【DAY 4】タイトルに数字が入る映画 「28日後...」
DAY 4
a film with a number in the title.
タイトルに数字が入る映画
「28日後...」(2002)
ダニー・ボイル監督
キリアン・マーフィ、ナオミ・ハリス、ブレンダン・グリーソン、クリストファー・エクルストン
霊長類研究所に覆面を被った集団が侵入。過激派の動物愛護団体が、捕われたチンパンジーたちを開放しに来たのだ。研究員の「そいつらは感染してるんだ!凶暴性が増すウィルスが蔓延するからやめろ!」と言う声に耳をかさずに檻を開けると、人間に襲いかかるチンパンジー。噛みつかれた活動家は血を吐いて倒れるが、目が真っ赤になって野獣のように豹変し、別の人間を襲いだした・・。
そして28日後。長く意識不明で入院していたジム(キリアン・マーフィ)が目覚めると、ロンドンは誰もいない荒れ果てた街になっていた。普段は賑わうビッグベンを望むテムズ川沿いにも、人っ子ひとりいない。街をさまよううちに、教会の中に集団がいるのを発見したが、彼らは凶暴な感染者たちだった。必死で逃げる最中、セリーナ(ナオミ・ハリス)らに助けられ、共に生存者を探す旅に出る。
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ホラー映画って、怖いと思わせれば「なんでもあり」なので、ジャンルに分けるのが難しい。だって、オカルト要素もあるSFがあったり、取り憑き系かと思ったらサイコパスだったということもあり、分類を重複せずに定義することはできないと思う。(いつかチャレンジはしたい)
しかし、そんな中、はっきりとジャンルが確立しているのが、「ゾンビ映画」だ。映画ファンなら皆、ホラー映画のDVDをどさっと渡されても、「これはゾンビ」「これはゾンビじゃない」と、ひよこのオスとメスみたいにさくっと鑑別ができる。
ゾンビ映画の特徴としては、お化け屋敷的にドーン!キャー!という描写よりも、家族や友人が感染してゾンビになって殺さなければいけない、みたいな心理サスペンスに重点を置くということだ。だから「人間を描く」ことができて、物語に深みが出やすい。また、ハロウィンで女子高生たちが気軽に扮装できるくらいにメイクが簡単だし、舞台も開店前のスーパーマーケットなどで撮影すればよいわけで、総じて製作費がかからずに制作できる。だから、ほんとうに数多くの作品がある。
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ゾンビを「動く死人」と定義するのであれば、古典のホラー映画からたびたび登場はしていた。ただし、それをはっきりジャンルとして確立したのが、ジョージ・A・ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968)だった。この映画から、噛まれると感染する/頭を撃つと死ぬ、というルールができた。そして同監督の「ゾンビ(原題Dawn of the Dead)」(1978)が全世界でヒットした。
それから、これらに影響を受けたホラー映画が数えきれないほどに乱立した。ロメロと同じイタリア人監督のルチオ・フルチの「サンゲリア」(1979)で、その血だらけ・腐りかけの造形が定義され、「バタリアン」(1985)により、観やすいエンタメに昇華。サム・ライミの「死霊のはらわた」(1981)により、スプラッタがブームとなったことにより、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを撮ったピーター・ジャクソンが「バッド・テイスト」(1987)や「ブレインデッド」(1992)といった名作を作った。
この人気は近年でも衰えず、ポール・W・S・アンダーソンの「バイオハザード」(2002)は6作も続く人気シリーズとなり、スペイン発のモキュメンタリー形式の「REC /レック」(2007)もシリーズ化された。テレビドラマ「ウォーキング・デッド」(2010)も大ヒット。
また、「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004)や「ゾンビランド」(2009)のようなコメディや、「ウォーム・ボディーズ」(2013)のようなラブストーリーも人気だ。日本でも「アイアムアヒーロー」(2016)がきちんと系譜を継いでいる。
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そんな映画群の中で、この「28日後...」は、ひとつのマイルストーンになる、異色な作品だ。ゾンビを走らせたのだ。
彼らは、死後硬直していたり、腐り始めているところ、脳を操作されて無理やり動かされているわけなので、あまり機敏な動作はできないはずだった。しかし、それをあっさりと覆し「こいつらは、死んでなくて生きたまま感染しているだけ」ということにしちゃった。
これは本来ならルール違反だと思うんだけど、全速力で追いかけてくるゾンビたちの映像が、画面に疾走感を与えて、とっても新しかったわけだ。そもそも、「なんでもあり」のホラー映画なんだし、「まあいいじゃないか」ということになった。この手法は、ブラッド・ピット主演の「ワールド・ウォーZ」(2013)や韓国の「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016)にも受け継がれていった。
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ゾンビは走ったけれど、でもやっぱり後半は人間同士のサスペンスが中心となってくる。クライマックスで、セリーナたちを犯そうとする兵士たちを襲撃するキリアン・マーフィの、その神出鬼没に影が見え隠れする姿が面白い。主役だったはずなのに、もはや「プレデター」(1987)のような描かれ方だ。
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「走るシーン」は、監督のダニー・ボイルにとっての十八番であり、なんといっても「トレインスポッティング」(1996)の冒頭、イギー・ポップの「 Lust For Life」にのせてユアン・マクレガーとユエン・ブレムナーがエジンバラの街を走り回るシーンは、映画史に残る印象的なカットだ。
その後、「普通じゃない」(1997)「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)などを撮り、2012年のロンドンオリンピックでは開会式の芸術監督を務め、007とエリザベス女王にスカイダイビングをさせたりもした。
「空気感」だけの映像作家だと言われることもあるけれど、「空気」をちゃんと実写の映像にできるだけで、類希なる監督だと思うんだけどな。新作の「イエスタデイ」(2019)も、肩の力が抜けた暖かい作品だった。
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