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【DAY 10】お気に入りのスーパーヒーロー映画 「アンブレイカブル」

DAY 10
your favourite superhero film.
お気に入りのスーパーヒーロー映画

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「アンブレイカブル」(2000)
M・ナイト・シャマラン監督
ブルース・ウィリス、サミュエル・L・ジャクソン、ロビン・ライト・ペン
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列車脱線事故が発生する。全員がほぼ即死だった悲惨な大事故だったが、警備員のデヴィッド(ブルース・ウィリス)だけ、かすり傷ひとつなかった。そこに、イライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)という画商が接触してくる。
彼は、先天的な骨形成不全症で、小さな頃から骨折してばかり。そのため外出が難しく、常にアメコミの世界の中に生きていた。そして、自分の境遇と対極にある、超自然的に体が丈夫な人間を求め、飛行機事故やホテルの大火災など、多数の犠牲者が出る大きな事故が起きるたびに、生存者を探っていたのだった。
デヴィッドこそが、その人間だ、と確信するイライジャ。デヴィッド自身も、確かに、これまで一切の怪我をしてこなかったことに思い当たる。そして、ベンチプレスで驚異的な重量を挙げられるようになっていたり、他人に触ると犯罪の記憶を察知できる能力があることに、徐々に気づき始めていく。

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M・ナイト・シャマランについて、何かしらのネタバレをしないで説明することはできない。だから、これからイノセントな気持ちで彼の全作品を観ようと思う人は、読まないほうがいいと思う。(そんな奇特な人はいないような気はする。)

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シャマランは、幽霊が見える少年の話「シックス・センス」(1999)で大ブレイクし、「サイン」(2002)ではエイリアンを、「ヴィレッジ」(2004)で森の怪物を題材にしていずれも大ヒット。当時の彼は飛ぶ鳥を落とす勢いで、「第二のスピルバーグ」とすら呼ばれていた。

しかしその後、ファンタジーにおけるキャラクターたちの役割を描いた「レディ・イン・ザ・ウォーター」(2006)や、自殺が自然発生する話「ハプニング」(2008)が大酷評される。やむなく、雇われ監督として「エアベンダー」(2010)と「アフター・アース」(2013)を撮るが、残念ながらこれらも失敗。

「シックス・センス」が出世作だったからなんだろうか、どうも可哀想に、どんでん返しの展開がない作品の場合、ことごとく評価されない傾向にある。

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アンブレイカブル」は、「シックス・センス」の次に撮られた作品で、まだ彼が世間から評価されていた時代に作った映画だ。マーベルやDCがつくった超大作のような派手なアクションがないため、暗めのスリラーだと勘違いされがちだけれど、れっきとしたスーパーヒーロー映画である。

ただ、超人的な力を持ったヒーローの活躍を、そのまま戯画的に描くわけじゃなくて、登場人物たちが、自らが超人であることや、ヒーローが存在する世界を自覚するという、ひとまわり大きな視座のメタ構造が新しかった。今であれば「ウォッチメン」(2009)や「キック・アス」(2010)、「スーパー!」(2011)「デッド・プール」(2016)みたいに多数存在する仕組みではあるが、それを10年も前にやってしまったのがすごい。

また、期待通り、きちんと「どんでん返し」がある。
当初観客は、イライジャは、デヴィッドをヒーローへと導く役目なのでは、と錯覚する。特に、いま初めて観る人にとっては、「アベンジャーズ」でニック・フューリーを演じるサミュエル・L・ジャクソンが演じているから、いっそうバイアスがかかってしまうことであろう。しかし、映画のラストでそれがひっくり返る。彼こそが、列車事故のみならず、飛行機事故やホテル火災をも引き起こしていた、悪に狂ったヴィラン・Mr.ガラスだったのだ。

そして、シャマランが企んでいた仕掛けは、それだけではなかった。誰もが「やられた!」と唸ったのが、その16年後に公開された「スプリット」(2016)だった。

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「スプリット」(2016)
M・ナイト・シャマラン監督
ジェームズ・マカヴォイ、アニャ・テイラー・ジョイ、ベティ・バックリー、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ジェシカ・スーラ

ケーシー(アニャ・テイラー・ジョイ)は、クラスメイト2人と共に誘拐される。犯人は23個の人格を持つケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)だった。彼は、監禁した彼女たちの前に、ある時はデニスという潔癖症の男性、あるときはパトリシアと名乗る毅然とした女性、あるときはヘドウィグと名乗る9歳の子供として現れる。そして、彼の中には、24番目の人格として、「ビースト」と呼ばれる化け物が誕生しつつあった。

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多重人格のサイコ・スリラーって、今となってはそこまで独創的じゃないよなあ。ジェームズ・マカヴォイの怪演に助けられて、面白いっちゃ面白いけど。おいおい、今回も大丈夫かな。
そんなふうに、すっかり油断をさせられたのだ。

最後の最後、ラスト5秒で突如現れたブルース・ウィリスにより、それまで観てきた世界観が、ぐにゃりと歪む。これは、「アンブレイカブル」の続編だったのか・・。

他の映画のキャラクターがカメオ出演する、みたいな遊びは多数ある。しかし、全く別の作品だと思わせておいて、実は続きでした、という叙述トリックって、映画では、他に類を見ないんじゃないかな。だって、興行なんだから、「これはあの作品の2です!」ということをプロモーションに使いたいはずなのに。しかも16年間置いといたわけだ。そう考えると、シャマラン低迷期も、あえての仕掛けだったんじゃないかと思えてくる。さすがにそんなわけないか。

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