【刈り上げる植毛:刈り上げた後どうする?】
現在主流の植毛は、FUE(Follicular Unit Extraction もしくは Excision)という術式です。FUEは移植する毛髪を採取する際に、従来のメスを用いず、専用の円筒形のパンチを用いて毛包を1株(グラフト)ずつ採取する方法です。
FUEの最大のメリットは?
・線状の傷ができない
・痛みが少ない
ということであり、多くの人に受け入れられ、世界中で行われている術式です。
植毛は、AGAの影響を受けにくいエリアである後頭部や側頭部から移植毛となる株を採取します。
刈り上げる?? 刈り上げない??
この株を採取を行う際、
①採取部を刈り上げる方法
②採取部を刈り上げない方法(Nonshaven FUE)
があります。
後頭部を刈り上げずに行う手術の方が、患者さんにとっては採取部(後頭部・側頭部)の術後のストレスが圧倒的に楽でメリットが大なのですが、手術が煩雑になり、また難易度も上がるため、今でもよく行われているのは従来式の刈り上げる方法です。
剃毛は、通常1mm程度に刈り上げます。
1mmって、結構短いですよね。
小中学生の頃、トコヤさんでスポーツ刈りにしてもらった後、冬の時期は頭がスースーした感覚を懐かしく思い出します。
※ちなみに、当院では ” 刈り上げないFUE ” を ”推し” ており、当院でのほとんどの手術は ” 刈り上げないFUE ”です。この ”推し” の理由については、今後 ”刈り上げないFUE” の記事を書く予定ですのでお待ちいただければと思います。
剃毛後はどう過ごす?
植毛を検討されている方は、気になる話題ではないかと思います。
剃毛といっても、全体を剃毛することもあれば、部分的に剃毛することもあります。部分的といっても、実は刈り方には色々とあるんですよね。
そして、剃毛の仕方よりも皆さんが一番気になるのは ”バレるかどうか?” ではないでしょうか?
ですので、大きく分けると、
・ バレたくない → 隠す
・ バレること前提 → 隠さない(隠せない)
という2通りになるかと思います。
トルコなどでは、「全然バレても問題なし、オレの植毛の傷を見てくれ!」と言わんばかりに、傷を全く隠さず フルオープンにしたまま堂々と街を歩いている姿の患者さんが見られるそうです。
(患部に強い直射日光が当たってしまうのは、創傷外科専門医(キズの専門家)の私としては、「ちょっとどうなの??」と思うのですが…)
それに対して、日本では傷を隠さずフルオープンにするということは、社会的になかなか難しいというのが実情ではないかと思います。
これから "刈り上げた後どうするか" について、いくつかのパターンを説明していくのですが、結構ゴチャゴチャしています。
先に全体像を掴んでおくと、多少理解しやすいのではないかと思いますので、下の表をさらっと眺めておきましょう!
採取部の傷をどう隠す??
多くの方はバレたくないと思いますので、まずは隠す方法からみていきましょう!
採取部(後頭部・側頭部)の傷を隠す方法は、刈り上げないFUEを ”除く”(今回は割愛)と、
❶ヘアピース(部分ウィッグのこと、ヘアシートとも呼ばれる)を装着する
❷残存自毛で隠す
に分けられます。
私の経験上、”刈り上げるFUE” をされる多くの患者さんは、①のヘアピースの装着を希望されることが多いですね。
❶ヘアピースを装着
ヘアピースを取り付ける場合は、まず「窓」のように後頭部の髪の毛を刈ります。
次に、ヘアピースを残っているご自身の毛に編み込んで括り付け、その結び目を接着剤で留めていきます。実際に括り付ける部分は、ヘアピースの上部と両サイドの部分になります。
括り付けるためには、ヘアピースを取り付ける ”のりしろ” となる部分が必要になるため、”ある程度の毛の長さ”が必要になります。髪の毛が短い方は手術までの期間、髪を伸ばす必要があります。
ヘアピースは人毛ではなく人工毛ですので、染めたり、パーマをかけたりすることはできません。ですので、ヘアピースには黒や茶色だけでなく、白髪を混ぜてあるものまで様々な種類があります。“自分にあった色”や ”くせ感”のヘアピースを、あらかじめ用意して、取り付けることになります。
ヘアピースのデメリット
ヘアピースには、手術後の採取部の傷跡がバレないというメリットがある一方で、実はデメリットがいくつかあります。
①痛み、違和感、不快感
髪の毛がヘアピースに引っ張られるため、痛みや違和感を感じられる方が一定数います(個人差があります)。
また、ムレて痒くなったり、不快に感じる方もいます。
②ヘアピースの調整や取り外し
ご自身ではヘアピースの調整や取り外しはできません。
髪の毛は日々伸びますので、ヘアピースも徐々に移動していくことになります。
→つまり時間が経つと、地肌からヘアピース緩んで ”パカパカ”浮いてきます。
→通常3週間くらいで一度調整が必要になります。
ヘアピースの取り外しは、2か月前後(長いと3か月程度)で行うことが多く、調整は1〜2回程度のことが多いです。
③ヘアピースが外れるリスク
ヘアピースはご自身の毛に編み込んで括り付けられ、さらにその結び目は接着剤で固定されていますので、それなりの固定力はあるものの、徐々に緩んでズレたり取れたりしてしまうことがあります(特に端っこの方から緩んでくるパターンが多いです)。
④バレにくいとはいえ、絶対にバレないという保証はない
自分にあった色やくせ感のヘアピースがあるといっても、自分の髪質と全く同一というわけではありません。
髪の色や毛質によってはバレてしまうことがあります。
また、ヘアピースの取り付け方に問題があったり、毛量によっては自毛とヘアピースの境界が段差状に見えてしまうことがあります。
⑤ヘアピースの費用
クリニックによって異なりますが、数マン円かかります。
❷残存自毛で隠す
次に、ヘアピースを使わずに隠す方法についてです。
この場合はご自身の自毛を使って、刈り上げた部分を隠します。
この方法は、3種類といったところでしょうか。
①小範囲の刈り上げにとどめて、残存自毛で隠す
これはヘアピースを取り付ける場合よりも「小さな窓」状に後頭部の髪の毛を刈り上げ、残っている上方の毛で覆い隠します。
これは後頭部の髪の毛が長く、株数が少ないということが前提です。
②多段刈りで隠す
①の亜型で、段々畑のように刈り上げる”多段刈り”という方法もあります。これは”横長”に”いくつかの段”を作って刈り上げる方法で、①の方法よりも若干株数を増やすことが可能です。この場合も後頭部の髪の毛が長く、株数が"少なめ"であるということが前提です。
③ツーブロックスタイルで隠す
これは襟足から刈り上げて、ツーブロックのヘアスタイルにします。
刈り上げた部分は、残っている上の毛で覆い隠します。
こちらも後頭部の髪の毛が長く、株数がそこまで多くない手術(1200株未満くらいでしょうか。無理をすればもっといけますが。。)のであることが前提になります。
このツーブロックは手術のためのツーブロックであって、オシャレなツーブロックではありませんので、違和感のあるツーブロックになりがちですので注意が必要です。
なにせ刈り上げた部分は1mmですので、パカパカ浮きやすい状態です。
そして、これらの方法を選択する際、皆さんに必ず知っておいて欲しいことがあります!!
それは、
・剃毛する範囲が広いと、残りの毛で覆えなく(隠せなく)なってしまう
→剃毛部は狭くならざるを得ない
→刈り上げた小範囲から採取しなければならない
→局所集中的な採取になる
→採取部が透ける or 透けやすくなる
ということです。
個人的には、このような局所集中的な採取というのは、皮膚に負担がかかりますし、上手にやらないと採取部が "スカスカ" になってしまうリスクがありますので(特に①②の方法)、個人的には特殊なケースを除いてあまりオススメしたくない方法です…
他にも、髪の毛がめくれてしまうと、傷が丸見えになってしまいますので、注意が必要ですね。
刈り上げるFUEで、隠す方法は以上になります。
採取部の傷を隠さない or 隠せない場合は??
・髪が短いヘアスタイルの場合
・必要株数が多く、広範囲の刈り上げが必要な場合
などは、ヘアピースを取り付けることはできませんし、既存毛で隠すこともできませんので、オープンにしていくことになります。
バレるという "覚悟" ができている必要があります。
オープンにする方法は、2通りでしょうか。
①短髪風の馴染ませカット
短髪風カットにして、髪型を馴染ませる方法です。
時間とともに髪が伸びてきて、全体的に馴染んでくるイメージです。
ただ、やはりオシャレのためのヘアカットではありませんので、違和感が出やすいのは否めません。
②丸刈りで攻める
先程の①短髪風の馴染ませカットを希望されても、薄毛の進行具合によってはかなり不自然な髪型になってしまう場合があります。
例えば、前頭部も頭頂部も薄毛が進行してしまっているパターンでは、、
頭頂部から、ナシ、アル、ナシというなんだか不自然な髪型に…
そうした場合には、いっそのこと丸坊主にした方が、ヘアスタイルとして良いことがあります。
また、傷を隠せない場合に気になるのは、
「いつまで傷が見えますか?バレますか?」
「いつまで赤みが目立ちますか?」
ということではないでしょうか。
これに関しては、
・ 採取していない短くなった髪の毛が伸びてくるまで
・ 後頭部の赤みが軽減するまで
の期間になります。
・日本人の髪の毛は、標準的には1日に0.3~0.4mm伸びるとされていて、平均では3日で1mm、1ヶ月で1cm伸びます。
・赤みは、2週感程度で落ち着いてくることが多いですが個人差があり、ニキビや湿疹ができやすい人は、長引く傾向があります。
髪型がどうかということは別として、1cm程度髪が伸びていれば、多くの場合は採取部の傷は隠れてきているはずです。
(無理な局所集中的採取をされていなければ…)
最後になりますが、どの程度の範囲を剃毛するかについては、、
・必要グラフト数
・後頭部・側頭部の密度
(部位によって差がありますし、左右差がある方もいらっしゃいます)
・髪型
などによって変わってきます。
クリニックや術者によってもそれぞれ考え方は変わってきます。
(同じクリニック内だとしても変わるでしょう)。
疑問がある場合は、術者の先生によーく聞いてみましょう!
長文を最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!!
少しでも皆さんのお役に立てたら幸いです。
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次世代の「 刈り上げ “ ない “ 自毛植毛 」の時代へ
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