No.10 命の廻り〜癸酉
雨降りの休日
食器棚の整頓整頓をする
クロスにアイロンをあててテーブルをセットし直す
水回りは特に念入りに、水滴の一粒も見逃さずに
こうして日常が乱れないよう
丁寧に暮らしを整えていく
それからお茶を淹れて
とっておきの読書の時間に
ページを繰る手をとめて
昨日買った植物の種にふと目をやる
インスピレーションがおりてきて
日常の音が消え、視界が狭まり
深い深い思考の淵へ ゆっくりと落ちていく
「美しい自然が移ろいゆく季節と共に」
一粒の種が芽吹き、日の光を浴び、すっくと立ち上がる
青々と繁る緑が水と大地の滋養を味わい
赤や黄色に色付いて、やがて枯れる
熟れ落ちた果実は鳥たちの歌声を子守唄に
記憶を閉じて新たな一粒の種となる
これは脈々と続く命の連鎖のほんの一コマ
しかし、その新たな種はきっと
たくさんの夢と希望と浪漫の香る
励ましと献身と慈しみの抱擁を受け
勇気をもって可能性の扉をあけて羽ばたき
知恵と叡智のエネルギーがぎゅっと詰まった
次世代へと続く天からの素晴らしい預かり物
それを手に取ってみる
思いのほか重い
掌に脈動すら感じられる
ふわっと意識が飛ぶ感覚と共に
日の光が私を目覚めさす
すっとした清涼感が額のあたりに感じられ
ゆっくりと、静かに目を開ける
ぼんやりとした視界が戻ってきて
ティーカップがはっきりと見えた
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