンダムで有名になった"スペースコロニー"を想像してみれば解りやすいだろうか。

005-地底王国アガルタ

 アガルタに暮らしている地底人は身長が3~4mある、総人口90億人が生息している、高度な科学技術を持っていて飛来するUFOの一部は地底由来だ、南極と北極には出入り口となる穴が存在している等など、一気に聴かされると眉唾っぽく感じてしまう。
 だが、内部の換気も担っているとされる穴の存在については、少なくとも2例の証言があると言われるので、ここで紹介しておきたい。

 冒険家のリチャード・E・バード氏は、1926年5月に初めて北極点を飛行した人物である。そして、1929年11月には南極点の上空にも到達し、北極と南極の双方を史上初めて航空機で踏破した人物として、アメリカの国民的英雄となった。後述するが、のちに海軍の少将となって南極点の付近を飛行した際に、直径5~10kmほどの穴から地球の裏側の世界に入ってしまったと語っている。本人は穴に突入した感覚は無く、視界が晴れると雪原から緑に覆われた大自然が現れたのだという。そこではマンモスに似た巨大な動物を目撃したり、地底に暮らす人々とのコンタクトもあったと記している。
 もう1例、ノルウェー人の漁師オラフ・ヤンセンと彼の父親が北極側の穴から裏側に迷い込んで、地底人とコンタクトしたという伝承もあるのだが、1829年という古い出来事であり、また、バード氏の報告に比べると信憑性は劣るので割愛する。


ナチスと地底文明の邂逅?

 眉唾ついでに、地底の世界とナチスドイツのつながりを指摘する人もいるようである。弾道ミサイルやジェットエンジンも含め、第2次世界大戦当時のナチスドイツの兵器は「未知の文明から供与された」と考えても仕方のないほどに革新的な技術だったことは、軍事オタクでなくても承知しているだろう。
 "未知の文明から供与"よりは少しだけ信憑性のある話として、第2次大戦よりも以前からナチスが南極大陸の地下に極秘の基地を作っていたというのは、(当時、父親が好きだった)日テレの「矢追純一 UFOスペシャル」で特集されていたことを思い出す。なぜ、南極のような極寒の地に基地を作っていたのかは深く語られなかったように記憶するが、本当に基地を作っていたとして、もしそれが「内側世界への入り口として」南極であったのなら、矢追氏の紹介する説にも信憑性が増してくるかも知れない。

 1946~47年に米国海軍がおこなった4,700名規模の南極調査「ハイジャンプ作戦」で指揮を執ったのが、先ほどのバード少将である。この作戦の陣容には駆逐艦や攻撃貨物輸送艦、タイコンデロガ級空母まで含んでおり、まるで戦争を仕掛けるのではないかという大編成であったが、これほど大規模の調査活動をWW2の終戦直後に行っているのは、よほど重要な"何か"の目的があったと考るのが自然だ。
 しかし、調査期間の満了を待たずに調査隊は南極から撤収している。撤収命令は、複数の死者(戦死者?)を出したことが原因かも知れないし、バード少将が地球の内側を訪問したという自身の体験を報告したからかも知れない。そして、南極でのナチスドイツの支配地域には近づくことすら出来なかったという(非公式の)記録だけが残されたようだ。

 極点から裏側の世界を覗いたという言動の真偽はともあれ、地球の反対側に向かう旅客機は最短ルートである北極点の上空付近(北緯77度以北)を飛行することは禁じられている。民間航空機は極点に接近をすることも、撮影することも許されてはおらず、当然だが、目を凝らしてGoogle Earthの航空写真を探しても、そのような穴の痕跡は見つからないだろう。まだ地球には謎が多そうだ。


地球空洞説とは何か

 雲行きが怪しくなってきたので、ここで少しだけ科学っぽい考察にも挑戦してみたい。(見出しの文言は、さらに怪しい雰囲気を醸しているが)

 地球の中心部には膨大な熱エネルギーを持つコアが存在していて、そのコアとマントルが熱対流運動をすることで外皮であるプレートが移動したり火山活動が起こったりするとされるが、外殻とマントルの相互作用(摩擦)については、まだ解っていないことも多いらしい。
 地球は誕生してから46億年と推定されるが、そもそも恒星でもない地球という惑星が、そのような永い期間にわたって巨大な中心部分に膨大な熱エネルギーを蓄え続けることは可能なのだろうか?

005-空洞説2

 惑星の生成期では(上の画像のように)小さい岩石がぶつかり合って徐々に大きくなってゆくのだが、それが臨界点に達すると地表部分での引力が強まるのとは逆に(引力は距離の二乗に反比例して弱まるため)その中心部分は「限りなく引力がゼロの無重力空間になってしまう」と考えることができるのである。
 自分としては、室伏広治選手になったつもりでハンマー投げをするときに、鉄球までの距離が大きい方が身体への負荷(遠心力)が大きく、鉄球を手で持った状態で軸回転しても遠心力を感じられないという現象で理解している。

 中心からの距離が大きい外殻層部分では近接する層どうしが強力に引き合うため、内側からも外側に向けて圧縮を始めることになる。それにより、無重力となる中心部分から一定の距離に外殻層が固められて引き締まり、結果として天体は、内部が空洞な球体になると言うのが地球空洞説の論拠となっているのである。
 こうした仮説では、地球サイズの天体で外殻層の厚みが1,300km (800mi)ほどになり、その中央部(地表から640km)は内側と外側からの圧力を受けて高密度となることで重力の中心(重力層)を担っている。圧力によって中央層の一部はマグマの状態となり、それらがプルームとなって火山活動を起こしているものと想像できる。
 1枚目のイラスト画像を拡大して、是非、断面構造とアガルタの世界を確認して欲しい。

 もし内部が空洞だと地球の質量は相当に軽くなるはずだが、その質量や密度を算出する根拠の重力加速度(1.0 G = 9.8 m/s2)も、空洞を前提にした定数だと解釈すればよいだけである。ほかの天体の質量なども現在の試算から再計算となるだろうが、(イトカワのような小惑星が岩石の塊であるのに対して)自転している球体形状の天体はすべからく空洞の可能性があると考える向きすらある。そうなると、再計算どころか現代科学や天体物理学は完全なちゃぶ台返しである。


這いつくばる70億のアリ

 個人的には、そこまでキレイな空洞になっているかは疑わしいのでは?と感じている。たとえば地球を何周もするような巨大地震の発生によって生じた地震波の伝わり方が研究されており、さすがに地球の内部が中実か空洞かは議論の余地が残されていないのではないか?と考える。もし、意図的に隠避されていなければ…であるが。
 実際に完全な空洞ではなく"大きな穴のような空洞が存在する"という程度なら、TOP画のような褐色の住人像となってしまい、どうにも高度な文明社会とはイメージが重ならない。どうせならば、地球の中心部に巨大な空洞が存在しているロマンを信じたいものだ。

 地球の内側に知的生命体が存在するというスノーデン氏のファイルは、世界では真剣に受け止められなかったようだ。いや、もし本当に高度な文明をもつ知的生命体が存在するのならば、内側から出てきて外側の我々を侵略するのではないか?と考えてしまいがちであろう。それに対してスノーデン氏は、「彼らからすると、我々は地面に這いつくばっているアリのような存在なのだ」と表現している。
 本気を出せば地表面の生物なんて瞬殺ということなのだろうが、アリと言われてしまうと身もフタもない。そもそも、内側の住人は地表面上の生命体などには大した興味がないのだとも言う。

画像3

 ただし、第2次世界大戦で人類が2発の核兵器を使用したことに彼らは憂慮しているとも言われており、それ以降、アリに対しても多少の興味を持ってくれているのかも知れない。2013年2月、ロシアのチェリャビンスク近郊に飛来した隕石が、落下の直前に後方から極超音速で接近した物体によって破壊された(ドライブレコーダー)動画をネット上で見ることができる。現代の技術では説明不能な現象であり、より高度な生命体による関与が疑われている。
 その関与が地底由来かは定かでないが、隕石だけでなく宇宙線や太陽フレアなどの影響を受ける地表面は過酷な環境であり、やはり気候も安定した内側のほうが居心地がよいのだろうか。そうだとすると、地底の居住者を羨ましく感じてしまう。
【了】

シリーズの目次と序文は コチラ です!

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